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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
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64,一ヵ月で荒れ方が凄い

 授業再開から一週間ほどが経過して、一か月間でズレてしまった部分を直し終わった。

 放課後は部屋でお茶を飲んだりしながら過ごすことが多くなったくらいしか変わったことはないので完璧に元通り、と思っていいだろう。


「セルリア。暇か」

「はい」

「手伝え」

「はーい」


 今日はどうしようか、と思っていたらヴィレイ先生に声をかけられた。

 初日に疲れ切った顔をしていた先生も一週間が経って顔色はいつも通りになった気がする。

 なんであんなに疲れていたのかは、戻ってこなさそうな生徒を確認していたかららしい。


「休み明けを機に研究室には入らないのか」

「……うーん……なんか、今の過ごし方で落ち着いちゃいました」

「まあお前はサボっているわけではないからそれでもいいが」

「そうだ、ちょっと相談したいことがありまして」

「なんだ?」


 姉さまたちに相談するより、先生に相談する方がいいだろうと思っていたことがあるのだ。

 この一週間中々タイミングが掴めなかったのだが、ヴィレイ先生はそのうちこうして声をかけてくれるだろうと思ってのんびり待っていた。


「冒険者登録、しようかと思うんです」

「……ほう?」

「討伐とかのクエスト受けなくても出来ることは多いだろうし、やってみてもいいかなって」

「そうだな。無茶しない範囲ならやるのはいいだろう。で?目的は金稼ぎだけじゃないだろう?」

「……小型の魔物とか相手に、魔法撃つ練習したいな、と」

「何も悪いことじゃない。目を逸らす必要はないぞ」

「見えてるんですか」


 前髪で遮られて見えてないだろうと思っていたのに、しっかり見えていたらしい。

 意外と見えるものなのか……いや、それとも先生の隠れている方の目が何か特殊なのか。

 下手に聞いて地雷を踏み抜くのは怖いので聞かないけれど、すごく気になる。


「キャラウェイに相談はしないのか」

「姉さまには相談より報告の方がいいかな、って。トマリ兄さんとコガネ姉さんには相談するつもりです」

「なるほど、賢明だな」


 話しながら廊下を進んでヴィレイ先生の使っている準備室に入る。

 ……休み前に比べて、随分と散らかっている。もしかしなくても今日は掃除だろうか。

 というか他に用事があったのだとしてもまずは掃除をした方がいいんじゃないだろうかこれは。


「作業する場所もなくなった」

「先生……」

「仕方ないだろう。休みだというのにあれこれ押し付けられた所為だ」


 本当に掃除が今日の用事だった。

 ヴィレイ先生は掃除に関して私を信頼しすぎじゃないだろうか。

 確かに来るたびにちょっとずつちょっとずつ片付けてはいたけれど……!


「とりあえずやりましょうか」

「ああ」

「……一回避ける場所もない……」


 仕方ないので杖を持ったまま、風で物を浮かせて無理やり場所を作り本を本棚に収め、紙を一か所に集め、よく分からない小物は先生に詳細を聞いてから纏める。

 場所を空けて退けたかった物を退けて、奥の方の役目を果たせていなかった棚を開放した。


「先生、棚は物を仕舞う場所であって、前に物置いたら意味ないんですよ?」

「収めようかと思ったらすでにそうなっていた」

「片付け出来ない人過ぎませんか」

「うるさい」


 ベシッと頭を叩かれた。

 ヴィレイ先生は片付けに関してだけポンコツすぎると思う。

 基本的には能力値の高い人のはずなのに、こと掃除と整理についてはなんでここまで能力が低いのか。


「何か言いたげだな」

「いえなにも」

「……何も言わんなら知らんぞ」

「もしかして私今、卒業まで掃除手伝わせる宣言されましたか?」

「察しがいいな」


 否定してほしかったのに肯定されてしまった。

 前にボソッと、お前が居ると片付けが早く終わるな……って言ってるのを聞いたことがあるのだけれど、まさかここまで掃除能力を重宝されるとは思わなかった。


 先生は掃除のためだけに助手とか付けたらいいんじゃないだろうか。

 ……あれ、そういえば私、ヴィレイ先生の助手してるとか噂されてたな……?


「と、時すでに遅し……!?」

「どうした」

「いや流石に……?」

「おいセルリア」

「……先生、私は掃除婦じゃないんですよ」

「知っているが」


 本当に知っているんだろうか。分かっていないと思うんだ、私。

 まあ確かに呼ばれたら掃除しかしない、とかではないんだけども。

 他にも色々やってはいるし、何なら色々魔法の本とか見せてもらってもいるんだけども。


 文句はそんなにないけど、掃除に対してだけはちょっと物申したい。

 先生はもっとこう、しっかり日々の掃除をするべきだと思うんだ。それだけでこの混沌具合は随分とマシになると思う。


「セルリア、手が止まっているぞ」

「先生、これどこに仕舞いますか」

「さっきの小物と同じあたりに置いておけ」

「はーい」


 内心ちょっとばかし失礼なことを考えていたら手が止まっていたらしい。

 誤魔化しがてらに手に持った本を見せたら、とりあえず誤魔化されてはくれるみたいだ。

 二度目があるかは分からないので、考え事は一旦やめて片付けに専念することにする。


 ゴトゴトと音を立てて物を動かして、どうにか作った場所によけていたものを動かして。せっせと進めた片付けは、数時間かけてやっと終わった。

 はぁーっと大きくため息を吐いて、凝り切った肩をぐるぐると回す。


「先生、もう少し掃除の頻度上げませんか」

「一か月お前は居なかっただろうが」

「いや私居ないと掃除しないわけではない……ですよね……?」


 まさかと思って先生を見ると、いつの間にか髪で顔を隠していた。

 いや、まさか……まさかね?一か月忙しくて放置してただけだよね……?

 じっと見つめていたら今日は図書館に行かないのか、と言われた。


 分かりやすく話題を変えられた。これ以上何を言っても聞いてはもらえないだろうから諦めるけれど、こうなってくると私が入学する前はどうしていたのかが気になってくる。

 今度聞いてみよう、と心に決めて、とりあえず今日は部屋に戻ることにした。


 本は昨日借りたばかりでまだ読み切っていないから図書館に用事はないので、今日は部屋でお茶でも淹れて夕飯まで時間を潰そう。

 復習と纏め直し、日課にしている魔法の練習なんかは夕飯の後にするとしよう。


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