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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
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77,初めての対戦カード

 午後の授業に向けて、食堂から室内運動場へ移動する。

 うん、まあつまり、今日の午後は手合わせです。

 ここ最近の授業はテストに向けてのおさらいが多めな座学か、来年に向けて選択授業を絞るための手合わせか、と言った感じになってきている。


 武器を色々試している人もいるし、一つに絞ってとにかく扱いに慣れようとしている人もいる。

 元々定まっていた人たちがそれを受ける、みたいな感じかな。

 私なんかは今まで手合わせで手を抜いていたことが先輩たちとのあれでバレてしまったので、なんだかちょっと周りから距離を置かれた気がする。


 なんでだろう。今までだってサボっていたわけではないのに。

 しっかり風は起こして準備をしたうえで手合わせに臨んでいたし。

 そんなことを隣にいるリオンに呟いたら、呆れたような目をされた。な、なんだよう。


「セルお前、それはサボってたからとかそういうんで距離置かれてんじゃねえよ?」

「え、じゃあなんで」

「お前がこの中でも一番くらいに戦闘力高いからだよ」

「……うん?」

「俺説明下手だからこれ以上はもう言い方が分かんねぇ」

「うーん……?」


 つまり……つまり怖がられてる?

 そういうことかな?わかんないから、そうだってことにしておこう。

 まあ、別にそれほど交流関係が広いわけでもないし仲のいい人たちには避けられていないし、気にするほどのことでもない。


「始めるぞ。お前らくじ引け」


 武器を手に馴染ませるには実戦形式が一番、という思考の元増えてきた手合わせに、ヴィレイ先生はとうとう自分でくじを引くのが面倒になったらしい。

 番号の書かれたくじを箱に入れて私たちに引かせるのが最近のスタイルだ。


 時々、先生たちの指示で対戦相手が決まったりもするけれど今日はくじ引きらしいので大人しくくじを引く列に並ぶ。

 ……お、ソミュールが起きてる。今日は参加するのだろうか。


「ミーファ何番だった?」

「六番。……セルちゃんと当たるのは怖いからやめてほしいな?」

「全然思って無さそう」

「思ってるよ!」


 先にくじを引き終わったミーファが列の近くを通っていたので声をかけて番号を確認する。

 ミーファは本当に、戦闘になると雰囲気が変わるからその変化と緩急も合わせて慣れておきたい。

 なので、私の対戦希望としてはミーファかソミュール辺りとやりたいところだ。


「ミーファ六番かー」

「リオンもミーファとやりたいの?」

「いや、やりたくねえ。気付いたら入り込まれててビビる」


 そんなことを話しながら待っていたらくじ引きの順番が回ってきた。

 手早く引いて列を抜け、落ち着いたところでくじに書かれた番号を確認する。

 ……残念、七番。惜しかった。


「セル何番だー?」

「七番。惜しかったな……」

「……マジか」

「何が?」

「俺も七なんだけど」

「……リオンかぁ……」


 今まで一回も起こらなかったのに、ここに来てリオンと当たってしまった。

 思わずお互いのくじを見比べるけれど、書かれた数字は変わらない。

 ほんとに?ほんとに?と意味もなく何度か確認して、事実を受け入れてそっと天を仰いだ。


「そんなに嫌かよ」

「いつも言ってるでしょ……絶対楽しいからヤダ……」

「もう先輩たち相手にはしゃいだ後なんだから関係ねーだろ」

「そうなんだけどさー……あー、もう、こうなったら私が避けられてるこの雰囲気にリオンも巻き込んでやる」

「なんだそれ」


 他より実力が頭一つ分抜けているのはリオンも同じなのに、私だけ避けられることに今更腹が立ってきた。

 巻き込んでやる。どうせリオンなら対応できるんだから、全力で巻き込んでやる。


「七番目かー。ちょっと時間あるな」

「そうだね。ソミュール何番目かな」

「今日起きてんのか?」

「さっきは起きてたよ」


 まあ、巻き込む巻き込まない関係なく全力でやっていい相手なので今は考えるのをやめていつもいる壁のあたりに移動する。

 お、今日の最初は魔法使い対魔法使いだ。ちょっと珍しい。


「あれどっちが勝つんだ?」

「さあ?とりあえず二人とも攻撃よりサポート系の方が得意だったと思うよ」

「へー。じゃあ一人で戦うのはあんま得意じゃねえのか」

「多分ね。私が見てる感じそんな気がするだけ」


 このあたりは、来年取る授業で分かる事だろう。

 魔法使いとひとくくりにしているが、回復系や補助系は来年からが真骨頂だ。

 複数戦闘で真価を発揮するので、そもそも一対一の戦闘の勝ち負けにはあまり価値がないだろうし。


 どうなるか、よりもリオンとの戦闘に向けてどうするかを考えないといけない。

 さてどうするか。別に負けたからと何かあるわけではないけれど、どうせなら勝ちたい。

 風だけで押し切れるだろうか。私が風の他に氷を多用することをリオンはよく知っているはずだ。


 ……リオンと真面目に戦うのは初めてだから、どうなるか分からない。

 じゃれ合いのようなことは結構やっているけどお互い真面目にやる気がないあのじゃれ合いは参考にならないだろうし。


「セルがまた難しいこと考えてる顔してる」

「……それどういう顔?」

「難しいこと考えてそうな顔だな」

「そのままじゃん……」


 どや顔で言ってくるリオンを半目で見ながらそんな顔をしていただろうか、と考える。

 まあ、それはいいんだ。今それを考えている場合じゃない。


「何考えてたんだ?」

「リオンとの戦い方」

「……ガチだ……セルがガチの目をしてる……」

「どうせなら勝ちたいからね」

「ま、負けねぇぞ……」


 ジッ……とリオンの目を見つめると、若干後ろに下がりながらも対抗はしてきた。

 ……何故だろう。勢いだけで押し切れそうな気がしてきた。今なら勝てるような気がする。

 なんて話をしていたら、いつの間にか順番が回ってきたようだ。


 ヴィレイ先生に呼ばれたので、寄りかかっていた壁から離れ、中央の円に足を向ける。

 左にリオンが居るので杖は右手に持っている。普段は左手に持っていることが多いのだけれど、まあ利き手は右なので。


 ゆっくりと杖を回して何となく自分の状態を確かめる。

 風を起こすために回すのと違い、のんびりのんびり回していく。

 ……上々。気分が上がってきたのもあるけれど、いつもより調子がいい気がする。


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