表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学び舎の緑風  作者: 瓶覗
476/477

最終話,最初の質問

 教室内は静かなヴィレイ先生の声だけが響いていて、これがもう最後だと思うとちょっとだけ寂しくなる。

 四年目はこうして集まるのも多くて月一だったけど、何だかんだ四年間一緒に居て仲良くなった人とか話すようになった人も結構いるからなぁ。


「以前から通達していたが、この後、寮の初期化作業を行う。私物は全てまとめて、要らない物や持っていけない物などある場合はそれも全て一か所に纏めておくこと。

 忘れていったものがあったとしても基本的には取りには戻れないので、しっかりと確認しておくように。寮内に残っていた物は全て処分する。

 制服は回収するので、戻ったら着替えておくように。確認のため各部屋を見に行くので、それまで部屋で待機になる。ここまでで何か質問はあるか?」


 一度顔を上げて教室内を見渡したヴィレイ先生は手が挙がらないのを確認して、再び目線が手元の紙に向いた。


「荷物の運びだしや処分の方法など、細かい疑問点はそれぞれ部屋に確認に行った時に聞くように。

 ……それから、寮に最初から設置されていた家具に大きな傷をつけたり、修復不可能なほどに壊したりした者は大人しく申し出ろ。残念ながら隠し通せないからな」


 なるほど、それも含めて各部屋を見に来るのか。

 後ろでびくりと肩を揺らした気配がして、ヴィレイ先生がため息を吐いた。

 毎年壊す人は居るんだろう。


「確認が終了したら部屋の鍵を回収するので、手元に出しておくように。……全体連絡は以上。各自部屋に戻って、最終確認をしておけ」


 解散、と声が掛かったので、杖を持って立ち上がる。

 同時にとぼとぼと教卓の方に歩いてく人もいて、多分壊した家具の申請に行ったんだろうな、なんて思いながら教室を出た。


 部屋に戻ってきて制服から私服に着替えたら、最後にもう一回浴室とかクローゼットの中とかを確認していく。

 うん、忘れ物は無いし、ちゃんと全部まとめられてるかな。


 部屋の掃除は結構大変で、私が増やしたものがいっぱいあったから全部まとめるのに結構時間が掛かったんだよね。

 リオンは早々に終わったらしくって、ロイの手伝いに行っていたらしい。


 ロイとシャムは本とか書類とかがいっぱいあって、研究室とか後輩とかに要るか聞いてから処分するから時間が掛かるって言ってた。

 研究職は皆そんな感じなのかな。大変そう。


「……はぁ、こうしてみると部屋広いなぁ」


 物を全部まとめた後に見ると、なんだか思っていたより広く見える。

 というか、よく私はここまで荷物を増やしたよね。机やら椅子やら、折りたためるものを運び込んで増やして行ったから纏められることには纏められたけど、ちょっとびっくりするくらい物があった。


 いつ何を増やしたんだっけ、なんて思い出に浸っていたら部屋の扉がノックされて、扉を開くとヴィレイ先生が立っていた。

 ……なんかもう既に疲れてない?大丈夫ですか?


「お疲れ様です……?」

「あぁ。荷物はまとめ終わっているか?」

「はい」


 部屋の中に入って中を確認しているヴィレイ先生について行き、物が残っていない事を確認する。

 こういうのってちゃんと全部やったつもりでもうっかり忘れてるものがありそうで怖いよね。

 なんて思っていたけど、忘れ物は特に見つからなかったし家具の破損とかも無かったので特に問題は無くすぐに確認作業は終わった。


「荷物の運搬は問題ないな?」

「はい。全部浮かして運びます」

「制服は?」

「これです」


 畳んでおいた制服を渡して、それが袋に入れられたのを見届ける。

 机の上に乗せておいた部屋の鍵をヴィレイ先生に渡して、これであとはもう荷物を運び出せば撤退作業は完了だ。


「ではセルリア」

「はい」

「最後に一つ質問だ」

「はい?」


 なんだろう、なんかあったっけ。

 教師になるかどうかの話は急ぎじゃないって言われてるし、それではないよね?

 なんて思っていたら、ヴィレイ先生に服の裾でベシ、と頭を叩かれた。


「魔物と不意に遭遇し、戦闘になったとする。倒せば利のある敵でお前なら問題なく倒せる。この状況になった時、お前はどうする?」


 何を聞かれているんだろう、と少し考えて、急に思い出した。

 これ、一番最初に聞かれたことだ。


「倒して素材の確保をしますかね」

「上出来だ。卒業おめでとう」

「ありがとうございます。……ありがとう、ございました」


 軽く笑って部屋を出ていったヴィレイ先生を見送って、杖で強く床を叩く。

 コォンと音がして風が起こり、その風に荷物を載せて浮かせ、部屋の扉を開けて外に出た。

 途中に居た先生たちに挨拶をしながら外に出て、よく晴れた空を見上げる。


 少し待っているとミーファとソミュールが歩いて来て、門を潜って行った。

 ソミュールはこのまま王城管理の夢宮へ、ミーファはフォーンを拠点に冒険者をするらしい。


 続いてやってきたのはリムレとサヴェールで、二人は正式にパーティーを組んで冒険者をするらしい。

 しばらくは各地を巡るけれど、最終的には第五大陸のどこかに落ち着くだろうと言っていた。


 ニアはやってきてしばらく横で喋っていたのだけれど、ジャンがやって来て一緒に去って行った。

 二人纏めて冒険者パーティーに誘われているから、そこに所属するそうだ。


 次に来たのはロイで、その後すぐにシャムもやって来た。

 三人で少し話していたらリオンもやってきたから、門を潜って外に出る。

 シャムとロイはひとまず村に顔を出すらしく、各自今後の道を決めてもう一度話そうと再集合の日程を決めておく。


「それじゃ、また」

「おう。早めに来てもいいぞ」

「はいはい」


 リオンは再集合までフォーンに居るらしいから、決めたらすぐに来ても良いだろう。

 なんて考えながらフォーンの外に出て、風を起こして空に上がる。


 私もひとまず、リコリスに帰宅だ。

 荷物を置かないといけないし、姉さまたちに今後の話についての相談にも乗ってもらいたいからね。



 空を飛びつつ、四年間で随分と飛び慣れた空路を進む。

 入学した当初は卒業したら家に戻る気だった、というか、その道しか見えていなかったけれど、四年も経ってみると出来る事もやりたいこともいっぱいだ。


 さて、何から話そうかと思い出話を脳内で並べながら、森にぽっかりと空いた円形の土地に降り立った。

 またここから再出発だ。


 これにて完結!なのですが、セルちゃんの今後とかの話を含めてちょっと書き切れて無い事を纏めておまけを一つ投稿します。


 とはいえこれにて完結ですので、軽くご挨拶を。

 ここまで読んでいただきありがとうございました!かなり長い話になり、読むのも中々大変だったと思います。それでも読んでくださった方に感謝を。

 では、まだ感謝を伝えきれもしませんが、残りはおまけに任せます。

 本日13時にぶん投げますので、よければそこまでお付き合いください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ