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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
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76,放課後勉強会

 ヴィレイ先生の荷物持ちとして魔術系統の道具店に行ってから少し経った。

 あの店は「ヴェングの石」という名前のお店なのだと学校に戻ってからヴィレイ先生が教えてくれた。


 先生とサルフィさんは昔からの知り合いなのだという。

 あの店は存在を知っていないとたどり着けないらしく、私たちはあの場所にお店があると知っているから行こうと思えば今後一人でもたどり着ける。


 けれど、意味もなくいくのはやめておけと言われた。

 ……それはまあ、何となくわかる。魔術系の人に関わりすぎるのは良くないことだとウラハねえが口を酸っぱくして言っていたのを覚えている。


「セルー。なあ聞いてんのかよ?」

「聞いてなかった。なに?」

「聞いてなかったのかよ!」


 今いる場所は自教室。普段は離れて置かれている机をくっつけて教科書と今までの授業のメモ書きを広げている状態だ。

 一緒に居るのはリオンとミーファ。ソミュールもいるけれど今は寝ている。


 いよいよテストが近くなってきて、まだ私に泣きつくことを諦めていなかったらしいリオンと放課後話しているところにミーファがやってきて、ミーファもいるなら仕方ないと私が折れてソミュールも加えて四人で一緒に勉強することになったのだ。


「セルこれは?」

「それさっきも説明したよ」

「は、どれ?どこ?」

「自分で探してー」

「セルちゃん、ここのメモ見せてもらってもいい……?」

「いいよ、はい」

「ありがとう!」


 私は自分の勉強もしているけれど、どちらかと言うと二人に聞かれたことを答えつつ教科書を読み直しているだけ。

 時々モゾッと動くソミュールをつついたりもしているけど。


「んえ……?何時……?」

「まだ五時前だよ。おはよう」

「おはよ……ふぁ……」


 もきゅ、と謎の音を鳴らしたソミュールは枕から身体を起こしてぐいーっと伸びをする。

 勉強会を始める直前は起きていたので何をしているのかは分かっているはずだ。

 広げられた教科書なんかを眺めて、リオンの手元の紙を覗き込む。


「リオンこれ違うよ?」

「え、は?どこ?」

「ここー」


 ソミュールは基本寝ているけれど、元の記憶力がいいのか授業の内容は大体後から補填して覚えている。

 この中で一番危ういのはリオンだろう。ミーファは真面目にやってるし。


「こうしてみると、私ちゃんと字書けるようになったんだなぁって思うよ」

「ミーファ頑張ってたもんね」

「えへへ……セルちゃんも練習付き合ってくれてありがとうね!」


 可愛い。うさ耳の間をモフモフと撫でる。

 はぁ……とてもいいモフモフだ……これはもう少しモフモフしていないと。


「セルリアはぁ?やらないの?」

「復習はしてるよ」

「そっかぁ……」

「ソミュールは?やんないの?」

「んー……あんまり頭働かない……」

「そっか」


 起きてすぐに動ける時とそうでない時があるソミュールは今日は駄目な日だったらしくぽてっと枕に頭を落とした。

 前髪を止めている飾りが目の前にあるので、ちょっとしたいたずら心が働いた。


 パチン、と音を立てて外れた飾りに気が付いたのか、ソミュールが顔を上げる。

 そしてうあぁ……と声を出した。

 止められていた前髪が落ちてきて顔にかかっているのを面倒そうに避けて、ソミュールがジト目でこちらを見る。


「セルリアぁ……」

「んふふ。ごめん」


 髪留めを返して纏めていないのは初めて見たソミュールの前髪をわしゃわしゃと撫でる。

 んえぇーと声が漏れているけれど、嫌ではないようで逃げようとはしない。

 ソミュールの前髪を乱して満足したので手を引っ込めると、彼女はいそいそと前髪を止め直した。


 シャムの髪型もだけれど、その髪型で固定されている子たちは迷いなく何も見ずにいつもの髪型にセットをして、それが寸分たがわぬいつもの髪型になっている。

 慣れってすごいな、と見るたびに思っていたり。


「あー……腹減ったな……」

「確かに……」

「まだ夕飯まで時間あるよ?」

「くあぁ……ねむ……」

「ソミュちゃん部屋に送ってちょっとしたら夕食の時間になるかな?」

「そうだね。行く?」

「行こうぜー!腹減ったら集中出来ねぇよ」


 再び寝落ちたソミュールを横目に広げていた勉強道具を片付けて、荷物をまとめてそそくさと移動する。

 ソミュールはミーファが背負って私が浮かせて、ミーファとソミュールの荷物はリオンが担ぐ。


 まあつまりいつも通りだ。

 四人でのんびり移動しながら、ミーファがそういえば、と声を漏らす。


「セルちゃんとリオンは、ヴィレイ先生のお手伝いしたんだよね?」

「おう。荷物持ちしてきたぜ」

「どんなところに行ったの?」

「魔術素材のお店だよ」

「なんか不思議なところだったよなぁ」


 あの時は色々と衝撃で考えられなかったが、思い返せば店主であるサルフィさんも大分特殊な外見をしていた。

 ……いや、外見と言うか、服が凄く特殊。


「思い返すと、あの布どうやって保ってたんだろ……」

「身体に巻いてたやつか?……確かにあれ、普通落ちるよな」

「よく分からないけど、楽しそうだね」


 ニコーっと笑ったミーファの頭を撫でつつ廊下を進み、ソミュールを部屋に寝かせて部屋に鍵をかけ、そのまま食堂に向かうことにした。

 ソミュールの部屋の鍵は部屋に備え付けのポストに入れておく。


 ミーファ曰くいつもこうして鍵を返しているから、ソミュールも鍵の場所は分かっているらしい。

 そんな話をしながら時間を確認すると、そろそろ夕飯が始まる時間だ。

 話は今日の夕飯のことになり、食堂に入ると同時に鐘の音が鳴った。


 ミーファも一緒に食べるかと聞いたけれど、彼女は笑顔で断って去って行ったので私とリオンは夕食を持ってシャムとロイを探すのだった。

 ちなみに二人はまだ来ていなかったので、先に座って待っていることになった。

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