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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
474/477

474,一曲くらいは

 シャムとロイは早々帰って来ないだろうなぁと思いつつ壁際に立って会場を眺めていたら、会場の中心が何やら賑やかになり始めた。

 どうしたのかと思ったら、見覚えのある二人組が楽しそうに踊っていてちょっと歓声を上げてしまった。


「おー、ソミュールとミーファか」

「だね。楽しそう」


 二人が楽しそうにクルクル踊っているのに釣られて、周りの人もちょっと踊る速度が上がった。

 ついでに音楽も変わってちょっとアップテンポになった気がする。

 ミーファもソミュールと一緒だからかそんなに緊張してないみたいだし、楽しそうで良かった。


「……あっ。セルリア先輩!」

「うん?あぁ、アリアナ。こんばんは」

「こんばんは、ドレスとてもよくお似合いです」

「ありがとう。アリアナも凄く綺麗だね」


 アリアナは流石、ドレスも着慣れているしこういう場にも慣れている感じがする。

 堂々と端っこで震えている私たちとは大違いだ。本当に堂々としている。

 しっかり社交に来てるんだろうなぁ。シャムと同じタイプ……ではないか。同じに見えて違う考えと動き方してそうだし。


「セルリア先輩は中央には行かれないんですか?」

「うーん……行かないかなぁ……」

「行かないんですか……」


 あぁ、しょんぼりしてる。

 一回くらい踊った方がいいかな?いやでもなぁ、面倒だなぁ。


「リオンが行くなら行こうかな」

「おい、俺を巻き込むなよ」

「置いていったら文句言うでしょ」

「置いていくな。約束しただろ」

「したっけ?」


 約束はしてない気がするけど、シャムたちが戻ってくるまで私たちは一蓮托生だから、リオンが行かないなら私も行かないかな。

 なのでアリアナは私を踊らせたかったら、頑張ってリオンを説得してね。


 ちょっと顔を見たことあるくらいの相手だと思うんだけど、アリアナからは強い意志を感じる。

 知らん先輩に全く動じてないの、凄いなぁ。

 なんてのんびり飲み物を飲んでいたら、リオンが本当に困った顔をして私の後ろに回りこんだ。


「全く隠れれて無いと思う」

「それは分かってんだよ」


 身長差がどれだけあると思ってるんだ、と声に出してみたけど、とりあえずアリアナとの間に何かしらの壁が欲しかったらしい。

 うん、ちょっとビビるよね、この勢いのアリアナ。


 私は今までの関係値もあるからやる気満々で可愛いなぁって思うけど、リオンとアリアナの接点……私を探しに来た時に一緒に居るのを見た、とかくらい?

 後はあれか、三年と一年の手合わせ。あれの時に一応会ってはいる。


「こんばんは、何度かご挨拶だけさせていたことがあります、アリアナと申します」

「お、おう……」

「ダンスパーティーとは言っても、学校の行事の一つですので、そう身構えずに一度踊ってみるのは如何でしょう?」

「お、おう……」


 リオンが同じ返事しか出来なくなってる……すごい、圧倒されているリオン久々に見た。

 たまにロイとかシャムにやられてタジタジになってるのは見るけど、後輩にやられてるのなんて初めて見たなぁ。まあ私が後輩と関りあんまり無いからだけど。


「如何でしょう」

「……セル、セル」

「頑張れリオン。私はただの壁だ」


 ジッとリオンを見ているアリアナから隠れるように私の背中に張り付いているけど、残念ながらアリアナはその程度では止まらない。

 ちゃんと返事するまで動かないぞ、頑張れ。


「……一回だけなら、踊るか?」

「あ、折れた」

「茶化すな……」


 リオンがずっと萎れてるの面白いなぁ、なんて考えてるおかげで私は割と元気だよ。

 踊る?いいよ。何なら私シャムと踊ろうかと思ってたし。


「目立ちそうで嫌なんだよなぁ」

「ご安心を、お二人とも既に目立っています」

「あっはは」


 視線は凄い感じるからそうだろうとは思ってたけど、アリアナが言うなら本当に目立ってるんだろうなぁ。

 なんで目立ってるのかとかは考えないでおく。リオンがでかいからってことにしておこう。


「はぁ……俺別に対して踊れるわけじゃねぇんだよなぁ」

「大抵の人はセルリア先輩を見るので大丈夫ではないでしょうか」

「アリアナ?そんなことないと思うよ?」


 うだうだ言いつつも一応踊る気はあるらしく、リオンが手を差し出してきたので大人しく手を乗せる。

 歩き出したらなんか一気に人が避けて道が出来たので、思わずリオンを見たらすごい渋い顔をしていた。


「っふ」

「お前楽しそうだな」

「まあ、割と楽しい。準備の段階でテンション上がってたかも」

「楽しいなら良いけどよ。……ロイたちが見てんぞ」

「手ぇ振っとく?……あ、もしかして私たちが踊るまで戻ってこないつもりだったのでは?」

「やりそうだな、あいつら」


 なんならアリアナが私たちの所に来たのもシャムの誘導を感じるけど、乗せられた身としてはもう言ったところで仕方がない感もあるよね。

 なんて考えつつ中央の空いた空間に混ざって、とりあえずステップを踏む。


 リオンはあんまり自信なさそうだったけど、元の運動神経と筋力でどうにでもなると思うんだよね。

 そもそもそんなにしっかり見られてるわけでもないし、それっぽければ何でもいいのでは?

 姉さまもよくバレなきゃいいんだよ、バレなきゃってよく言ってるし。


「慣れてんなぁ」

「シオンにいが機嫌いいと踊り出して巻き込まれるから」

「……なんでだ、想像できる」

「ふふ、リオンはシオンにいに気に入られてるもんねぇ」

「そうか?」


 小声で話しながら踊っていたら、リオンも大分肩の力が抜けたようだった。

 私も周りを何となく眺めながら踊るくらいの余裕は出てきたんだけど、そのおかげで人混みに紛れてこっちを眺めている黒猫を発見した。


 目が合ったらにこっと笑って見えないところに行ったから、寄ってくる気はないようだ。

 まあ、イザールは情報収集に来てるんだろうなぁ。

 そうならわざわざ私から声を掛ける必要も無いから、特に何もしなくていいだろう。


 なんて考えながら一通り踊って、隙を見て中央から人混みに戻った。


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