表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学び舎の緑風  作者: 瓶覗
72/477

72,一人で過ごす静かな休日

 朝日代わりの照明の点灯で目が覚めて、ぼんやりとしたまま身体を起こす。

 今日は休みで、授業はない。どうやって過ごそうかな、と昨日から考えてはいたけれど、特に予定は決まらなかったので一日読書でもしていよう。


 そんなことを考えながらベッドを降りて髪留めを持って隣の部屋に移動する。

 髪を梳かしてハーフアップに纏め、ふとなんだか前髪が伸びてきたなぁとそんなことを思う。

 休み中はそんなこと思わなかったのに、なぜ今になって思うのか。


 切ろうかなぁ……なんて考えながらクローゼットを開けて適当に服を見繕う。

 校内から出るつもりはないので適当でいいだろう、と思いつつ、部屋からは出るんだからあんまりダラダラした服では過ごせない。


「はー……朝ごはん食べよ」


 そんなわけで家でよく着ていた組み合わせで着替えて、杖を片手に食堂に向かう。

 休みの日は朝から食堂に来る人が少ない。

 みんな寝ているし、休みだとここは有料の食堂になるので外で食べる人もいる。


「あ、セルちゃん」

「ミーファ。おはよう」

「おはよー。朝ごはん?」

「うん。ミーファも?」

「私は街に出るからパンだけ買いに来たの」


 ミーファは休日冒険者として活動しているらしい。

 討伐任務などにはあまり出ないで薬草採取などをメインにしていると言っていた。

 今日もそのために朝から街に出るようだ。気を付けてねーと声をかけて食堂のメニューを眺める。


 果実入りのパン、後はまあ適当にお茶と……野菜スープが美味しそうだな。それにしよう。

 まだ暑さも残る時期だけど、私は暑かったら氷でも作って浮かべておく人間なのでそのあたりは別に気にしない主義だ。


 食べたい物を食べたらいいんです。野菜もしっかり取ってるし。

 暑いからといって冷たいものばかり食べていてはいけない、と昔から言われていたからいつも意識しているし、実は冷製スープとか苦手だし。


「……ロイだ。おはよう」

「セルリア。おはよう。早いね」

「そっちもね。何か用事?」

「癖付いてるだけだよ。セルリアもでしょ?」

「まあね」


 話しながらロイの向かい側に腰を下ろす。

 残り二人は起きてこないだろう。リオンはどうせ昼まで寝ているだろうし、シャムは起きていても朝食を食べるつもりがないので食堂には来ない。


 ロイは本人も言っているが、朝は早く起きるのが習慣になってるのだ。

 まあ、私もだけれど。日が昇ったら目が覚めるように出来ている。

 そんなわけでいつも通り二人で話しながら食事を済ませて、研究室に行くというロイと別れて図書館に向かう。


 本は昨日返して新しいものを借りていないので、このまま何か借りていこうと思っている。

 一冊くらい図書館で読んできてもいいし、二冊くらい借りてきて部屋でお茶を飲みながら読むのもいいかな、とか考えてみたり。


 何を読むかは決めていないけれど、何となく魔物の生態とかやたら詳しく掘り下げている本とかが読みたい気分だ。

 たまに謎の情熱を一種類だけに注いでいる研究者とか居るから、そういう本を見つけると面白くてついつい読んでしまう。


 ちなみに姉さまが珍しく薬学系統以外で読んでいた本がヨルハ・プーアという不思議生物の本だった。

 二匹一組、対で生涯共に過ごす生物。姉さまの持っていた本を読ませてもらったこともあるけど、生態は大分謎な生物だ。


 姉さま曰く、めっちゃ可愛いとの事。

 昔会ったことがあるとか、今でも会いに行くと出て来てくれるとか。

 そのあたり聞いているとヨルハ・プーアより姉さまの方が謎な気がしてくる。


 まあ、とにかくその不思議な生き物ヨルハ・プーアについてだけを記した本は、とあるエルフが書いていて五冊ほどある。

 そんなに書くことがあるのかとちょっと不思議に思うけれど、書くことがあったから五冊も書いているんだろう。


「あら、おはよう」

「おはようございます」


 まだ生徒は誰もいない図書館の中で、既にカウンターの内側で本を読んでいたレースさんに挨拶をして奥の本棚に向かう。

 このあたりが魔物や魔獣、幻獣なんかの本をまとめた棚だったはずだ。


 本棚の間をゆっくりと歩きながら本の背表紙を眺めて面白そうなものを探す。

 時間はあるから、とゆっくりゆっくり探していたら、他より新しい本を見つけた。

 どうやら上下巻で、わりと最近書かれた本であるらしい。


「……これにしようかな」


 上巻の最初の方をパラパラと捲って、面白そうなので二冊纏めて借りていくことにした。

 予定通り部屋でお茶を飲みつつ読書にするので、昼食が面倒になって抜いてしまわない様に食堂に寄ってパンでも買っていこう。


「今日は読書の日?」

「はい。部屋でお茶でも飲みながら、と思って」

「あら素敵ね」


 貸し出しのカードを書いてもらって、二冊の本を抱えて食堂に向かう。

 ちょっとボリュームのあるサンドイッチを買って、それも持って杖を揺らしつつ機嫌よく部屋に戻ってきた。


 さて、まずはお茶の準備だ。湯沸かし器に水を注いで沸くまで待ちつつ、茶葉を用意する。

 姉さまのお気に入りはアルハニティーという甘みの強いお茶なのだけれど、私はもう少し甘みの控えめなものの方が好きなのだ。


 なので、用意した茶葉はレイムールという甘みよりは酸味の強いさっぱりとしたお茶だ。

 私は昔からよく飲んでいたお茶で、主にここ、第四大陸で栽培されているものらしい。

 そんなわけでこの大陸にいる限りは気軽に手に入るし高価なものでもないので抱え込んでいる。


 ティーポットに茶葉をいれてお湯が沸くのを待ちつつ、その間に机の上に本を乗せて杖をいつもの場所に立てかける。

 買ってきたサンドイッチは目につく位置に。時計もちゃんと目に入る位置に置いておく。


 そんなことをしている間にお湯が沸いたのでティーポットに注ぎ入れ、蓋をしてのんびり待つ。

 少ししてからティーカップに注いでまずは一口。

 ……うん。美味しい。これは読書が捗りそうだ。


 ティーセットの用意も出来たのでいざ椅子に座り、置き場所を調整してからそっと本を開いた。

 借りてきたのは、ギューヴィルという魔獣について書かれた本。

 一冊に収まらなかったらしく一種の魔獣を記すのに上下巻になってしまったらしい本。


 この魔獣はちょっとだけ思い入れ……はないけど、興味はある。

 ギューヴィルは全身が猛毒で包まれているのだけれど、数年前までその毒の解毒方法が分かっていなかった。


 その毒に侵されたら死を待つしかないと言われていた毒なのだが、その毒の解毒薬を作り出したのが我らが姉さまである。

 そんなわけで、二冊に渡って書かれた内容にはすごく興味があるのだ。


このギューヴィルという魔獣、名付けたのは当然私で前作から出てきている魔獣なんですが、ギューヴィルなんだがギュヴィールなんだが毎度毎度分からなくなります。毎回確認する羽目になっています。分かりにくい名前は付けるもんじゃないですね。


話しは変わりまして、誤字報告を頂きました!ありがとうございます!

漢字の変換ミス等なら「あ、やべ」程度で終わらせてしまう人間なのですが、リオンの名前を間違えるというあまりにもなミスをしていました。思わず笑っちゃった。

ご報告本当にありがとうございます……!!以後気を付けます……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ