表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学び舎の緑風  作者: 瓶覗
473/477

473,ダンスパーティー当日

 腕にくっ付いてくるシャムにちょっと体重をかけながら、のんびり廊下を歩いて行く。

 いつもよりヒールの高い靴を履いてるから、単純にいつもより動きにくいってのがのんびりな理由だ。


 ソミュールを起こして化粧と髪を同時にやって、忘れ物が無いか確認して四人揃って部屋を出てきたんだけど、まだソミュール眠そうなんだよね。

 四人で居れば声を掛けられることも無いから、移動はのんびりだったけど平和に会場まで移動してこれた。


 入口で先生に声を掛けて会場内に入ると、なんか音楽もかかってるし会場内はキラキラしてるし、本当にダンスパーティーの会場って感じだった。

 なるほど、ここまで完璧だと練習になるし、卒業後に必要な人にとっては本当にいい練習場所なんだなぁ。


「さーて、僕はご飯探そうかなぁ」

「まずはご飯だと……?」

「まあ会場内を見て回るのはいいかもしれないね」

「ソミュちゃん、一人でどこか行かないでね……」

「勿論。腕組んどく?」

「うん」


 ソミュールとミーファが腕組んで歩いてると、パーティードレスのデザインも相まってセット感がすごい。

 私もうこの二人眺めてるだけで満足出来そう。


「セルちゃんはお腹空いてる?」

「私は……今はそんなにかなぁ。シャムは何か食べる?」

「飲み物だけ探そうかな」


 二人を眺めるためにちょっと後ろを歩きながらシャムとお喋りして、後ろから歩いて来ている人にぶつからないように引き寄せる。

 結構人多いから気を付けた方が良さそうだなぁ。


「セルちゃん……!イケメンッ!」

「ふふふ。足元段差あるよ」

「イケメン……もはやセルちゃんと踊りたいまである」

「踊る?いいよ」

「やったっ」


 どうせ私はどっちも踊れるし、会場の端っこで踊ってるくらいなら見られもしないしいいんじゃないかな。

 確か中庭の方まで会場あつかいだから、あっちに行ってもいいしね。


「……あぁ、いた。二人とも」

「ん、ロイ……と、リオン!?」

「おー……」

「え、来るの聞いてない」

「ロイに巻き込まれたんだよ……」

「元気がないねぇ。やっほーロイ」

「お疲れシャム。そっちも無事に終わったみたいだね」


 ロイの声がしたと思ったら、まさかのリオンも一緒に居た。

 え、しっかりスーツだし、髪もセットしてるし、なんか初めて見る感じの格好だ。

 びっくりしてガン見してたら、リオンもこっちをガン見していた。


「……セルのそんなん初めて見たわ」

「おんなじこと考えてんじゃん」

「杖ねぇのか」

「タスクはあるよ。あとリング二個だけ付けてる」


 手を挙げてリングを見せ、タスクを上からポンポン叩く。

 見えないでしょう、なんとここに入ってるんだよ。


「シャムは今回はセルリアと一緒にいる?」

「あー……セルちゃんとリオンが一緒にいるなら多少離れても大丈夫かな?」

「ん、どっか行きたい?行ってきて大丈夫だよ」

「おー。俺もセル居るならとりあえず待ってるわ」


 ロイとシャムは毎年参加してるから、行きたいところもやりたいこともあるんだろう。

 ソミュールとミーファは二人で会場内を見て回ってみるらしいので、ここで一旦別行動を取ることになった。


「リオン踊らないの?」

「お前……俺のこの状況を見てそれ言うか?」

「あはは。似合ってるよ」

「はぁ……」


 なんか疲れてるなぁ。ロイに巻き込まれたって言ってたけど、これは服装だけじゃなくて色々仕込まれた疲れ方だな。

 いつの間にそんなことしてたんだろう。直近はテストで忙しかったはずだけどなぁ。


「スーツどうしたの?」

「貸し出し。セルは……モエギさんか」

「うん。これは初めて見たけどね」

「他にもあるのか……」

「年一で増えるよ」

「なんでだよ」

「知らない。布いっぱい使えるから楽しいんだってさ」


 話しながら移動して、邪魔にならなそうな壁際で立ち止まる。

 見覚えのない顔がいっぱいだ。私が知ってるのなんてほんの一部の人だから、そりゃあそうだけどね。見てるだけで楽しいから、このまま壁に張り付いてようかな。


 何故か給仕をしている先生がドリンクを持ってきてくれたので受けとって、いい感じに手が埋まったので会場の中央を眺めながら口に運ぶ。

 美味しい。流石にお酒じゃないんだね、そうだろうとは思ってたから受け取ったわけだけど。


「セル」

「うん?」

「すっげぇ見られてんだけど……」

「誘ってほしそうだね」

「お前俺から離れるなよ」

「その台詞、そんな情けない声で聞く事あるんだ」


 こんなに情けないリオンの姿は筆記テストがあった頃以来。

 まあ、そんなこと言われなくても、私もリオンを盾にしているから離れられないんだよね。

 シャムたちが戻ってくるまでここで堂々としてるふりをしながら震えてようね。


「セルは踊れるんだよな?」

「踊れる。何種類か教えて貰ったし、リードも教えて貰った。リオンは?」

「……一番基本的なのだけロイに叩きこまれた」

「あはっ」

「笑うな」

「ごめん……ふふ」


 あんまりにもげっそりしてるから、つい。

 それにしても、やっぱり仕込まれてたんだ。多分リオンを連れていこうって決めたの結構前なんだろうなぁ。そうじゃないと準備時間足り無さそうだし。


 ……もしかして、シャムが私を連れていこうとしているのと同時進行でロイはリオンを連れていこうとしてた?

 最後の遠征から帰ってきた辺りから計画しててもおかしくはない。


 二人が戻ってきたら……いや、明日とかに聞いてみよう。

 計画があったとしても、しっかり乗せられて来てるのは私たちだからね。

 来たんならせめてちょっとくらいは楽しまないと損だろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ