第一話 みにくいアクマの子
ここは地球とは違うどこか。
魔族やモンスターが住む、いわゆる異世界。
そんな世界のあるところに、それは立派なお屋敷がありました。
そこにはプレジニールという伯爵が住んでおり、奥さんと5人の子供と共に住んでおりました。
子供達はすくすく元気に育ちましたが、末っ子の男の子だけは、兄弟から嫌われていました。
それはその子が養子であるという事だけが理由ではありません。
アラムと呼ばれるその子には他の子とは少し違っていました。
そう、その子の頭には1本の角が生えていたのです。
「おいアクマの子!」
「なんだそのツノ!」
「お前なんかこの僕が滅ぼしてやる!」
兄や姉達からは毎日叩かれ蹴られ、虐められています。
お父さんであるプラジニール伯爵はそんな子供達を叱りますが、お仕事が忙しいため、いつも一緒にはいられません。
お母さんも最初こそ止めていましたが、その内にお母さんも皆と一緒に責めてきます。
「ああ、この角、この悪魔はなんて醜いのでしょう。」
「早く出て行って、勇者に討たれてくれないかしら。」
「大丈夫だよお母さん、僕が勇者になってこんなやつやっつけてあげるから!」
「貴方はとっても良い子ねえ。さあ、皆でおやつにしましょう!」
兄弟達が仲良くおやつを食べる中、その子だけは混ぜてももらえません。
こんな日々が続き、アラムは6歳になりましたが、扱いは変わりませんでした。
そんなある日。
お母さんが子供達に言いました。
「今日は天気が良いからピクニックに行きましょう。」
「やったー!楽しみだなあ。」
「わたし、コロを連れて行っていーい?」
「良いわよ、一緒に連れていきましょう。」
「…。」
お父さんが居ない時、こういった家族のイベントに殆ど呼ばれた事がないアラムは自分には関係無いので、何も言わずにいました。
「アラム、今日はあなたも来なさい。」
「ぼ…、僕ですか?」
「何よ、聞こえなかったの?本当に貴方は鈍臭いのね。」
変わらず酷い言葉を投げかけられますが、それでもまだ子供のアラムにとっては参加させて貰える事が嬉しいのです。
「は、はい!すぐに支度します!」
「支度はしなくても良いわ、そのままで。」
「で、でも…。」
「良いからそのまま来なさい。」
「…はい…。」
お母さんから冷たい目で言われたアラムは、それ以上の口答えはせず、黙ってついていく事にしました。
お母さんと子供達は従者と共に馬車で小高い山に向かって行きました。
お世話をしてくれるメイドや執事、護衛の他に、
立派な剣を持った剣士や、杖を持った魔法使いがお供に付いてきます。
あれ、ピクニックなのにこんな人達も一緒に来るんだ。
アラムは不思議でした。