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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
441/477

441,とんでも技術

 クンバカルナの外に出て、少しだけ暗黒の大地の方に歩いて行くと、大結界が間近に見られる場所がある。

 結界の核はしっかり守られていて見ることは出来ないけど、触れられる場所まで近付けるだけでもかなり貴重な体験だ。


「おー……これ俺弾かれっかな?」

「かなり精密に作られてるから、亜人には反応しないと思うよ」

「すごーい……これ上どこまであるの?」

「千メートルくらいはあるって聞いた気がする」


 結界を見上げながら喋っていたら、リオンが結果に触れて「弾かれねぇ!」とはしゃいでいた。

 そりゃ弾かれないだろうと思ったけど、このまま見ていると魔力を高めて再挑戦し始めそうだから一応止めておこう。

 弾かれたいの?なんで?絶対ただ痛いだけだよ?


「上は千メートル……横はどんくらい?」

「クンバカルナの外周の二倍とか、そんな感じじゃなかったかな」

「なんかちょっと曖昧?」

「周りの魔力量で変動するらしいよ。魔力が多いほど魔物も多いから、そしたら広がるんだって」

「ほー……すげぇなぁ」


 本当にすごいな……結界術と魔導基盤の組み合わせってことだけは知ってるけど、どうやったらその二つを組み合わせられるのは本当に分からない。

 結界術を魔法陣に起こせたりするんだろうか。……あれ、そもそも魔導基盤って魔法陣入れて組めるんだっけ?


「つーかあれか、クンバカルナって結界の本場か」

「そうだね、一番発展してる国だと思うよ」

「ほーん……あれって魔法とは違うんだよな?」

「違うよ。結界は使えるけど魔法は使えないとか、その逆とか多いよー。両方使えるセルちゃんはレア」

「いえーい」


 話題に出たから、とりあえずピースを向けておく。

 姉さまが結界術使えるタイプの人だったのと、魔力の扱いが得意な兄姉が多かったのがあって、魔法の練習がある程度落ち着いたころから結界術も教えて貰ってたからね。


 魔法で認識が固まる前に触れたから使えるんだろうなぁ。

 使えたら便利だからって早めに教え始めてくれたシオンにい達に感謝だ。

 実際便利だしね、結界術。咄嗟に張れるようになると、怪我の頻度がかなり減る。


「リオン結界術に興味あるの?」

「前にギルドで会った人が、ほっそく作った結界を剣の先に付けて斧みたいにしてたんだよなぁ」

「とんでもない変態技術に出会ってる……何それ……」

「普通は出来ないから、それ目的で結界術はやめた方がいいかもね」

「お、やっぱそうなのか」


 意味の分からなすぎる結界の使い方だ……何それ……結界って武器なの……?

 一つの技術を極めた人って、なんでこう意味の分からない使い方を始めるんだろうね。

 極めるための絶対条件だったりする?


「……あ、魔物飛んでる」

「本当だ。ぶつかるかな?」


 話しながら結界に添うようにゆっくり歩いていたんだけど、ちょうど良く結界の向こうに飛行型の魔物が飛んでいるのが見えた。

 こっちに向かってきているので、そのまま眺めてみる。


 念のため防御用に風は作ったけど、本当に念のためなのでそこまでの量はいらないだろう。

 そんなことをやっている間に魔物が勢いよくこっちに突っ込んできて……バチンッと音を立てて結界にぶつかった。


「おー」

「今一瞬だけ魔法陣浮かんでたね!あれが張り巡らされてるのかー!」

「え、見えなかった。シャム目いいね」

「……もう一回見たかったけど、逃げちゃったな」


 弾かれた魔物はフラフラしながら飛んで逃げてしまったので、二度目は見られなかったけど一回見れただけでも運がいいか。

 魔物が離れたらすぐに結界は見えないくらいの薄さになって、魔力の消費量も一気に下がったようだった。


 なるほどなぁ……これなら、周りの魔力を吸収できる機構があれば放置でも大丈夫だし、人力で魔力を供給しないといけないにしても頻度はそこまで高くなくて大丈夫そうだ。

 安定して長く使うことを前提に作られているんだろう。


「見れば見るほど凄いなぁ……」

「そういえば、国の中に結界の博物館みたいなのあるんだっけ?」

「そんなのあるの?」

「あるらしいね。大結界の基盤の試行錯誤も見られるらしいよ」

「行ってみようぜー。ついでにそろそろ飯食おうぜー」

「そうだねぇ、お腹空いてきた」


 見たかったものは見れたので、クンバカルナの中に戻ってとりあえず昼食を食べることにした。

 お昼時なのもあってどこも混んでいそうだけど、そもそもご飯屋さんの件数が多そうかな?

 クンバカルナは結構広くて、宿もご飯屋さんも多い感じがする。


「……お?なんかあるぞ。何だあれ」

「魔獣っぽいけど……素材?」

「高炉の素材とかにするんじゃないかな。クンバカルナは武器屋も多いから」

「へぇー……あの鱗砕くの?」

「砕いて素材に混ぜたり、炎に混ぜたりするんだよ」

「火に入れんのか……」


 魔獣とかの鱗は色んな素材になるんだなぁ……

 第一大陸は魔物も魔獣も多いから、素材集めって点では最適なのか。

 土地の魔力も高いわけだし、植物系の素材も集めやすそうだもんね。


 そうやって考えると、魔物に襲われやすくて暮らしにくそうな第一大陸が一番国の数が多いのもなんかちょっと納得できる。

 実際どんな理由で多いのかとか、そういうのは良く知らないけどね。


「どうする?屋台で買い食いとかにする?」

「それもありだよね。なんか見たことないもの色々売ってるし」

「じゃあ博物館に向かいながら屋台覗いてみよっか」

「おう。博物館ってどっちだ?」

「あっちー」


 シャムが指さした方向に進みながら、道の脇に出ている屋台を見て回る。

 通りに面したお店は全面が開かれている作りのものも多くて、気になったものを買ってつまみながら歩いていたら、博物館に着くころにはかなりお腹も膨れていた。


 博物館はかなり大きな建物で、人の出入りも結構多いようだった。

 入口で入場券を買って中に入ると、国の歴史や魔獣についての展示が並んでおり、奥に進んで行くと大結界のスペースを見つけた。


「……立体基盤?」

「エグぅ……変態技術だ」

「そんなにすげぇのか」

「普通は平面で組むものを、幾つも重ねたうえで混線しないように作ってるわけだからね……途中で中間層の間違いに気付いたらやり直しだよ」

「なんかヤベェ事は分かった」


 凄いんだろうなぁとは思っていたけど、凄いどころの話じゃなかった。

 なんだこれ。こんなの出来るのか。

 そもそも立体になってる回路とか初めて見たんだけど。


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