462,女子組で買い物
門の近くの木に寄りかかってボーっと空を眺める。
今日の天気は曇りだけど、空にかかっている雲は薄いし雨は降らなさそうだ。
時々晴れ間もあるので、そのまま晴れて欲しい。
なんて考えながら杖を回していたら、足音が近づいてきて抱き着かれた。
シャムだなぁこの感じは。
風を軽く向けてみたら、キャッキャッと歓声が上がったのでそのまましばらくそよ風を送っておく。
「おはよぉセルちゃん」
「おはようシャム。カバン新しくした?可愛いね」
「ありがとー!一目惚れして買っちゃったんだ」
ちょっと乱れた髪を直しながら話していると、建物の方からミーファとソミュールがやって来た。
ソミュールも起きれたみたいだ。最後まで起きているかは分からないけど、四人で出かけるのは中々珍しいからもう既にちょっと楽しい。
「よーっし、行こーう!」
「おー」
「ちなみに私そういうお店の場所とか知らないけど」
「私が知ってる!」
「シャムは本当に何でも知ってるね」
学校を出て、大通りの方へ進む。
今日はダンスパーティーに向けて色々と小物を買いそろえに行くのだ。
ソミュールに声を掛けたら、一年生の頃から興味はあったという事なので一緒に行くように準備をすることにした。
色味の確認とかでミーファとソミュールのパーティードレスも見せて貰ったんだけど、似てるのに全然違うデザインで凄く可愛かった。
ミーファの方がふわふわしてる可愛い系、ソミュールの方は裾の広がりとかは無くてレースを多めに盛った綺麗系。
あ、ちなみにシャムのパーティードレスにも杖用のポケットは付いていた。
確認したシャムが「気付かなかった……」崩れ落ちたので、お兄ちゃんにはサイズなんかは問題なかったけど、こっそり付けた機能があれば全部先に教えてくれと手紙を出しておいた。
「色、合わせた方がいいのかな?」
「んー……あんまり合わせようとしすぎると、細かい色味の違いとか気になっちゃわない?」
「色を合わせるより、雰囲気があっててちょっと目立つくらいの飾りがいいよぉ。ワンポイントワンポイント」
「ソミュールちゃんそう言うの詳しいの?」
「いや?基本的に自分では選ばないかなぁ」
自分で選ばないとなると、誰が選んでるんだろう。
ソミュールの身に着けてる物って大体どれも質がよくって、なんというか一目で高いんだろうなぁって分かるものが多いんだけど……
やっぱりヴェローさんが選んでるのかな?
もしかしたら、王城の人たちが選んで届けてたりもするかもしれない。
卒業後は王城の関係者、しかも結構重要でガッツリ守られる立場なわけだし、服とか装飾品とかは渡されていても不思議ではない。
「そこを曲がったところにあるお店だよー」
「結構奥まったところに……あぁ、なるほど。でかいから奥の方じゃないと土地が無かったパターンだこれ」
「そういうパターンがあるんだ……」
「セルちゃん詳しいねぇ」
「姉さまの知り合いに色んな人がいるからね、土地無さ過ぎて郊外の大規模を買い取ってる人とか」
それで言うと、クリソベリルもその括りになるんだよね。
でかい建物を建てるために、ちょっとだけ移動に不便な所に本拠地がある。
その気になれば南区の一等地も買えるんだろうけど、静かでいいとかなんとか言っていた気もする。
そんな話をしながら店に入り、たっくさん並んでいる商品を眺めて回る。
小物だけじゃなくてドレスとかも売ってるのか。
一式全部揃えることも出来る感じなのか、なるほど。
「セルちゃんどんなのにする?」
「んー……白系にしようかな。色無くても良さそう」
「僕ミーファと似たのにするー」
「えっ。じゃあソミュちゃんが選んで……?」
「仲良しだねぇ」
話しながら小物系が置かれている一角に移動して、並んでいるキラキラした小物を眺める。
ミーファとソミュールはくっ付いてお揃いの物を探しているので、私はシャムの傍に寄って同じ棚に目を向ける。
「シャムはどんなのにするの?」
「どうしよっかなぁー。実はあんまり決めてないんだよね」
「去年まで付けてたのもあるんだもんねぇ」
「実はね、割と安物だからちょっと見劣りするし買い替えちゃおっかなぁーって思ってたりもするの」
「今ならお金あるし?」
「そう!遠征中もなんだかんだ収入あったし」
他の人の遠征がどういう風に進んで行くのかは分からないけど、私たちは何だかんだ路銀を稼ぎながら移動してたからね。
出くわした魔物を狩って素材を売ったり、夕食用に狩った動物の毛皮を売ったり。
逃げずに戦っても大丈夫な相手の判断をシャムとロイがしっかりやってくれるから、移動中に討伐出来る魔物が多くて稼ぎになるんだよね。
あとは、乗合馬車の護衛もしてたし。護衛に関しては、前にもやったことがあるからって優先して貰えたりもするみたい。
「シャムも髪全部まとめるの?」
「私はハーフアップかなぁ。セルちゃんは全部?」
「うん。全部まとめようと思ってるよ」
「じゃあおっきい飾りだ!」
髪飾りだけじゃなくて、他の細かい飾りも揃えて買った方がいいよねぇ。
なんて考えながら棚を眺めているけど、現状何にも決まっていない。
「……髪飾りからピアスから全部セットになってるのとか無いかな」
「あぁー……あるんじゃないかな。探してみる?」
「うん」
「よし、いこー!ミーファちゃん、ソミュールちゃん、私たちちょっと奥見てくるね」
「はぁーい」
「いってらっしゃい」
店の奥の方にもブローチとかリボンとか、いろんな装飾品が大量に並んでいる。
それを流し見ながら棚の間を歩き回り、箱に収められた物が並んでいる一角に辿り着いた。
箱の中には髪飾りとネックレスとか、ネックレスとブレスレットとか、いろんな組み合わせて揃いの飾りが納められていた。
「お、あったねセット売り」
「あったねぇ。綺麗」
セット売りされている分だけでも結構あるなぁ。
気になった箱を手にとってしっかり確認していたら、シャムもセット売りされているものから選ぶことにしたらしく箱を一つ持って横に来た。
「これどうかな?髪飾りおっきいかな?」
「いいんじゃない?パーティーだし」
「……確かにパーティーだしね、せっかくなら好きなの選ぶべきだよね」
どうやらシャムは決まったみたいだ。私もこれに決めようかなぁ、と手に取った何個目かの箱をもう一度眺めてから、ミーファ達の所に戻ることにした。




