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1話 転生とその後1

事の発端は、そう。


なんてことない普通の日常からだった。


光輝とたまたま二人で学校を歩いていると、突如として俺たちを謎の光が包み込み、気が付くとこの国に召喚されていた。


話によると、魔王により人類が中々ヤバい状況だとか。


各国の王が集まる世界会議において、それぞれの国で勇者を召喚することが決まり、それぞれ国のやり方で魔王に対抗することになったらしい。


普通は勇者一人を召喚するはずだったのだが、何の手違いか俺まで巻き込まれてしまったようだ。


しかも俺の適正は錬成師という、通常戦闘には活かせないという、何とも酷い話だった。


元の世界ではそれなりに充実した生活をしていたし、何ならモテてた方だった。

客観的に見ても、そんな俺に対しバリバリの嫉妬心、劣等心を抱いていた光輝は、それを知るや否や態度が豹変、しつこく言い寄るティターニア姫と悠々自適な国賓待遇を満喫していた俺を、強制的に旅に同行。


持ち前の勇者力を使い、俺にこれでもかと力の差を見せつけてきた。


少しイラっと来た俺は、旅に同行してきたティターニアと身体の関係になったりしながらも、自分の錬成師という特性を理解し光輝を上回るスピードで進化していった。


錬成師とは、一般的に出来ることは少ない、いくら魔法があるファンタジーの世界でも、無から何かを生み出すことはできないのだ。


生み出すものと等価値のものを用意し、それを魔力であれこれすることによって自分のイメージしたものを生み出すことができる。


故に俺は考えた、わざわざ等価値のものを用意せず、それ自体を魔力で代用すればいいのでは?と。


俺の考えは見事に的中、魔力だけは無尽蔵に有していた俺は、自分の魔力によって地形を変形させ魔物を串刺しにしたり、元の世界の便利グッズ、例えば電気いらずの魔力ポッドを開発したりして、勇者以上の適性力、戦闘力を有すようになっていた。


つまり、俺は錬成の域を超え、その能力は創造と化していた。


それが面白くなかった光輝は、俺と付き合っていると思い込んでいたティターニアに手を出すが敢え無く撃沈。


そんなこんなで俺たちは本格的に旅を始める事になった。


「結城様!次の街まであと一息といったところです、ですが日も暮れてきましたし、そろそろ休みませんか?」


「そうだなぁ」


ラインニッヒ王国内、王都から離れた、エンジンという街を拠点に2か月程訓練をしていた俺たちは、本格的な旅を始めるため、次の街、商業都市セールを目指していた。


「光輝も、今日は休もう。馬たちも休めておきたい」


並走する光輝に話しかける。


「分かったよ」


相変わらず不貞腐れてやがる。


この数週間で俺は、自分の錬成師という職を理解し、飛躍的に力を付けていた。

それが光輝には面白くないのだろう。


俺は光輝を友人だと思っているが、周りから見れば光輝は俺の取り巻きにしか見えなかったんだろう、そんな状況も会い相まって、光輝は俺に対して、極度の劣等感を抱いていた。

勇者となり、俺よりも優れているとアピールしたかったんだろうが...


まぁその屈辱は、舐め腐った態度を取った罰だな。


そんなことを考えながら、野営の準備をする。


「今日は狩りをする余裕はないし、俺手製のシチュールウと燻製肉で作ったシチューだ」


「今日は、って大体それじゃないですか~、まぁ美味しいからいいですけど!にしてもルウ?って便利ですねぇ」


「俺が元居た世界じゃ、こうやって簡単に調理をしていたんだよ」


「光輝!俺が調理するから追加の薪を取ってきてくれ!」


少し離れたところでぽつんと座っていた光輝に向かって叫ぶ。


すると光輝は何も言わず、のそりと立って森の方へ歩いて行った。


「光輝様、なんていうか...勇者って感じじゃないですよね」


「そう言ってやるな、あいつなりに頑張ってるんだ。最初こそ向こうの世界との態度の変わりようにイラっともしたが、俺はあいつの努力を認めてるよ」


本心からの言葉だった、俺はあまり怒りを表に出すタイプでもない、争いごと、恨み嫉みは面倒ごとしか生まないのだ。


だから他人の粗は理解しつつも、良い点を見つけることが大事だと思っている。


「結城様の方が勇者って感じです...」


ティターニアは横に座り、俺が調理する様を覗き込みながら呟いた。


「それ、本人の前では絶対に言うなよ?」


「は~い!」


本当に分かってんのか...?こいつ。


しばらくすると光輝が薪を持って帰ってきた。


「ほれ、薪だ」


乱雑に投げつけてくる。


「あっぶねーなぁ...ほれ、シチューできたぞ」


「...おう」


「さ、ティターニアも食べよう」


「頂きます、結城様」


「んー!いつ食っても旨いな!俺のシチューは!やっぱ外で食うからなのかぁ!?どうよ光輝!」


「最近は外で食ってばっかだったろ、だがまぁ、淀みのない空気の中、満点の星空に囲まれて食う飯は、確かに旨いわな」


「光輝様、元の世界では外で食べることは少ないんですか?」


「ん?んー、食ってるやつは食ってたけど、普通はそんな機会殆ど無いな」


「そうなんですか...あ!そうだ結城様!今日こそは聞かせて貰いますよ!短期間で強くなった理由!いっつも疲れてるからーとかで教えてくれないじゃないですか!一緒に寝る時も全然教えてくれないし...」


光輝の方からブハッ!と俺のお手製シチューを吐き出す音がしたが、今は光輝の方を見ないほうが良いだろう。


なんせ光輝は一目見た時からティターニアに惚れていたのだから、そんな女が付き合ってもない男と、しかも自分が告白したのにも関わらずそういう関係だったと知ればショックも計り知れまい。


俺も男だ、よく分かる。だが光輝、お前も男だろう!だから分かるはずだ!


男は股間に支配されてるってことにな...


しかし、これ以上ティターニアに喋らせると光輝のメンタルが不味そうだ。

こういう空気読めないっていうか、配慮が足らない所が、身体以上の関係に進展させたくない理由なんだよなぁ。


「そうだなぁ、この世界の魔法って、大まかに6つの元素から成り立ってるだろ?」


「はい!火、水、土、風、闇、光ですよね?」


「そ、俺が元居た世界でもそういう考えをしたおっさんたちがいたんだがな。その一人が、エンペドクレスって哲学者のおっさんだ」


「エンペドクレス...様?哲学者の方なのですか」


「そ、こっちの世界じゃ知らないが、向こうの世界では万物は何を根源として、何から生まれ出のか。ってのを追求する学問だな、その中でエンペドクレスは一つの持論を打ち立てた、それは、万物は火、水、土、空気、の4つのうちのどれかから出来ているって持論だ」


「哲学とはなにやら魔法学と似ていますね?」


「その通り、さて、こっちの魔法について学ぶ中で6元素を知った時、そのエンペドクレスのおっさんの理論を思い出した。そして更に、そのエンペドクレスより前の哲学者の事も思い出したんだ」


「それは...?」


「ミトレスのタレス、古代ギリシアの哲学者、ギリシャ七賢人の一人だ」


「ん...んんん?よく分からないけど、凄そうな人ですね?」


「そのおっさんは、全ての物質はただ一つのものから出来ている。と考えた、まぁ実際はそんなことないって科学で証明されたわけだが...ここは魔力がある世界」


「あ!では、全ての物質の元を魔力と考えれば!」


「そう、魔法とはつまり人間の想像力の化身だ。昔から言われていたことだが、どんな絵空事で、実現不可能な事だろうと、人間の想像が及ぶ範囲であれば、それはいずれ可能なのさ」


隣で光輝が聞き耳を立てているのを感じたので、もう少し付け加えて口を滑らせておく、あいつには勇者の適性があり、勿論魔法も使える、俺流の考え方だが、知ってて損はしないはずだ。


「俺たちの世界では化学技術が世界を構築し、支配していた。しかしこっちは全く違う。例えば建築学や調理学、医学、科学、数学、そして魔法学。全て学問であり化学技術だが、全てが魔法技術とも捉えられる。絶妙なバランスを保った世界なのさ」


「は、はぁ」


「俺は学者じゃないけど、好奇心ってのは人間の三大欲求よりも強烈なものだ、何たって殆どの場合、いや、全ての場合において人間の人生は好奇心に支配されているからな!」


そう、元の世界で異世界転生ものの話を読んだことは何度もあるが、読む度に思っていた。

魔王討伐だの、世界間転移だの、そんなことよりも!


魔法だぞ!魔法!


聞いたことはあっても学ぶことは叶わぬ幻の学問!

そこに現代人の科学知識!


何故そこに興味を持たぬのか、理解に苦しむというものだ。


俺は興奮していた。未知の世界に飛び込めることに心を動かされていた。

向こうと変わらぬ星の大海、風に頬を撫でられる草木たち、焚火で休む人影と踊る燃え上がる炎。


向こうと何も変わらないはずなのに、俺の心は揺れ動かされている。

では向こうと何が違うのか。


それは、未知に包まれているということ。


あの花の名は?あの草の名は?あの虫の名は?あの星の名は?


自分を包む一切合切が未知。思えば元の世界でも未知に囲まれていた。

いつも歩く道の側に生えている雑草の名は知らないし、食べているもの、住んでいる家。その全てを理解していなかった、そもそも関心を向ける事さえ少なかった。


しかし、この世界ではそれら全てが俺を惹きつけ、魅了する。


「まぁ、なんだ。俺たちの世界では謎を科学で幾星霜幾星霜と時間をかけて解決させていったが、こっちの世界ではそれらの面倒な過程を全て、魔法、魔力っていうご都合主義で解決できる」


「つまり!結城様はどうやって強くなったのですか...どんどん話が見えてこなくなりました」


おっと、熱くなりすぎてしまっていたようだ。


「そうだな、俺が強くなった理由は、俺が人間だからだよ」


「「は?」」


予想外のところからも声が上がった、光輝だ。


まぁ、突っ込んでも面倒だし、ティターニアが余計なことを言う前に話し始めてしまおう。


「さっきも言ったが、魔法とは人間の想像力の化身だ。二つの世界の知識を持つ俺の想像力、万物の根源となり得る万能パワー、魔力。そして転生された人間に現れるという飛躍的な能力向上...俺の場合は無尽蔵とも言える魔力保有量。そして、俺の思考と相性のいい才、錬成師」


ティターニアは口をパクパクさせ、まるで化け物ような目で俺をみている。


失礼な女だ。


「つまり、お膳立ては済んでたって話だ。俺は既に錬成師を超えた。俺は、想像を創造する。それによって強くなったんだ」


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