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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
68/477

68,力の差は大きいらしい

「それじゃあ模擬戦を始めようか」


 先生のその声で生徒は一斉に動き出す。

 順番なんかはまだ聞いていないけれど、そのあたりはヴィレイ先生が今から教えてくれるんだろうか。


「……あ、そうだ、私が名乗ってなかったね。このクラスとは初めましてだったのを忘れてた」

「それが終わり次第順番を知らせるから早くしろ」

「はあい。改めまして、私はトープと言います。担当は弓と補助魔法。よろしくね」


 改めて、と言うことでなのか、先ほどまでより丁寧な口調で先生が自己紹介をした。

 この人がサポート系の魔法を担当している先生だったらしい。

 そういえば、魔法三系統の中でサポート系の先生だけは授業に居なかった。


「順番はこの箱の中に入れた紙に書いてある。各組一人代表者を作って引きに来い」


 ……まさかのくじ引きだった。いや、まあ確かにいつもくじ引きなのだけれど。

 だけどまさか今日もくじ引きだとは思わなかった。

 いつもは先生が引いているけれど、今日は自分たちで引いて順番を決めるらしい。


「どうする?セル引くか?」

「えー……リオン行きなよ」

「ミーファは?」

「わ、私は遠慮しとく……」

「じゃあリオン。行っておいでー」


 リオンを送り出して、ミーファと一緒に最初はやだねーなんてのんびりと話す。

 出来るだけ最後の方がいい。それまでに先輩たちの動きをみて覚えたいんだけど、リオンは何番を引いてくるんだろうか。


 目線の先で箱から紙を抜き取ったリオンは、それを先生に見せて何か話してから紙を返して戻ってきた。

 移動しようぜーと言ってくるリオンについていき、壁際に移動してからどうだったのかを聞く。


「六番だと。結構最後の方か?」

「そうだね……あれ、本当に最後じゃない?」

「七組いなかったっけ」

「いたっけ」

「……多分、七組いるはず」


 意外と把握してない、自分たちのクラスの実技班の数。

 多分七組くらいはあるはずなので、一番最後ではないはずだ。

 でもまあ、前に五組いるならある程度見ていられるだろう。


「とりあえず見てようか。位置取りとか確認したいし」

「おー。そこらへんは任せる」


 くるり、と杖を回して見えやすそうな場所を陣取る。

 弓矢は最悪風で飛ばしてしまえばいいかな、とも思うけれど、弓使いが魔法を扱える場合風を無効化して飛ばしてくるとかもあり得るのだ。


 私は魔法防御を全部貫通させる弓兵を知っているので、単純に風の壁を作るのもどうかと思ってしまう。ソミュールが起きているならそのあたりも試してくれそうなのだけれど。


「……リオンの剣に纏わせる魔法くらいは決めたいなぁ」

「纏わせんのか」

「うん。あの盾魔法加工されてるから、素のままだと弾かれると思う」

「セルちゃん、そんなのも見えるんだね」

「今確かめてるからね。……んー……他は魔法装備無いかな」

「その視点すげえよなぁ。見てみてぇ」

「見る?出来るよ」

「マジで?」


 リオンの目に魔視をかけながらそろそろ始まるらしい第一戦目を眺める。

 横でリオンが何だこれーと楽しそうにしているので、魔視はこのままにしておこう。消費魔力はそんなに多くないので別にいいだろう。


 魔法使い組の得意魔法や属性なんかはある程度覚えたので、対応の仕方を予想しながらとりあえず見逃さない様に、と目を向ける。

 最初は四人組。見えている限りはとてもバランスのいい組だがどうなるのか。


「セル、これ何が何だか分かんねえわ」

「魔法基礎でやってるはずだけど?」

「……こ、今度もっかい教科書読むって……」


 何も分からないなら試合を見ている意味がないので、リオンにかけていた魔視を解く。

 横から残念そうな声が聞こえてきたが、真面目に授業を聞いていなかったのが悪いので聞かなかったことにした。


 そんなに気に入ったならまた今度やってあげるから、今は目の前の試合に集中してほしい。

 ミーファは既にこっちの声に反応しないくらい先輩たちの方に見入っているので問題ないだろう。

 ……やっぱり、黒い方のウサギの血とか混ざってるんだろうか。


 目線の先の先輩たちは、何やらわちゃわちゃとじゃれ合っている。

 あれはいったい何をしているんだろうか。もしかしてあれが作戦会議なのだろうか。

 ……すごく、じゃれ合っているんだけれど。そうとしか見えないのだけれど。


「……弓が最後尾は分かるんだけど、短剣も盾の後ろなんだね?」

「魔法の初撃を弾くためじゃないかな。メイズさん魔法見えないし」

「そうなのか?」

「うん。弾いてから始めるんだと思うよ」


 そういえば、私はメイズさんと知り合いだから虚魔族なのを知っていたけど、他は皆知らないのか。

 そもそも虚魔族の存在を知らない人もいそうだし、ただの戦闘で魔視を発動させるかどうかはそれぞれの好みの問題だから、魔視の違和感で気付くかはもはや運だ。


 多分、ソミュールは気付いているんだろう。

 常に魔力を纏っているから、発動させていなくても魔視のような見え方をしているらしい。

 別にそうでない状態でも見えるとは言っていたけれど、気を付けないと勝手に魔視が発動するのだと。


 そんなことを話している間に練習試合が始まり、ゆったり構えている先輩たちと違っていつもより硬く構えた一組目を眺める。

 やはり先輩たちとの初戦闘と言うことで緊張しているのか、皆いつもより硬くなっているようだ。


 気持ちは分かるが、それじゃあ勝てる試合も勝てなくなってしまう。

 でもまあ、一番最初だしそうなってしまうだろう。最初だけは嫌だと願ったのは私たちだけではないはずだ。


 ちょっとした同情の念を向けていると、動かない場を動かすかのように、先輩の方から一本の矢が飛んだ。

 今日の練習試合はいつもと違い複数人での戦闘なので、終了のタイミングはどちらかの組が全員倒された時になる。


 いつも通りの円形の手合わせ場にかけられた魔法は、今日は少しいつもと違って、致命傷を受けたと判断された時点で場外に飛ばされるらしい。

 そんなことを説明されてはいたが、実際心臓めがけて飛んでいく矢が防がれないのは、見ているだけでも大分怖い。


 目を閉じたくなるのを我慢して試合の様子を眺め、最初の一発で一人が退場し、続いていつの間にか移動していたメイズさんに二人目が退場させられていく様子を見つめる。

 この組み合わせでの連携の取り方もそれなりにやっているはずなのに、最初に崩されてしまったせいでもう連携も何もなくなっているようだ。


 そのまま最初の組は数分で終わってしまい、次の組が場内に呼ばれた。


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