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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
470/477

470,エグイ魔法ばっかり

 サヴェールが反射魔法を組んでくれたので、それでソミュールの攻撃を弾き返して態勢を整える。

 ちょっと落ちかけてるサヴェールの身体を引っ張り上げて背中側に居て貰う。

 ソミュールがバンバカ魔法撃ってくるから、防御より逃げの方向で行きたいんだよね。


「ちょーっと不味いか」

「このままだと俺が攻撃しないといけなくなるな」

「頼んでいい?」

「絶対当たらない」


 言いながらも準備をしてくれるサヴェールを落とさないように風を纏って、追撃を飛ばしてきたソミュールの位置を把握して空中を逃げ回る。

 いつの間にか地上に降りてるから、ここからは飛ぶのに使ってた魔力も攻撃に回るのかな。


「……セルリア」

「なぁー……あれか。やばそ」

「……俺だけ下ろしてくれ、一人の方が動きやすいだろう」

「いいの?」

「落とされる前に撒けるだけ罠を撒いておく」

「了解」


 サヴェールを地上に降ろして身軽になって空中に陣取り、杖を回して風を集める。

 うん、身体が軽いし、変な軌道で飛んでも大丈夫だからここからはビュンビュン飛ばしていこう。

 あと落とされる前にって言ってたけど、出来る限りサヴェールにも残っていて欲しい。


 まあ私が何かするよりサヴェールが自分で防御張った方が強いんだけどね。

 なんて考えながら杖をグルグル回して、飛んできた攻撃から逃げてブレスレットに杖を固定する。

 逃げ回りながら回すわけにはいかないし、ある程度風も起こせたから十分だろう。


「集え、我が風」


 ごうごうと音を立てて周りに集まってきた風を固める。

 ついでに下から飛んできた魔法を弾き落として、その後ろに隠れていた追撃から逃げる。

 私が逃げている間にサヴェールが猛攻に合っていたので、ソミュールの後ろに回り込んでみたけど普通に気付かれてて防がれた。


 しかも攻撃が弾かれるのではなくすり抜けて、魔力の塊に影を乗せて位置を誤魔化されてたことに気が付いた。

 二対一してるのにそんな細かいことやってる余裕まであるのかよ。


「まっずい!?」


 内心悪態をつきながら横から飛んできた攻撃に杖を向けようとして、その時点で間に合わないことを認識した。

 直後に別方向から防御魔法が飛んできて私と攻撃の隙間に滑り込んで発動し、思わず目を見開く。


 攻撃が弾かれた音を聞きながら風を起こして飛んで逃げ、先ほど防御魔法が飛んできた方向に居るであろうサヴェールを確認すると、ちょうどソミュールの攻撃に正面から当たって場外に弾かれるところだった。


 サムズアップで場外に飛ばされて行ったサヴェールになんか余裕があるなぁとか思いつつ、私に張られた防御が消えたので自分で防御を張り直す。

 ……さて、飛んでくる攻撃を避けつつ反撃を撃ち込んで、余った風でサヴェールが残していった罠の位置と数を把握しないと。


 真下に一つ、サヴェールが最後まで立っていた場所に三つくらい……ありすぎでは?

 撒けるだけ撒くとは言ってたけど、あんなに一か所に固めておくくらい作ったのか……凄いな本職サポート魔法使い……


「ビャヤスノビ」

「えっぐ。そんなんばっかり使うじゃん」

「使わないと倒されてくれないでしょ?」

「メジャーな所からやって欲しい、なっ!」


 飛んできた岩の塊を砕いて、中に仕込まれていた光魔法は闇魔法で包んで無効化する。

 固めておいた風を崩して整形して飛ばしてみたけど、普通に防がれたので逃げつつ改めて魔法を練り上げて、再び幻を作ろうとしているソミュールに杖を向けた。


「落ちよ雷霆 天を貫き地を穿て

 恐れる者はこうべを垂れよ 恐れぬ者はその身を土へと還すがいい

 イラ・トォーノ」


 風魔法が一番火力が出るし、扱いも分かっている。

 けど、私の風魔法なんて皆もう見慣れていて、リオンやソミュールくらいになると、動きの癖も把握されてて決定打になりにくくもなってきているんだよね。


 だからこれが勝負の一撃だ。

 ここまで、雷魔法は今まで使って見せた程度しか試合で使用しなかった。

 四年生になってからも移動の合間にちまちま練習していたおかげで、大分難易度の高い魔法まで使えるようになっている。


 一年前は使えなかった、ずっと練習していた魔法だ。

 これで仕留められなければ、反撃を防ぐのは難しいくらいには魔力を注いで練り上げた。


 私が上から放った魔法を、ソミュールは避けもせずに正面から受けた。

 向こうもこの一撃で勝敗を決するつもりらしい。


 防御を砕く音がして、無意識に風で探りを入れた私は、雷の光で見えないけれど、ソミュールの指が真っすぐにこちらを指している事をしっかりと認識した。

 雷の先、今まさに砕かれた防御を無理やり修復しているソミュールの瞳が見えた気がした。


 普段は眠たげに、蕩けるようにこちらを見る蜂蜜色の瞳は、見開かれていつもよりも爛々と輝いている。

 思わず笑いが零れた瞬間、ソミュールの指先から撃ち出された無属性魔法が真っすぐに私の胸を貫いて、身体が場外に飛ばされた。


「あっはは、かなわん」

「お疲れ。外から見てると凄かったぞ」

「そう?サヴェールも散々やってたと思うけど」

「罠はほとんど壊された。外から見てる方が楽しいな」

「そうかも。私も見たかった」


 ふらついて座り込んでいたら、サヴェールが歩いて来て手を差し出された。

 その手を取って立ち上がり、手合わせ場の方を見る。

 ミーファが走って行くのは見えたんだけど、ソミュールはまだ動いてないのかな?


「あれ、痺れてる?」

「そうだよぉ。指が動かなくなる前にどうにか撃っただけなんだから」

「えー。嘘だぁ」

「嘘じゃないよぉ」


 痺れて動けないらしいソミュールとのんびり言い合っていたら、ヴィレイ先生が歩いて来てソミュールの頭の上で小瓶を開けて中身をかけ始めた。

 ポーション……じゃないな。魔力消しかな?


「あわぁー」

「魔力の残滓は消しておいてやる。ポーションを持って各自休憩」

「はぁーい」

「分かりました」


 魔力消しを頭から被ったソミュールを風で乾かしながら移動して、ポーションを貰って壁に寄りかかる。

 見える位置にある傷にポーションをかけていたらリオンとリムレがやってきたので、話しながら後処理を終えて改めて息を吐いた。


 はぁ、疲れた。最初から最後まで魔力の消費量がとんでもなかったなぁ。

 残量的には問題ないけど、ここまで一気に消費することも無いからこの後疲れが出そうで怖い。


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