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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
468/477

468,どうしたもんか

 テスト二日目、午前中最後の一周で、ついにソミュールとミーファが対戦相手になった。

 まだ試合までは時間があるから、どうしたもんかと作戦会議をする。


「……どうする?」

「どうしよっか。なんか、どうにか出来そうな魔法ある?」

「……無い」

「……ソミュールとミーファに勝った組っていたっけ?」

「……居ない気がするな」


 どうしよう、どうにもならない気がしてきた。

 二対一でソミュールと戦っても正直どうにか出来るのか疑問なのに、ミーファも一緒に居るんだよ?もう駄目じゃない?


 サヴェールと顔を見合わせて、もうどうにもならなくない?とコソコソ言い合う。

 多分全勝中だよ、あの二人。

 なんてコソコソ話し合っていたら、後ろからリオンがのしかかってきた。


「お前らも全勝中だろ」

「……確かに。リオン重いから退いて」


 昨日の時点でリオン達とはもう戦ったから、今日はずっと一緒に観戦してたんだよね。

 それは良いんだけど、頭の上に腕やら顎やら乗せてくるのはやめてほしい。

 重いんだよね、単純に。もう伸びてない私の身長を縮めるのはやめてほしいな。身長はもうちょっと欲しかったなとか思ってるんだから。


「俺に撃ってたやつは?」

「連撃砲はなぁ……ソミュールは全部消せそう」

「もしくは全部弾くかだな。……魔法でソミュールをどうにか出来るのか?」

「私たちが魔法以外でどうにか出来る事の方が少ないよね」

「それはそうだ。魔法使いなんだから」


 どうする?どうしよっか。とまた同じ事を言って、首をひねって固まる。

 ……駄目だな。いくら話しても解決策が見える気がしない。


「よし、何やりたい?」

「……燃やすか?」

「サヴィ?」

「セルの炎は教室丸ごと燃やすぞ」

「リオン黙って」


 確かに私がやったらとんでもない大きさになるけど、サヴェールには最初に伝えてあるからそんな大ごとにはならないよ。

 炎自体はサヴェールに作ってもらって、私が風でそれを広げる感じだろう。


 ……というかリオン達との試合の時にもそんな感じの事やったじゃん。

 見てたし分かってたのにわざわざ言ったな?

 なんて意地悪なんだ。酷い。シャムとロイに言いつけてやる。


「どんくらい燃やすの?」

「フィールド全部」

「わあ、過激」

「ソミュールは平気でもミーファが平気じゃないだろうからな。そうなったらミーファの保護にそれなりに動力を裂くだろう」

「なるほどね。私が風を掌握しきってればこっちに炎は来ないから、どうにかなるかも、って感じか」


 確かに魔法でソミュールをどうにかするより、他のことに意識を裂かせた方がいいか。

 ソミュールが分かりやすく意識を裂いて守ろうとするのがミーファなので、先にミーファを倒す感じに……なるかな?出来るかな?


 魔法の対応となるとミーファは一応、一般的の範囲に入れてもいいかな……?って感じだけど、だとしても中途半端な魔法は簡単に避けられてしまうから、ミーファが一人で対処できないくらいの大規模な魔法の方がいいか。


「中を全部燃やすとして、攻撃どうする?私他の属性扱えないかもだけど」

「……風でどうにかなるんじゃないか?」

「どうにか……するか。もうするっきゃないよね」

「投げやりだ」

「セルは思考を投げ出してからが本番だからな」


 リオンとリムレが好き勝手言ってるのは無視して、最初にどれくらいの規模で炎を広げるのかをしっかり話し合っておく。

 どこを基準に炎を撒くのか、とかね。風に乗せて広げるから、頭上に広げる事だってできるのだ。


 攻撃するにしても自分たちを守るにしても、どのあたりに炎が展開されるのかはしっかり決めておいた方がいいだろう。

 炎は何もしなければ上に向かっていくから、基本的には下の方で燃やすのが良いんだけど……


「上から補充するか?」

「あぁ、それもあり。後ろでやる?」

「そうだな。炎の追加と操作は俺がやる。厚さは……」

「風で広げるから、結構厚めになるかも。……床から広げるとして、ひざ下くらいまではあるもんだと思ってていいかな」

「エッグイ話してんなぁ」

「俺らの時にこれやられてたら、普通に燃えて負けてたんじゃない……?」

「炎はリオンがどうにか出来ちゃうから」

「マジか」


 ミーファの攻撃姿勢はかなり地面に近いから、地面が燃えていたら他の人よりも動きにくく感じるだろう。

 ソミュールは上に逃げちゃうかもしれないけど、私たちが本気で勝とうと思ったらまずはミーファを落とさないといけないので、一旦ソミュールは無視してミーファへの対策を考える。


「炎の維持は、ソミュールとの主導権の奪い合いになるか」

「そうだね。でもソミュール、基本的に人の魔法には手を付けないからなぁ」

「風主体ならセルリアがどうにか出来るか?」

「まあ、風の奪い合いだけなら負けないかな」

「頼もしいな」

「炎だけ取られることはあるかもしれない」

「そこは俺が頑張ろう」

「頼んだ!」


 話している間に前の試合が終わってしまったので、やるっきゃねぇなぁと杖を揺らしながら手合わせ場の中に向かう。

 さーて、どうなるかなぁ。どうあっても疲れるんだろうってことは分かる。


 最初にやることを改めて脳内に並べながら杖で床を叩いて、意識を切り替えて前を向く。

 ソミュールとミーファが並んで立っててここまで絶望感あることも、この試合くらいだよね。

 普段から一緒にいるところはよく見かけるけど、纏ってる空気が全く違う。


 なんて考えながら、試合開始の合図と共に風を展開して正面から突っ込んできたミーファを止める。

 はっやいなぁ、もうちょっと起こすの遅かったら初撃でやられててもおかしくなかった。


「燃え盛れ、広がり全てを包み込め」

「枯草を揺らし、荒野を吹き去り、炎を包んで吹き荒べ」


 ミーファを弾き飛ばして演唱を開始し、ソミュールの魔力を確認しながらサヴェールの炎を包んで風を一気に広げる。

 大きく退いたミーファを目で追って、膨れ上がるソミュールの魔力を確認して防御のために風を集めた。


「でっかいのが来るぞー」

「一応風の内側に防御を張るが、間に合わないかもしれない」

「それまではどうにか頑張る。任せた」


 周りの炎も巻き込んで風で壁を作って、それとは別に炎を広げる分の風もしっかり回しておく。

 ……ソミュールが浮いたから、上からの攻撃に備えた方がいいかな?


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