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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
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99,一週間ぶりの再会

 朝日を浴びつつ身体を起こし、窓の外を眺めて目を細めた。

 雲一つない晴天。絶好のお出かけ日和だ。

 今日は休みに入ってから大体一週間ほど経った日であり、フォーンに出店が赴く日でもある。


 そして私は出店に乗せてもらってフォーンに行き、リオンと遊ぶ予定がある日だ。

 モエギお兄ちゃんが私について来てくれるらしいので、最悪何かあってもコガネ姉さんたちを呼べる安心安全のお出かけである。


 ウキウキで服を選んで着替えて部屋を出て、一階に降りて朝食の準備をしているウラハねえとモエギお兄ちゃんに声をかける。

 そのまま配膳を手伝っている間に姉さま以外の皆が降りてきて、準備が終わる直前にコガネ姉さんが姉さまを起こしに行った。


「おはよぉー……」

「おはよう姉さま」

「おはようマスター。そこは貴女の席じゃないわよ?」

「んいー……」


 今日の姉さまはいつもより眠そうだ。もしかして昨日は夜遅くまで何かしていたんだろうか。

 普段は眠そうではあるけれど部屋から出てくる時には割と起きているのに。


「いやぁ、ちょっと記録取るのに夢中になりすぎたね……」

「ほどほどにって言ったのに……」

「ごめんごめん」


 ポヤポヤしながら緩く笑って謝る姉さまにコガネ姉さんが呆れのような慣れのような絶妙な笑いを返す。

 これも見慣れた光景だ。そのまま朝食が始まったのでのんびり食事を終え、出店の出発準備も手伝って鳥の姿になったモエギお兄ちゃんが肩に止まる。


「いってらっしゃーい」

「行ってきます!」

「行ってきます。買い物の追加とか大丈夫か?」

「とりあえず大丈夫よ。お願いね」

「あ!コガネー。これもお願い」

「ああ、分かった」


 姉さまからメモを渡されたコガネ兄さんがそれを確認してから出店に乗り込み、ゆっくりと出店が動き始める。

 足を投げ出すように座っているコガネ兄さんの横に座ると、こちらをちらっと見てから手元の紙に目線を戻した。


「兄さん、いつも思ってたんだけど、それなにを確認してるの?」

「何も特別なことは書いてないぞ」


 手元を覗き込むと見ていた紙を渡される。

 そこには積んである商品の量や前回売れた量、人が多く来る時間帯などが書かれていた。

 一番上に日付とフォーンの走り書きがあるので、毎回書いている紙を見直しているのだろう。


「コガネ兄さんってマメだよね」

「まあ主が投げ出したあれこれをやってたらこうもなる」

「なるほど……」


 姉さまはたまに……ではないな。結構な頻度でやらなきゃいけないことをコガネ兄さんに丸投げするのだ。

 コガネ兄さんが何も言わないから良いんだろうけど、たまに確認だけでも眉根を寄せている姉さまを見かけると姉さまはコガネ兄さんがいないと生きていけないな、なんて思う。


 紙を返すとコガネ兄さんは再びそれを確認し始めたので、邪魔しない様に静かに空を見上げる。

 私の肩に止まっているモエギお兄ちゃんも空を眺めているみたいだ。

 サクラお姉ちゃんならすかさず飛びに行くけれど、お兄ちゃんは一か所に留まっていることの方が多い。


「セルリアは今日、昼も別で良いんだな?」

「うん。帰る時に戻ってくるよ」

「分かった。頼んだぞモエギ」

「チュン」


 出店リコリスは昼前に国内に入って夕方まで滞在する。

 兄さんたちは昼食を食べるかどうかも適当らしいけれど、私は食べないとお腹が空いて仕方ないのでリオンと合流したらとりあえず昼食の予定だ。


 帰りはリコリスの帰宅に合わせるので、まあ遊ぶ時間はそれなりにあるだろう。

 なんて考えている間にフォーンが見えてきて、モエギお兄ちゃんが先に飛んでいく。

 リオンを迎えに行ってくれたのだろう。……というか、そもそもリオンは起きているのだろうか。


 まあ最悪モエギお兄ちゃんが起こしてくれるかな。姉さまのことも起こしてたことがあるらしいし、多分どうにかしてくれるだろう。

 もしすぐに現れなくても入れ替わりにならない様に動かないでいよう、と心に決めてフォーンの大通りに入ったリコリスから降りる。


「気を付けてな」

「うん!行ってきます」


 杖を揺らしながら大通りの少し進んだ先、待ち合わせ場所にしている噴水の前に移動して適当に腰を下ろす。

 足をプラプラさせながら人の流れを眺めていたら、モエギお兄ちゃんが目の前に現れた。


 顔を上げるとリオンがのんびり歩きながらこちらに手を振っていた。

 モエギお兄ちゃんが肩に止まったのを確認してから立ち上がり、人を避けてリオンの方に向かう。


「よう」

「やっほー」


 ペチンと音を立てて手を合わせてから流れるように昼食の場所を決めて移動を始める。

 リオンはここ一週間冒険者活動に励んでいたらしい。

 大剣の手入れ道具に思ったよりお金がかかって怠けていられなくなったんだとか。


「いいやつ買ったの?」

「やっすいの買って剣駄目になっても嫌だからな」

「確かに」

「セルは杖の点検とかどうやってんの?」

「普段は傷がないかとか見るだけだけど……帰った時に魔力の乱れとか見てもらう感じかな」

「なんか大変そうだな」

「そう?私からすればリオンの剣の手入れの方が大変だよ」


 面倒な手入れも慣れてしまえばいつもの作業の一つになるのでお互いの作業の方が大変に見えるのだろう。

 そんなことを話しながら学校が休みの日に四人で行ったりもするいつもの食事処に入って適当に食事を頼んでこの後の予定を決める。


「そういやソミュールがセルが来たら連れてこいって言ってたな」

「ソミュールのいる場所知ってるの?」

「おう。行くか?」

「そうだね、気になるし」


 猫団子に混ざるソミュールを見れるかもしれないし。

 実は前の休み明けからちょっと気になっていたのだ。猫と一緒に寝ていた、なんていうからもしかして猫団子に混ざってるのかな、って。


 睡眠時間は同じくらいだろうし、混ざれそうな気もするのでそのあたりも確かめに行こう。

 そんな話をしながらやってきた料理を食べ、話はここ一週間の過ごし方に変わった。

 とはいえリオンの一週間はさっき聞いたので、今度は私があれこれ話す番だ。


 とりあえず左手に付けた杖固定用ブレスレットの自慢から始めることにした。

 使って見せたら笑っていたので、やっぱり誰が見ても面白い動きをしているらしい。


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