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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
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79,休日の女子会

 朝食を食べるために食堂に行き、いつも通りにやってきたロイと一緒にご飯を食べて別れて。

 図書館に本を返しに行って、その場で別の本を読んでから新しく本を借りて。

 そうして昼食でも買おうかと食堂に戻ると、休みの日はあまり人がいない印象があった食堂が何だが賑やかだった。


 ……はて、なんでだろうか。

 何となく遠目で見ていると、食堂にいる人たちは何人かのグループに固まっていてノートや教科書なんかを開いている。


 つまり勉強中なのだろうか。

 まあ、テストも近いしそんなこともあるか。

 そんな風に納得して、なるほど食堂はこういう時に使っていいのか、と一人頷く。


「あ、セルちゃん!」

「シャム。おはよう」

「おはよー!」


 基本的に朝食をあまり食べないシャムだが、今の時間帯は何か食べる気になるのだろうか。

 休みの日に食堂で行き会ったのが少し珍しくて、ちょっと距離を詰めてみる。


「シャムはご飯?」

「ううん、お茶飲みたくて。セルちゃんは?」

「図書館帰り。お昼用にパンでも買っていこうかと思って」

「なるほどー。まあセルちゃんは誘い待ちとかしないか」

「……誘い待ち?」

「そう。テスト終わったらダンスパーティーがあるでしょ?それの誘い待ち」

「なるほど……シャム、よかったら私の部屋来ない?」

「え、いいの?」

「うん。茶葉は今レイムールしかないけど」

「全然いいよー!やったー!」

「じゃあお昼買っていこ」

「うん!」


 ダンスパーティー。それ自体の存在は知っていた。

 だって年間予定に書いてあるし。

 教養としてのダンスを習いたい人はこの時期の放課後に習えるらしい、と言うのも聞いたことはある。


 でも正直に言うと興味がなかったので全然情報を仕入れていなかった。

 学校を卒業した後にそういった場所に呼ばれても困らない様に、とか、卒業する人たちとの最後の交流に、とか意味しかないと思っていたのだけれど、もしかしてそれだけじゃないのだろうか。


 シャムは色々と知っていそうだし、お茶会がてら教えて貰おう。

 彼女もテストが近いからと焦るタイプではないからのんびりお茶する余裕はありそうだ。

 そこまで考えて、もう後一ヵ月くらいでテストなのかと実感する。


 テストが終わるとあとは件のダンスパーティーがあり、その後はもう卒業式だ。

 一年なんてあっと言う間だった。来年からは専攻授業も始まるけれど、今年より忙しくなるのだろうか。


「わーいセルちゃんの部屋!」

「どうぞー。机はそれでいいか。椅子は……あ、あった」

「なんで当然のように予備が……?」

「もしならこれをベッドサイドに置いて本を積もうかと」

「なるほどね」


 置いてあった予備の椅子は私が持ち込んだもので、背もたれがないタイプだから一時的な本の置き場にしようかと思っていた物なのだ。

 思っていたより部屋が広くてしっかり家具も置いてあったから使われないまま置いていた。


 机はこれも予備に、と置いてあった折り畳み式の物を広げて、お茶の用意をして向かい合わせに腰かければ即席お茶会セットの完成だ。

 部屋にあった物だけでこれだけしっかりお茶会出来ることに私は今ちょっと驚いてる。


「凄いね。なんていうか、色々ある」

「私も今ちょっと驚いてる。荷物の中に色々入れられてたけどここまでとは……」

「把握してなかったんだ?」


 なんて話しながらとりあえずお茶を飲み、ほっと息を吐く。

 中々うまく淹れられたんじゃないだろうか。

 湯沸かし器を持ってきてからそれなりの頻度で自分でお茶を淹れているから前より上手になった気がする。


「それで、セルちゃんが聞きたいのはダンスパーティーのこと?」

「うん。参加自由だったし、別に誘われなくても参加は出来るんだよね?」

「そうだよー。でもどうせなら誘われたい!みたいな。あわよくばお近づきに!みたいな」

「……分からない……」

「んー……私はこの人にわざわざ声をかけてもらったのよ!って言いたい、みたいな?」

「……なるほど」


 つまり誘われたという事実が欲しいのか。

 誘われてダンスパーティーに出席したという事実自体がステータスになるということなら、人があれだけ集まっていたのも何となく分かる。


「あとはねー……ここには結構、世界中から色んな人が集まってるから、卒業後に行く先を作りたい、みたいな子も結構いるみたい」

「なるほど、人脈作りだったのか」

「そういうことだねー」


 人脈は力だ。姉さまが一体どこで作ったのか分からない数多の人脈を駆使して色々しているのを知っているからそれはよく分かる。

 なるほどなるほど。それならまあ、あれだけの人が誘われ待ちすることもあるのだろう。


 ふんふんと頷きながらお茶を飲み、ついでに買ってきたクッキーを摘まむ。

 シャムは私たち以外にも交流関係が広く、学校内のことなら結構知っている。

 私がそのあたりのことが苦手だからすごく助かる。


「セルちゃんはダンスパーティー行くの?」

「行かないかな。面倒だし」

「えー。……あ、でもその言い方だと踊れはするんだね?」

「まあ、何種類か教わったよ」

「へぇー……見たかったなぁ……」

「シャムは行くの?」

「うん。色々話とか聞けそうだし」


 こういう行動力の違いが情報の収集力の差なんだろうな。

 そう思いこそすれ、見習おうとは思えない。

 どうしたって他人と関わるのはちょっと苦手なのだ。仲良くなれば楽しいけれど、仲良くなるまでが面倒。


「セルちゃん誘われたい相手とかいないのー?」

「研究室来いって誘ってくる先輩なら居るよ」

「そうじゃないのー。……え、いやもしかしてそういうことなの!?」

「ごめん、そういうことじゃないの」

「えぇー」

「シャムは?」

「誘われたい相手は別にいないかなぁ」


 キャッキャキャッキャと女子トークに花を咲かせる。

 話しながらお茶を追加したりおすすめの茶葉を聞いたりしていたら時間帯はお昼になっていて、それに気づいたタイミングで買っておいたパンを食べ、午後もそのままお茶会は続行された。


 話題はダンスパーティーのことからお茶のことに移り、その後は本の話や町の可愛い小物屋さんの話、おすすめの喫茶店の話なんかにも変化した。

 姉さまとカーネリア様がお茶会中ずっと楽し気に話しているのは聞いていたけど、なるほどこれは確かにいつまででも話していられる気がする。


セルちゃんとシャムの女子会は私が見たいのでいくらでも書きたい。

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