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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
91/477

91,空からの帰宅

「セルちゃーん!」

「シャムー!」


 半年前の休みとは違って、前より身軽に大き目のカバン一つと杖を抱えて学校の門に向かっていると、既に準備が終わっていたらしいシャムに突撃された。

 シャムの荷物は前と変わらないくらいだろうか。


 お土産の本が入っているから、帰りの方が荷物は軽いのだと言っていたのをぼんやりと思い出す。

 シャムとロイは今回も休みの初めから帰省してギリギリに戻ってくる予定らしいので、休みの間は会えないだろう。


「二人はまだ来てないよー」

「そうなんだ。リオンとか真っ先に来てそうなのに」

「私もそう思って探したんだけど、居なかったんだよね」


 もしかして急ぎで出る必要もないからと寝ているのだろうか。

 昼までには出ないと追い出されるはずなのだけれど。

 なんて噂をしていたら、校舎のほうからリオンが歩いてきた。


「お?もう二人とも居たのか」

「シャムが一番乗りだったね」

「ふふん!準備が思ったより早く終わったんだよね!」

「セルは今回身軽だな」

「一人で飛んで帰らないといけないからね」


 前の休みの時はちょうど出店が来る日だったから乗って帰ったけれど、今日は出店はイピリアに行っているので自力で帰らないといけないのだ。

 そんなわけで荷物は少なく身軽に飛んでいくスタイルになっている。


「リオンは今回もフォーンに残るんだよね?」

「おう。前に泊まってた宿に部屋取ってあるからな」

「もう取ってあるんだ?」

「埋まる前に行っとけってロイが言うから、こないだ取ってきた」

「流石ロイ……」

「僕がどうかした?」

「うわぁ!ロイ!」


 そのあたりの心配をしていなかったわけではないのだけれど、よく分からない部分だしと何か言ったりはしてなかった。

 でも確かに泊まる予定だった宿が埋まっている可能性とか、それくらいは思いついてもおかしくはないか。


「皆早いね」

「俺は剣と着替えあればそれでいいしなー」

「私は今回荷物増やせないし」

「私は前回とおんなじ感じだしー」


 荷物の量で言えばロイが一番だろうし、忘れて行ってはいけない物の多さも一番だろう。

 そんな話をしていたら、何かが空から降りてきた。

 手を出すとそこにポスっと収まって、チュンと一声鳴いた丸い小鳥は何かを確かめるように周りを眺め始めた。


「セルちゃん、その子知ってるの?」

「知ってるというか……モエギお兄ちゃん、小鳥バージョン?」

「チュン」

「……これも、セルの兄ちゃんなのか」

「私が一人で帰るって言ったら姉さまたちが心配したらしくて、道案内してくれることになったの」


 それが主目的だろうけど、もしかしたら三人のことを見てみたかったのかもしれない。

 手のひらから肩に移動したモエギお兄ちゃんは、リオンをじっと見つめてチュンと鳴いた。


「なんか、俺見られてね?」

「見てるね。私が遊びに来るときのお知らせ役かな?」

「チュン」

「おー、そういうことか」


 サクラお姉ちゃんも小鳥なのでどっちが来るのか私は知らなかったのだけど、三人の顔を覚える必要があったならモエギお兄ちゃんが来るのも納得である。

 道案内もお兄ちゃんの方が安心、と考えるのも分かるし。


「そろそろ時間かな」

「お、じゃあ休み明けに?」

「うん。休み明けに」

「私も行くねー。休み明けにまた会おう!」


 シャムとロイが去って行き、入れ替わるように校舎からミーファとソミュールが現れた。

 二人は休みの間ソミュールの知り合いの所に居るらしいから、運が良ければ遊びに来た時に会えるかもしれない。


 荷物もそれほど多くないようで、身軽にこちらに近付いてきた。

 今日はソミュールも起きているのでミーファが本当に身軽だ。


「やっほーミーファ、ソミュール」

「やっほーセルちゃん!リオンも!」

「ふああ……やっほー」

「お前らはもう出るのか?」

「うん。起きてる間に行きたいからねぇ」


 軽く話して去って行く二人を見送り、私もそろそろ、と荷物を持ち上げた。

 リオンは暇だからと門まで見送りに来てくれるらしい。

 大通りには学校の中で見た記憶のある人が結構いて、意外とフォーンに残る人も多いのかな、なんて予想をする。


「リオンって自分でご飯作ったりするの?」

「しねぇよ?どうした急に」

「食費が凄いかかりそうだなって」

「そうか?でもまあ、宿でパン焼くわけにもいかないだろ」

「まあ、確かに」


 話しながら大通りを進み、門の前でリオンと別れる。

 じゃあまた今度、と手を振って国外に出て、肩にかけていた荷物を一度下ろして杖を回す。

 杖に荷物の紐を通して落ちないことを確認し、荷物を挟むように杖の上下を掴んで風を起こした。


「よし、行こう!モエギお兄ちゃん!」

「チュン」


 肩から飛び立って私を先導するために前に出た小さな身体を見失わないように、風に乗って一気に速度を上げる。

 まあ、ここからは森に向かって飛んで森に着いたら木のない部分を見つけて降りるだけなので、案内は無くても大丈夫なんだけどね。


 それでも一人で帰ってこさせるのは心配、という姉さまたちの気持ちを無視する気もないから大人しく後ろに付いて行く。

 ……モエギお兄ちゃんは緑だから、森と馴染んでうっかりすると見失いそうだ。


 魔視を発動させて魔力を見て追いかけることにして、段々と濃くなってくる森の気配にふっと頬が緩む。森の中で育ったからなのか、森の気配はすごく好きなのだ。

 ふふっと笑っていると、モエギお兄ちゃんが横に来た。


 鳥の姿では分かりにくいけれど、楽しそうだね、と言われている気がする。

 楽しい!と声を出すとお兄ちゃんは再び前に出て、先ほどより速い速度で飛び始めた。

 ついておいで、という声が聞こえた気がして、私が速度を上げると同じくらい速度が上がる。


 競争するようにどんどん速度が上がっていき、予定よりずっと早く家が見えてきた。

 お兄ちゃんとこんなふうに飛ぶのは初めてで、なんだか笑いが止まらなくなってしまう。

 その勢いのまま家の敷地に降り立ち、玄関から出てきた姉さまにただいま!と声をかけた。


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