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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
465/477

465,順調に進行中

 お昼休憩を終えて、賑やかになってきた廊下を進んで手合わせ場に戻る。

 他の学年も実技試験が始まったのかな?一日目の午後から実技になるのって何年生だっけ。

 なんて考えながら、私の頭の上に顎を乗せてくるリオンを退かすために風を起こした。


「当たんねぇなぁ」

「総当たりなんだからどっかでは当たるよ」

「まあ、そりゃそうか」


 風でペシペシ叩いてるのに、リオンが全然退かない。

 この程度だとそよ風なんだろうね。もうちょっと強めにしようかなぁと思っていたらサヴェールとリムレがやってきた。


「リムレー、この重いの引き取ってー」

「そんなに体重掛けてねぇだろ」

「基準が違うんだよ。体格差をちゃんと認識してほしい」


 風でベシベシやっていたらやっと頭の上の重みが退いたので、乱れた髪を整える。

 ちょっとたわんじゃってるから結び直そうかな。


「……そういやなんで結ぶ位置変わってんだ?」

「何となく」

「意味は無いぞ」

「無いんだ……」

「気になってたのか?」

「そりゃ気になるだろ……」


 疑問が解消される前に当たれてたら、ちょっとだけでも意識が逸らせたのかもしれないのか。

 そう考えると惜しいな。二戦目の相手は一瞬「あれ……?」って顔してて防御が遅れたおかげで綺麗に目くらましが決まったから戦いやすかった。


 そんな話をしている間に鐘が鳴って、昼休憩前の続きからテストが再開される。

 とりあえずこのまま四人で眺めておくことにして、作戦会議とかが必要なら離れる感じでいいか。

 なんて考えながら眺めていた手合わせ場では、薬をしっかり飲んで参戦しているソミュールが大暴れしているところだった。


「あ、終わった」

「次俺らか?」

「そう、っぽいな。行こう」

「がんばれー」


 声を掛けて見送って、何となく杖をくるっと回す。

 今年のテストは時間制限ついてないけど、長引くことはほとんどないから今回も早々に終わるだろうなぁ。


「……セルリア、実はちょっとやりたい事が」

「お、なになに?」

「最初に闇魔法を広げたい。光だと思ってヴェールを張るとなんにも見えなくなる」

「……いいじゃん、やろう」


 午前中はずっと初手目くらましを続けていたから、もう皆意識して光対策をしてきている。

 他の事をするにはいいタイミングだ。

 光らせてこない可能性は考えてるだろうけど、闇魔法を使ってくるとは思ってないだろうし。


 なにせサヴェールの闇魔法なんて見た記憶が無いからね。

 ……使ってることあったっけ?使えるのは知ってたけど、普段は光で色々やってるイメージがある。

 まあ、魔法使いなんて皆自分の属性で出来ることはそれだけでやるもんだからね。どうにもならない時だけ別の属性使うとか普通にあるし。


「……サヴェールって風使える?」

「使えるぞ」

「次闇魔法にしてさ、その次サヴェールが風起こして気を引いてる間に氷とか打ち込もうかな」

「いいな。強めにやってそれっぽくしよう」


 やりたいことがいっぱいあって楽しいな。

 まだ試せるタイミングはいっぱいあるから、思いついたことは全部やろう。

 こうやって学校で安全に大暴れ出来るのも最後なんだから、楽しまないと損だ。


「……浮いてるの、次の対戦表か?」

「みたいだねぇ。……私たち最初の方だ。移動する?」

「そうだな」

「まずは闇から」

「ああ。保護も任せろ」


 移動しつつ話している間に順番が回ってきたので、杖を揺らしながら手合わせ場に入る。

 午後の最初の試合だし、調子を出すためにもガッツリ吹かせていこうかな。

 なんて考えながら杖を持ち直し、しっかり構えて静止する。


 直後に試合開始の合図があり、それとほぼ同時にサヴェールが魔法を三つくらい発動させた感覚がした。

 弱い光の後に思いっきり闇魔法を展開して、その魔法から自分たちを守る保護を同時に張った感じかな?


「えぇ!?」

「ちょ、何も見えん!?」


 効果は抜群みたいなので、対応される前に風を起こして下から二人の身体をすくい上げる。

 そのまま風を吹かせて吹き飛ばし、場外直前で放たれた魔法に杖を向けた。

 一人は確実に場外だけど、もう一人がギリギリ逃げちゃったかな。


「サヴェール、防御任せるね」

「あぁ。任せろ」


 飛んできた魔法は無視してサヴェールに任せ、一瞬魔力を消して視界から外れた人影を探す。

 魔力を消されると一瞬見失いはするけど、私は地形も風で探る女だからね、その場にあるものの形で判断が出来るから、この狭い手合わせ場内でそう長く見失うことはない。


「みーっけた」

「怖いぞ、それ」

「え、うそ」


 ちょうど攻撃の予備動作に入ったところを見つけたので、正面から風で吹っ飛ばす。

 二段階に分けて後からさらに強い風を吹かせれば、流石に身体が浮いて場外まで飛んでいった。

 よーし、一瞬不味いかと思ったけどどうにかなったな。


「そこまで」


 ヴィレイ先生の声が聞こえたので構えを解いて風を消し、残っている魔法の残滓を片付けたら場外に出る。

 最初に違うことはしたけど、まだ私は風だけでどうにか出来てるの良い感じだ。


「まだまだいけるな」

「そうだな。次は氷か」


 壁まで移動して話しながら進んで行く試合を眺めて、他にどんな事をしたいかを話し合う。

 そんなことをやっている間に試合が一周し終えて、次の組み合わせが宙に浮いた。

 遠視魔法で新しい表を見に行き、そこに並んでいる名前を見て思わず声が零れた。


「ついに来たな……」

「リムレとリオンか。……どうする?」

「実は一個、やりたい事があるんだけど……サヴェール、リオンの攻撃防げる?」

「……演唱時間を確保出来れば、数発は防げると思う」

「流石。じゃあ最初に時間稼ぐから、防御してほしいな」

「分かった」


 これは流石に、氷撃ちたいとか言ってる場合じゃないからしっかり話し合う。

 まだ開始までは時間があるから、出来るだけやりたい事とやり方を整理しておかないとね。


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