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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
448/477

448,準備の日

 屋台につられてフラフラしそうになっているリオンの背中を押しながら大通りを進んで、目的地である大きな服屋に入った。

 今日は四人で第六大陸に行くための準備をしており、まずはあったかい服を買いに来たのだ。


 そして、実はなんと私、服屋に来るのがほとんど初めてだったりする。

 今までずーっと、ウラハねえとモエギお兄ちゃんが作ってくれた服を着てたからね。

 そんな話をしたらならなおさら行ってみよう!という流れになってしまい、このでっかい服屋でいいのが無かったら他のところにも行くからね!とシャムが勢いづいているのだ。


「さ!行くよセルちゃん!」

「別行動?」

「男女で置いてある場所が違うからね。ある程度時間が経ったらそっちに行くよ」

「はーい」


 シャムに手を引かれて店の奥に進みつつ、別方向へ進んで行くリオンとロイに手を振る。

 温かい服かぁ……家で着てたのはもっこもこで、あんまり動き回るのに適してはいなかったんだよね。遠征用ってなるとなんか別の感じのを探さないといけないか。


 何がいるかなぁ。とりあえず重ね着できればいいかなぁ?

 でもそれだと動きにくいんだよね。魔法である程度どうにか出来るとはいえ、魔力消費は抑えれられた方がいい。


「とりあえず最初に確認なんだけど、セルちゃん手袋ってつけてると魔法使えなくなるタイプ?」

「あー……かも。今ならリングの上から手袋付ければ一応使えはすると思う」

「なら手袋も用意しよっか。全部覆うのもあるし、手のひらの方が薄かったり布が無かったりする魔法使い用の手袋もあるから」

「そんなのあるんだ」


 色々知った気でいたけど、知らない事だらけだなぁ。

 服にはそもそもあんまり興味が無いせいで、今まで触れてこなかったからね。

 こういうのが欲しいーとかはあったけど、それをそのままウラハねえとモエギお兄ちゃんに伝えると、物の数日で完成品が出てきてたからなぁ。


「まあまずは服から見よっか。外套もしっかり前が閉めれるやつを買うよー」

「はぁーい。首元もこもこにする?」

「するよー」


 シャムの後ろをついて行き、色とりどりの布の間をすり抜けていく。

 おわー……なんか見たことない作りの服が飾られてるー……

 なんだろうあれ、誰が何の時に着る服なんだろう。


「はい、セルちゃんこっち」

「はーい。ここ?」

「そう!この辺は生地がしっかりしてるから温かいと思うよ」

「ほえ、なるほど」

「肌触りが良くて長めの服を着て、その上に着れば着心地も問題ないから一着選んでおこうか」


 着てみて違和感が無ければとりあえず大丈夫だと言われたので、数着を選んで試着室に引っ込む。

 下に何かを着る予定だから、今着てる服の上から着てみればいいんだよね。


「どうー?」

「これ腕ちょっときついかも」

「なら別のの方がいいね。そっちは?」

「凄く余る……」

「セルちゃん細いから……」


 着替えてシャムに見せて、再度着替えてもう一回見せて、を繰り返してとりあえず良さそうな二着を選んで、今度はシャムの分を選ぶ。

 選ぶ基準が何かあるのか、私の服を選ぶ半分の時間で終わった。

 次はこれの下に着るのを探すんだよね。肌触りのいい、ちょっと長めの服だよね。


「重ね着するのは二枚だけ?」

「あとは外套とかマフラーとかで調整かな。結局ずっと歩いてることになるからね、何だかんだ動いてるとあっついんだよ」

「あ、そっか。確かに」


 太陽が出てれば温かいし、動いてればなおさらあったかいもんね。

 まあ、立ち止まれば寒いから防寒は必須だけどね。

 なんて話しながらたくさん置いてある服の中で触り心地がいいものを選ぶ。


 試着もしてみていい感じのを選んでいたら、もう選び終わったらしいロイとリオンがやって来た。

 早くない?そんなに早く終わるものなの?

 私さっきシャムからあと三つ四つ選ぶものがあるよって言われたんだけど。


「まあ、服選ぶのは男の方が早ぇわな」

「そういうもん?」

「選択肢の量が違うからね」

「そうなんだ……」

「それ持っとくから他も選んで来いよ」

「はーい」


 差し出された手に選んだ服をひっかけて、ズボン選びに行くよ!と手を引くシャムについて行く。

 これも動きにくくないくらいに厚手で温かいのを選ぶらしい。

 寒かったら腰回りに布を追加してもいいよと言われたので、それもとりあえず一枚選んでおいた。


 欲しい時に無いのが一番嫌だからね。

 その後外套も選んで、手袋も見て、マフラーも選んで、疲れた……と声を零したらこの後靴も見に行くよと言われた。


「雪原に行くのって、大変」

「別に初めてじゃねぇんだろ?」

「今までは姉さんたちが準備してくれてた……あと皆魔法得意だから基本快適だった」

「また感覚狂わされてんだな……」


 買ったものを抱えてしょぼしょぼしていたら、リオンから憐れみの目を向けられた。

 うちの遠出はいつだって快適快速旅だったから……歩いて第六大陸に行こうと思うと、準備だけでも大変なんだね……


「靴、どんなの?」

「内側がもこもこなの。暖かいよ」

「それは確実に温かい」

「ロイたちも靴買いかけるよね?」

「うん。リオンもだよ」

「おー」


 靴を選んだらお昼休憩になるらしいから、もうちょっと頑張ろう。

 慣れないもの選びは大変だし必要以上に疲れるなぁ……楽しくもあるんだけどね。

 シャムは全然疲れて無さそうだし、やっぱり慣れなんだろうか。


「俺普通に靴買い替えてぇんだよな」

「あぁ、前にも言ってたね」

「今回の遠出で限界が来てる感じすんだよ。壊れる前に買い替えねぇと」

「どうせ靴屋行くんだしそれも見てみようか」


 のんびり話しているリオンとロイの声を聞きつつ、シャムの速度がちょっと上がったので私も速度を上げる。

 あそこが目的の靴屋さんかな?


「……あ、ここ前に来たことある」

「あれ、そうなの?」

「うん。この靴買ったところだと思う。多分。買い替えたの二、三年前だからちょっと曖昧だけど」


 多分そうだよね、靴が壊れた時に、イザールが連れて来てくれたところ。

 二人が連れて来てくれたってことは、本当に腕のいい職人さんなんだろう。

 扉を開けるといらっしゃい、と声がかけられて、買いたいものを伝えたら一人ずつ合わせるからちょっと待っててくれと言われた。すみませんね、一気に来て……


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