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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
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65,変わらない朝の風景

 部屋の明かりが灯ったのを感じて、身体を起こしてぐっと伸ばす。

 ベッドサイドにかけた時計を確認して、いつも通りの時間なのを確かめる。

 とりあえず顔を洗おうとベッドから降りて隣の部屋に入った。


「……あー……髪が……絡まる……」


 昨日読書に気を取られていたせいで髪を雑に乾かしたのが思ったより悪影響だったみたいだ。

 家に居ると誰かしらに捕まって髪をしっかり乾かされ、ついでにお小言も貰っていたのだけれどなるほどしっかり乾かすのは大事みたいだ。


 これは反省しないといけない。ついでに、今日は髪が広がってしまうので一つに纏めてしまった方がいいだろう。

 今日はいつもの髪飾りを付けないで髪紐だけにするべきかな、なんて考えながら櫛でしっかり髪を梳かす。


 無理にやると余計にこんがらがるので丁寧に丁寧に梳かしていく。

 いつも通りに持ってきた普段使っている髪飾りを置きに行き、代わりに髪紐を持ってくる。

姉さまとウラハねえ、それからシオンにいがそれぞれ別の物をくれたので、どれを使おうか毎回悩んでしまう。


「……んー……青、青にしよう」


 今日は姉さまのくれた青い髪紐にすることに決めて、あまり時間を使うわけにもいかないので特にこだわることはなくしっかり一つに纏めて終わりにした。

 その後はいつも通り着替えて杖を持ち、朝食を食べに食堂に向かう。


 食堂で朝食を確保して適当な席に座ってとりあえず喉が渇いたからとスープを飲んでいたら向かい側に影が差した。

 顔を上げるとトレーを持ったロイが立っている。


「おはようロイ」

「おはよう、セルリア。今日はハーフアップじゃないの?」

「昨日雑に髪乾かしたら癖付いちゃってたの」

「なるほど。今日は一日そのまま?」

「うん。……そういえばシャムが髪型変えてるの見たことないなぁ……」

「言われてみれば。眠そうにしてる割りにちゃんと纏めてるんだよね」


 のんびり話しながら朝食を取って、お茶だけ持って眠たげに現れたシャムの髪を眺める。

 うん、今日もしっかりハーフツインテールだ。結んでいる位置もいつも通り普通のツインテールより後ろ側だ。


「んー?どしたのセルちゃん……」

「なんでもないよ」

「そなの……そっか……」


 ……本当にこれだけ眠そうなのにしっかり髪は結んでいる辺り、起きてから着替えて髪を結ぶところまで毎日の習慣になっているんだろう。

 そうなると、いつからこの髪形を貫いているのか、というところが気になってくるけれど。


 眠そうにお茶を啜るシャムを横目に朝食を頬張り今日も今日とて朝食には現れないリオンが一限に間に合うのかの予想でちょっと盛り上がる。

 私は間に合わない方に賭けておいて、答え合わせはお昼休みだ。


「じゃ、またお昼に」

「うん。またお昼にね……シャム、行くよ」

「んー……まって後一口で終わる……」


 寝ぼけ眼でお茶を啜るシャムを教室まで連れていくためにロイはもう少し食堂で待機するらしい。

 ので、私は先に片付けて教室に移動する。

 今日は午前中が全て座学なので、教室の移動はほとんどない。


 リオンは一限に間に合ってもどうせ寝ているんだろうけれど、それでも間に合うのは重要だと思うのだ。

 間に合うのかなーと考えながら歩いていたらソミュール運搬中のミーファを見つけた。


「おはようミーファ」

「あ、おはようセルちゃん!」

「手伝うよ」

「ありがとう!リオンは今日いないの?」

「朝食には起きてこなかったね」


 話しながら教室に向かい、今日は一瞬すら起きなかったソミュールを席に設置する。抱えている枕でしっかり頭を固定し落ちないか確認して、ミーファと笑い合ってからそれぞれの席に着いた。


 授業が始まるまで読書して時間を潰そうと本を取り出して、しおりがカバンの中に落ちていることに気が付いた。

 ……しおりが落ちるなんて、そんなことあります?


 まあ、そんなことがあったからこうしてどこまで読んだか思い出さないといけなくなってるわけなんだけども。……どこまで読んだっけ。五十ページくらいは読んだ気がするけど。


 どうだったかなー、なんて思いながらページを捲り、読んだ記憶がある所を飛ばしていく。

 どうにかしおりを挟んだ記憶がある所を見つけて続きを読み始め、少し経ったところで始業のチャイムが鳴って先生が教室に入ってきた。


 ちらっと確認したリオンの席は空席。間に合わなかったようだ。

 賭けは私の勝ちである。ふふ。デザートでもねだってみようかな。

 なんてウキウキで考えていたら出席確認を始めた先生が急に扉の方を見た。


 どうしたのかと思ったら、スパンッと勢いよく扉が開いた。

 扉を開けたのはリオンだったようだ。息を切らせているので、また寝起きそのまま着替えて荷物を掴んで走ってきたのだろうけれど残念。遅刻である。


「ははは。リオンアウト。座りなー」

「ああああ……」


 がっくりと肩を落としているけど、チャイムは聞こえていなかったのだろうか。

 それとも聞こえていたけど先生が来ていないことに賭けていたのか。

 先生が遅れることはほとんどないのだからチャイムが聞こえた時点で諦めそうなものだけれど、諦めなかったことだけは褒めるべきなのかもしれない。


 ……まあ、遅れてるからアウトなんだけどね。

 でもここまでしっかり走ってきたなら授業も起きているべきだと思うよ。

 どうせ今日も寝るんだろうけど、そうやって寝てばっかりいるとまたヴィレイ先生に怒られるぞ。


 なんて思っていても、まあ思っているだけなので聞こえるわけもなく。

 ……休みの間に練習していたからリングでの魔法操作は大分上手く出来るようになっていたりするのだけれど、今度こそ寝た瞬間に首元に氷を作ってみてもいいかもしれない。


 家でちょっとした悪戯をコガネ姉さんと一緒に仕掛けていたりしたので、学校再開で悪戯不足を感じていたり。

 まあ、驚くだけならともかく大声を上げたりしたら授業妨害になるのでしないけども。


「さーて、他の遅刻組は来ないみたいだし……まあ待つつもりもないんだけどね。よし、始めるよー」


 朗らかに遅刻組を見捨てた先生の声を合図に皆が教科書の指定されたページを開く。

 一限は回復系の魔法基礎。回復魔法を使える人間は限られているけれど、知識として覚えていて損はないから一年目に基礎をやるらしい。


 ちなみに私は回復魔法に適性が無いので、扱い方を習うことはないだろう。

 回復魔法の適性は属性と同じく遺伝的なものだと言われていたり、魔法適性のような遺伝の関係ない適性だと言われていたり、いまだによく分かっていないのだ。


 魔法と名がついていれば大体興味の対象だったので本は色々読み漁っていた。

 回復魔法を操る先生の話を聞けるのはそれだけで貴重なことだし、知識だけでも得られるのは嬉しいので授業は毎度毎度楽しみにしているのだ。


セルちゃんの髪は癖のないストレートですが、雑に扱うと非常に絡まる細い髪質です。

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