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みにくいアクマの子  作者: 芝犬ロック
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第二話 みにくいアクマが嫌われた結果

その山は馬車で数時間の所にありました。

山といっても馬車で登れる程度の小高い山です。

奥に崖があって、その下にとっても凶悪なモンスターがいる森があることを除けば。

お父さんがお仕事で忙しい為、お母さんと子供達、お付きの人で山にやってきました。

この山にある崖の上の景色はとても美しく絶景。

お母さんは言います。


「さあ、ここでご飯を食べましょう!」

「わーい!」


お付きの人が用意したお弁当を皆で食べることになりました。


「アラム、あなたはこちらを食べなさい。」


お母さんはアラムに別のお弁当を指差します。

お弁当の中身は、他の皆と同じものでした。


「そうだ、お前は僕達と同じお弁当をを食べるんじゃない!」

「お母様、なんでこんなみにくいやつを連れてきたの?楽しいピクニックが台無しだわ。」


家族皆がランチを食べる中、アラムはすみっこで一人そのお弁当を食べていました。

お母さんは一番上のお兄さんであるディランに話しかけます。


「ディラン、貴方はこれから立派な王国の騎士になる、行く行くはお父様の跡を継いで立派な伯爵となるのです。」

「はい!僕、りっぱな騎士になって王様をお守りし、お父様のあとをついではくしゃくなります。」

「それには経験を積まなければね。…そろそろかしら。」


「…!?」


アラムの身体が急にしびれだしました。

アラムのお弁当にはしびれ薬が盛られていたのです。

アラムはうずくまります。


「さあ、あのみにくいアクマの子を切ってみましょう。」

「でも、お父さんに怒られます。」

「大丈夫よ、この子は誤って崖から落ちて、モンスターに食べられちゃった事にすれば良いの。そうよね?」

「はっ。奥様の仰る通りにございます。」


執事やお付きの人は答えます。

そう、アラムはここで殺されるために一緒に連れてこられたのです。


「あの子は人間ではなく悪魔なのです。ほら、ご覧なさいあの角を。」


剣士がディランに剣を渡して言います。


「ディラン様。最初は恐いかもしれませんが、これは立派な騎士になる為には必要な事なのです。」

「…はい。僕、がんばります!」


ディランは剣を握りしめ、アラムのところに向かいます。

アラムは、体がしびれて動けません。


「かくごしろ、アクマの子!僕がやっつせてやる!」


ディランが振り下ろした剣は、アラムの背中を切りつけます。


痛い!

しかし、アラムは声を出す事もできません。

どうして僕だけこんな酷い目にあうの?

僕、殺されちゃうの?

どうして、お母さん、どうして…!

でも体がしびれて声を出せません。


「まあ、なんてみにくい子。私、ずっとあの子の事、嫌いだったの。」

「アクマなんかやっちゃえ、ディランお兄様!」

「お前なんかプレジニール家にはふさわしくないんだ!」


どうして、どうして、どうして。

うずくまった体勢のまま幾度か切った後、ディランはアラムが首飾りをしている事に気が付きます。

それはお父さんから貰った、大切な首飾りでした。


「なんだよお前、なんでお前がこんなに立派な首飾りをしていたのか。」


その首飾りには綺麗な宝石が飾り付けられていました。


「これはお前には勿体ない。僕がもらってやるよ。」


ディランは動けないアラムの首からその首飾りを外しました。すると…。

アラムの体が急に震え出します。

杖を持った魔法使いが言いました。


「…魔力が膨れ上がっていく!」


そして、アラムの背中から羽が生えたのです。


「やっぱりお前は悪魔だったのか!覚悟しろ!」

「ディラン様、いけません!」


剣士が叫びますが、ディランは構わず切りつけに行きます。

しかしアラムの体は硬くなり、切ることが出来ません。

体がしびれていたはずのアラムはむくりと体を起こします。

その体から急に離れた衝撃。

それだけでディランは近くの木に飛ばされてしまいました。


「ディラン!悪魔め、よくもディランを!」

「奥様、お下がりください、後は私達が。」

「炎よ!」


魔法使いは炎の魔法をアラムに放つと同時に剣士が切りつけます。


「ぐ、が、あ。」


アラムは呻き声をあげます。

弓使いの放った弓が足を捉え、アラムは膝をつきます。


「今ならやれる!最大魔法を!」

「ええ!極炎魔法!」


先程とは比べ物にならない程大きな火の玉がアラムを包みます。


「今だっ!」


剣士の放った剣技は、大きな斬撃となり、アラムを襲います。

アラムは切られ、そのまま崖の下に落ちていきました。


「やった!」

「羽も使えずこの崖を落ちていくようなら奴も生きてはいないでしょう。生きていたとしても、崖の下は凶悪なモンスターが住む森食べられてしまいます。」

「ア、アクマは…?」


木に飛ばされたディランがよろつきながらこちらにやってきました。


「ああ、大丈夫なのディラン?あのアクマは倒され、崖の下に落ちていったわ。」

「はい、なんとか。」

「ディラン様、良くやりましたね。ディラン様のお力添えでアクマを倒す事が出来ました。」

「お兄さま、すごーい!」

「アクマをやっつけたんだ!」



ディランを囲む家族の光景。

最初からアラムは家族では無かったのです。

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