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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
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472,楽しい準備時間

 支度に時間が掛かるからと昼から集まって、四人でのんびり話しながら準備を進める。

 まあ、最初の一時間くらいはお昼ご飯食べながらお喋りしてただけなんだけどね。

 今日はテストも終わり、校内が浮かれに浮かれているダンスパーティーの日だ。


 今までは逃げてたけど、今年は出ることになったからね。

 今回一緒に準備している四人のうち三人はダンスパーティー未出席だから、シャムが指揮を取って準備をしているのだ。


「セルちゃん綺麗だねぇ」

「ミーファ可愛い……えー、可愛い」


 ふわふわなミーファは本当に可愛いねぇ。さっきまでソミュールも起きてて一緒にミーファを愛でてたんだけど、ちょっと眠いから寝ると言って今は寝ている。

 そんなに長くは寝ないよぉって言ってたから、まあ夜までには起きるんだろう。


 なのでギリギリまでソミュールは寝かせておいて、他の支度は全部終わらせてソミュールが起きたら支度をさせて会場に行くことになった。

 時計を見ながらのんびり準備してたんだけど、まだそれなりに時間があるんだよね。


「ところでセルちゃん、シャムちゃん」

「どうしたの?」

「お化粧って、どうやるの?」

「あぁー……私もやったとしても何となくでしかやらないからなぁ」

「お、それならまっかせてー!二人とも……いや、全員まとめて私がお化粧してもいい!?」

「お任せするー」

「わ、私も」


 着替えを終えたミーファが停止しているからどうしたのかと思ったら、化粧道具を持って困り果てていた。

 そうだよねぇ、普段化粧とかしないもんねぇ。


 私も姉さまに連れられて着飾ってる時とかにちょっとやってたことがあるくらいだもん。

 冒険者活動をしている時には基本化粧はしないし、戦闘職は授業で動き回ることも多いから汗で落ちたりするのを嫌がって、普段から化粧する子は少ないんだよね。


 休みの日に化粧をして出かける、とかは多分やってる子も多いんだろうけど……私はそれすらしないしなぁ。

 アリアナは多分詳しいはず。自分でやっているのか、やってくれる人が居るのかは分からないけど。


「どっちからやる!?」

「テンション高くない?」

「可愛い子に好きにお化粧できるの、想像しただけですっごい楽しい」


 楽しいならいいか。とりあえず自分の化粧を終わらせちゃうらしいので、その間に髪をどうするかだけ考えておく。

 全部上げるとして、後ろって見えないからどうしたらいいか分かりにくいんだよねぇ。


「……ミーファ、髪弄ってもいい?」

「うん」


 自分の髪のまとめ方を考えている間に、とりあえずミーファの髪を纏めることにした。

 ハーフアップかなぁ。ちょっと巻いて、ふわふわにして飾りを付けよう。

 ミーファは今回の為にソミュールとお揃いの飾りを買っているから、それがしっかり目立つようにして……楽しいなこれ。


「熱かったら言ってね」

「はーい」


 ふわふわのミーファの髪をふわふわに巻いて、ハーフアップにしてボリュームを出していく。

 飾りは元々大き目だから、しっかり目立つようにハーフアップの結び目に付けて、前髪もちょっとおでこが見えるように真ん中で分けて軽く巻く。


「可愛い。シャム見てー!」

「え、可愛い……!お化粧しよ、ミーファちゃん次こっち座って」

「う、うん」


 我ながら可愛く出来たぞ、とシャムに見せたらそのままシャムの前に置かれた椅子に誘導されて行った。

 ソミュールが起きたら、ミーファと同じ感じのハーフアップにしようかな。


「シャムの髪もやっていい?」

「お願いしたい!そしてセルちゃんの髪は私がやりたい!」

「やった。どうしようか迷ってたんだよね」


 シャムの髪型どうしよっかなぁと考えながら、ミーファが化粧されているところを眺める。

 可愛い……目元がキラキラになるだけでこんなに可愛いんだなぁ。


「……セルちゃん、金と銀どっちがいいかな?」

「金じゃない?キラキラさせてこ」

「オッケー」


 ミーファは全体的に色味が白だからね、ちょっと目立つ色で飾るくらいがいいんじゃないかなって思うよね。

 装飾にも金が使われてたりするし、ちょうどいいのでは?


「……よーし。ど?」

「可愛い!可愛いねぇミーファ。連れていくのが心配になるくらい可愛いねぇ」

「ソミュールちゃんが横に居れば大丈夫だよ、きっと。駄目そうならロイを添えよう」


 照れてソミュールの横に逃げてしまったミーファをカワイイカワイイ言いながら、流れるようにシャムとじゃんけんをして負けた。


「セルちゃんのお化粧とヘアセットからやります!」

「はーい」


 示された椅子に腰を下ろして、並べられている化粧品に目を向ける。

 私が自分でやる時の三倍くらいあるなぁ……すごいな、何に使うのか分からない物がたくさんだ。

 何やら色を比べているらしいシャムが動き出すのを待ちながら、寝ているソミュールの手を弄っているミーファを眺める。あれ何してるんだろう。可愛い。


「よーし、じゃあセルちゃん、こっち向いて目を閉じててください」

「はーい」


 言われた通りに目を閉じて、その後も指示に従いつつジッとしている。

 そうしている間にミーファが傍に来たのか小さく歓声が聞こえたりもして、どうなってるのかものすごく気になりながら終わるのを待った。


 シャムの手際がいいからそれほど時間はかからずに化粧は終わり、手鏡を渡されたので確認するとなんかいつもの数倍華やかになった顔があってびっくりする。

 見覚えあるのに、なんか知らない顔があるなぁ。すごいな、こんなことになるのか。


「よーし、次は髪ね!全部まとめる?」

「纏めようかなぁって思ってたけど、任せるよ」

「飾り的にもまとめた方が綺麗かなぁ……背中結構空いてるしね。よし、纏めちゃお」


 丁寧に髪が梳かされているのを何となく感じながら、ニコニコで正面に回り込んで来たミーファを捕まえる。

 化粧やらヘアセットやらを崩さないように撫でて、髪がまとめられて首筋が一気に冷えたなぁとのんびり考えながら鏡を確認した。


「おわ、凄い」

「んふふふふ。後ろ綺麗に出来たっ」


 ウキウキなシャムが別の鏡で後ろ髪を移してくれたので確認して、今度は交代してシャムの髪を纏める。

 どうしようかなぁ、サイドテールっぽく片側でまとめても可愛いと思うんだよね。


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