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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
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61,ひと月ぶりの街探索

 休みが終わり学校に戻ってきて二日ほどはリオンと共に門をくぐる人たちを眺めながら過ごしていた。

 ロイとシャムは私が来た三日後、その翌日にはソミュールを連れたミーファが戻ってきて、他には別に気になる人もいないし、ということで門前待機は終了した。


 授業が始まるまでまだ少しだけ時間があるので、それまで何をしていようかと考えていたら部屋の扉がノックされた。

 扉を開けると、そこにはリオンとシャムが立っている。


「どうしたの?」

「これからロイも誘って町行くんだけど、セルも行こうぜ」

「行こうぜー!」

「なるほどね。よし行こう」


 暇を持て余していたのは私だけではないようだ。

 なぜ二人が一緒にいるのかちょっと不思議だけれど、二人とも木陰でのんびりしていたりするからどこかの木陰で会って一緒に誘いに来たのだろう。


「ロイも暇なの?」

「多分ね。課題も全部終わってるらしいし」

「そっち課題とかあんのか。こっちなんもなかったぞ」

「私はないよー。ロイは研究室の先生から出されたんだって」

「へぇー」


 持っていく荷物を整理するのに、と一旦二人を部屋の中に入れながら強襲先の話を振る。

 用事があるのに突撃しては迷惑だろうと思ったけれど、流石に彼もやる事は全て終わっているらしい。


「っていうかセルちゃん!これなに!?」

「んー?ああ、湯沸かし器」

「なにそれ!あー茶葉も置いてあるー!」

「暇なときにお茶しに来ていいよ」

「やったー!」


 とりあえず一番先にと設置した湯沸かし器やティーセットを見て、シャムが目を輝かせた。

 彼女は元々お茶が好きなようで、食堂に新しい物が置かれるたびに試しているくらいなので今度おすすめのお茶でも聞いてみようと思っていたのだ。


 話しながら開けていなかった荷物を開けて、中から普段使っている外出用のあれこれを取り出す。

 まだ使わないかと思っていたけれど、意外と早く出番が来た。

 腰にカバンを付けて、中身をいれて確認して、立てかけてあった杖を手に取る。これで私の準備は完了だ。


「よし、行こう」

「おー!」

「俺ロイの部屋とか知らねえんだけど」

「私が知ってる!」

「そういえば、二人ともよく私の部屋分かったね?」

「私が知ってた!」

「シャムはそれをどこで聞いたんだよ……」


 んふふ、と笑うシャムに苦笑いをして、揃って部屋から出て研究職の寮に向かう。

 この学校は色々な結界や防衛魔法を張り巡らせているので、シャムが悪さをして情報を得ているわけでないという確信があるのだ。


 なので、問い詰める必要もないだろう。

 リオンもそこまで気にしているわけではないようだし、この話は一旦終わりである。

 研究職の寮に入ってから迷いなく進んでいくシャムについていき、ロイの部屋の扉をノックする。


「ローイ。遊び行こー」

「みんな揃ってる……うん。いいよ」

「やったー!」

「何かすることでもあるの?」

「俺は特にねえかな」

「私も特に……」

「ちょっと本屋寄りたいくらい」

「……じゃあ散策、になるのかな?」


 話しながら手早くカバンを持って部屋から出てきたロイは、ふと何かに気付いたようでリオンに目を向けた。

 つられてリオンを見るが、見られている本人も分かっていないのか首を傾げるだけだ。


「なんだよ」

「いや、休みの間リオンはずっと国内に居たし、何か面白い物見つけたりしてないかなって」

「何もねえよ。そんなに出歩かなかったしなぁ……」

「そっか」


 じゃあ適当に歩き回ろう。そんな風に話しが纏まって、まずは本屋に、と予定を組みながら学校を出て大通りを進む。

 こうしてみんなで街を歩くのも一か月振りだ。


 楽し気に前を進むシャムとリオンを少し遅れて追いかけつつ、微笑ましそうに二人を眺めるロイを見上げた。

 ……こんなに大きかっただろうか。気のせいだろうか、ちょっと身長伸びたりしてないか……?


「ん?どうしたの?」

「……なんでもない。研究室の課題って、どんなの?」

「ああ、えっと……自分の住んでいる土地の魔力量を調べる、だったかな。道具は借りれたから計って記録をつけるだけだよ」

「ちょっと気になる」

「はは。魔法使えないから、本当に測るだけだったけどセルリアなら多いか少ないかも分かりそうだね」

「まあ、多少の差なら察せるけど」


 身長云々はそんな一か月で目に見えるほど伸びはしないだろうということで気のせいにしておく。

 なので代わりにちょっと気になっていた課題のことを聞いてみたら、思っていたより面白そうな返事が返ってきた。


 そもそも土地の魔力量を計れる道具という存在を初めて聞いた。

 そんなものがあるのか。知らなかった。……借りれたり、しないだろうか。

 家の魔力量と学校の魔力量を計って比べてみたいのだけれど。


「二人ともー?どしたのー?」

「何でもないよ」


 楽しそうだな……と考えていたら前の二人から思ったより距離が開いてしまった。

 軽く走って追いついて、四人で固まって移動する。

 そんなことをしている間に最初の目的地だった本屋に到着し、シャムが奥の方に消えていくのを見送って店内を適当にうろうろする。


 姉さまの書斎に増えていた本を勝手に読み漁ってきたので、薬学系は今は満足なのだ。

 他に何かとなるとロイの話を聞いた影響もあって地理系だろうか。

 ……面白そうな本を見繕って図書館で探す感じになるだろうから、何か見つけたらタイトルを覚えておかないといけない。


 と、探している間にシャムが戻ってきたので特に何かめぼしいものを見つけることも無く店を出た。

 シャムも探している本を見つけることは出来なかったらしい。

 早々見つかりはしないから気長に探す、と笑っているので探すこと自体に意味があるのかもしれないな、なんて思ってみたり。


「さて、どこいこっか!」

「今日って市場開いてるっけ」

「あー……開いてるんじゃない?」

「じゃあそっちだな。適当に見て回ろうぜ」


 結局、いつも通りの行動が落ち着くものなのだと四人で顔を合わせて笑ってしまった。


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