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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
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84,死屍累々の研究職

 紙の上をペンが走る音だけが響いていた。

 このテストが終わると、午前は終わりになり昼休憩に入る。

 どこからか、誰かのお腹の音が響いてきたけれど、それを気にしている余裕はない。


 ……いや、流石に集中力が切れてきて、私もお腹空いたなぁ、なんて思ってしまった。

 流石にね、お腹は空くよね。だってもう普段ならお昼ご飯を食べているわけだし。

 生きている以上空腹はどうにもならないよね。……なんて、考えている場合ではないのだ。


 何せ今はテスト中なのだ。くだらないことを考えている暇があったら回答を埋めないといけない。

 とはいえ、実はもう終わりが見えているので焦る必要はない。

 見返しておく時間はないかもしれないけれど、とりあえず埋めることは出来そうだ。


「……そこまで。全員ペンを置け」


 鐘の音と共にヴィレイ先生の声が響き、机の上にペンを置いたのだろう音が複数聞こえてくる。

 私もペンを置いてふっと息を吐く。とりあえず、空欄はないので後はどれだけ合っているか。

 なんて考えていたら机の上の紙が浮いて、ヴィレイ先生の前に集まっていく。


 全員分の解答用紙を回収した先生が解散の合図をかけて教室から去って行き、教室の空気が一気に緩んだ。

 かくいう私も身体を伸ばして何となく天井を見上げてみたりした。


「セルー。昼飯食い行こうぜー」

「おー……」

「すっげえ緩い返事」


 頭をペシペシと叩かれたので手を捕まえて手首を逆に捻る。

 これ痛いよねえ。そんなに強くやってないけど。

 ……あんまり痛そうじゃないな。もしかしてリオンは手首が柔らかい人だろうか。


「ほら行くぞー」

「元気だなぁ……」

「そりゃ、やっと飯だからな」

「……もしかしてずっとお腹鳴ってたのリオン?」

「そんな響いてたか?」


 身近なところに犯人がいた。

 朝からあんなにがっつり食べていたのにもうお腹空いてるのか。

 まあ、行くけどね。行くからそんなに急かさないでほしい。


 ミーファはもう少ししてから移動するらしいので、リオンと二人で教室を出て食堂に向かう。

 なんというか、廊下を歩く人たちにいつもより覇気がない。

 みんなテストで疲れているみたいだ。特に戦闘職は学年が上がると座学が減るらしいし、もしかしたら研究職より疲れているかもしれない。


 なんて、思っていたのだけれど、食堂に入ったら明らかに研究職の人の方が疲れていた。

 凄いな。目が死んでる。姉さまがたまにしていた目だから見慣れてはいるけれど、これだけ並ぶとちょっと怖い。


「……なんかすげえな」

「そうだね。シャムたちを探そうか」


 口から魂が出ていそうな人たちに囲まれながら昼食を選び、とりあえずシャムとロイを探す。

 いつもなら二人が先に来ているのだけれど、今日はどうか分からない。

 もしかしたら疲れ果てて教室から動けていないかもしれないし。


「お、居た」

「どこ?全然見えない」

「いつもんとこよりちょっと奥だな」


 居たらしい。見えないけど。全然見えないのでリオンに先導してもらうことにした。

 むしろなんでリオンは見えたのだろうか。そんなに圧倒的な身長差があるわけではない……はず、なんだけど……あれ?リオン身長伸びた……?


「なんか二人とも目ぇ死んでね?」

「……あ、リオン。セルちゃんもやっほー」

「やっほー。疲れ果ててるね?」

「テスト甘く見てたね……脳が疲労を訴えてる感じ……」


 ははは……と乾いた笑いを漏らす二人のトレーには朝と同じく甘味が乗っていた。

 テスト時間は同じはずなので、ここまで疲れ果てている理由は内容なのだろう。

 どんな感じだったのかちょっと気になる。


「戦闘職はテストどうだった?」

「授業の復習みたいな感じだったよ。どれだけ覚えてるか確かめる、みたいな」

「そっちはどんなんだった?」

「覚えてるのは前提条件だったね」

「記憶の中から必要な情報を引っ張り出してきて、それを使って解を求めるのがほとんどだった……脳みそフル回転させるの疲れた……」


 テストという言葉の重みが違った。思わずわぁ、と声を出してしまうくらいだった。

 初めて見る情報もかなりあったらしいので、そりゃあ死んだ目にもなるな、なんて思ってみたり。

 シャムが甘いお茶を飲んでいるのはまあまあ見る光景だけど、ロイまで飲んでいるのはやはり脳が糖分を求めているのか。


 私たちは午後のテストは座学一つと実技一つだけれど、二人は午後も座学詰めらしいので脳の疲労が心配になる。

 終わったら遊びに行こうね……と呟くシャムの頭を撫でながらスープに口を付け、午後の科目名を思い出す。


 私的には午後の方が楽な内容なので気楽に行きたいところだ。

 明日のことは考えない様にして、とりあえず今は昼食を食べることにした。

 食べないことには頭が回らないし、集中も出来ないので食事は必須。


「そういや実技テストの内容って聞かされてねえよな」

「そうだね。一人ずつやるってことしか聞いてないよ」

「なにすんだろうなぁ……」


 実技、と聞くとこの一年間で行われたあまりにも濃い内容の授業が脳内を過ぎ去って行って遠い目をしてしまう。

 説明より行動が先の先生とかね、結構いるからね……


 テストの内容も全く知らされていないし、これはなんだか少し嫌な予感がする。

 今考えても仕方ないから忘れておこう。というか、考えたくないから忘れよう。


「はぁ……午後の分、復習しないと」

「もうちょっと休もうよぉ……」


 現実逃避しつつ昼食を食べ進めて、最後にお茶を啜っていたらロイとシャムが小さな声で会話していた。

 普段は意欲的に学びに行くシャムが休憩を所望しているのは珍しい光景だ。テストの時くらいしか見られないかもしれない。


「まだ……まだのんびりしたい……」

「でもやらないと後が辛いよ」

「ああああ……」


 葛藤の末二人は先に教室に行く選択肢を選び、嫌そうにしながらも去って行った。

 それを見送ってから私たちも食器を片付けて教室に戻り、結局午前中は起きなかったソミュールを囲んでテスト前の最終確認に勤しんだ。


 午前中のテストの話にもなったが、リオンは謎の自信に満ち溢れていてミーファは不安が残るらしい。……なぜだろうか、最終的な結果はミーファの方が上な気がする。


 そんなことを話しながらもちゃんと最後の復習はして、そろそろ始まるから席に着こうという話になったところでソミュールが起きて全員で驚いたりした。


私は高校時代結構底辺な学校に通っていたのでテストも楽々だったのですが、友人がトップレベルなところに通っていて私たちが冬にやっている内容が春のうちに終わっているとかザラでした。

レベルの違い……と驚いた記憶があるので、戦闘職と研究職のテストレベルの違いはそんな感じのイメージで書いています。

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