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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
438/477

438,第一大陸の中継地

 夕日に照らされつつ、ちょっと駆け足になりつつ国の門を潜る。

 ここは第一大陸に来てから二つ目の国、デルピュネー。

 大陸の内部にあるから、第一大陸を移動する時には大体通る中継地だ。


 ここで最低一泊して、第一大陸の奥の方が荒れてないかを確認することになる。

 大荒れだったら滞在日程を伸ばして、安全に移動できる日を見繕わないといけない。

 まあ、そんなに荒れることは少ないみたいだし、あんまり心配しなくていいと思うんだけどね。


「さて、まずは宿だね。もう大通りの宿は埋まってそうだし、少し外れたところで探そうか」

「はーい。リオン、ご飯まだだからね、つられて行かないでね」

「おう……めっちゃ腹減る匂いしてんなぁ……」

「言ったそばから釣られそうだけど。……素材の換金は明日?」

「そうだね、もう遅いし」


 ご飯屋さんから漂ってくる香りに釣られそうになっているリオンを引っ張りながら宿を探し、二部屋空いているところを見つけたので部屋を取って荷物を下ろす。

 荷物も置けたし、まずはご飯かな。さっきからリオンのお腹の音が鳴り響いてるんだよね。


「どこいく?」

「あっちの店、さっきからめっちゃいい匂いする」

「さっきからずっと見てたもんね。行こうか」

「おう」

「私もお腹空いてきたなぁ」


 貴重品を持って宿を出て、ずんずん進んで行くリオンの後をついて行く。

 これ多分、宿決める前から夕食食べる場所決めてたな?

 まあこういう時のリオンの勘は外れないからね、素直に付いていけばいいのだ。


「うーっし、ここだろ」

「おわぁ。いい香り」

「結構混んでるけど……入れるかな?」

「とりあえず聞いてみよう!すみませーん、四人入れますかー!?」

「あいよ!奥どうぞ!」

「はぁーい!」


 流れるようにシャムが店員さんに声を掛けてくれて、入口からでは見えない奥の席に案内された。

 店内は結構ギチギチだけど人にぶつかる心配は無く歩くスペースはあったので、先に進むリオンについて行く。


 狭いお店とかに入ると、杖があっちこっちぶつかりそうで怖いんだよね。

 ロングステッキ大好きだし、飾りが大きい杖が最高に格好いいと思ってるけど、こういう時だけは懐に仕舞えるタスクがちょっとだけ羨ましくなる。


「うーっし、何食う?」

「思ったより色々あるな……」

「セルちゃん見て見て、サラダの下にでかいよって書いてる」

「本当だ。注意書き付きサラダだ」

「気になるよね」

「気になる。頼んでみる?」

「うん。多くてもサラダなら食べれるよね」


 シャムがウキウキで見せてくれたメニューに書いてある手描きの注意書きを見て、あまりにも気になったので頼んでみることにした。

 サラダならまあ、いっぱい食べれるしロイたちも食べるだろうしね。


 サラダ以外の注文は、適当に済ませておいた。

 食べきれなかったらリオンが食べてくれるらしいし、食べたいものをざっくりとね。

 頼み過ぎたかなぁって思わなくもないけど、いっつもリオンが追加で注文してたりするし多分ちょうどいいか、何なら足りない可能性すらある。


「……お、サラダ来たぞ」

「おー。……でっか」

「あっははは!でっかーい!」

「四人で食べてちょうどいいくらいかな……?」


 運ばれてきたサラダがあまりにも大きくて、シャムが笑って震えているしロイが大きさを真剣に測り始めた。

 リオンだけはウキウキで取り皿を構えているので、とりあえず分けるだけ分けておこう。


 皆食べるでしょ。シャムの爆笑に釣られてロイまで笑い始めてるから、これは目の前に置いておこうかな。

 とりわけ用のトングはリオンの方に向けておいて、追加食べたければお好きにどうぞってやっておく。


「肉も来たな。……セル、そっち置けるか?」

「置けるよー。うい、もらう」

「離すぞ」

「あーい」


 店員さんからお皿を受けとったリオンが机の上の空き場所を探していたので、物を寄せてスペースを作る。

 シャムとロイはまだ笑ってるから一旦放置。そのうち復活してきて食べ始めるからね。


「リオンまだサラダ食べる?」

「あー……食う」

「あい、お皿ちょうだーい」

「おう、サンキュー」


 先ほど取り分けたサラダを食べきったので、自分の分を取るついでにリオンにも聞いて取り分ける。

 そんなことをやっている間に笑いの淵に沈んでいた二人が復活したので、続々と届く料理を置く場所を確保するためにも空きそうなお皿から開けていくことにした。


「はぁー……笑った笑った」

「すげぇ笑ってたな」

「疲れてるんじゃないの?」

「そうだね、なんかもう何でもかんでも面白い気がする」

「ロイは割といつもそうだと思う」


 ゲラだからなぁ……誰かが笑ってると高確率で釣られてるし、割といつでも笑い過ぎで息切れ起こしてるよね。

 体力自体は結構あるはずなのにひいひい言うくらい笑ってるんだから相当だ。


 楽しそうで何よりだけど、その状態でご飯食べれる?まだちょっと思い出し笑いしてない?

 なんて思いつつ夕食を食べて、満足したところで宿に戻って休むことにした。

 明日も色々やらないといけないし、移動の疲れもあるからね。




 そんなわけで宿に戻って早めに休んだ翌日、私とロイは朝からデルピュネーの国内を歩いていた。

 目的は素材の換金と第一大陸の奥側についての情報収集で、換金の方はギルドでサクッと終わらせてきたので残りは情報収集だけだ。


「さて、と。こっちかな」

「はーい。……専門の情報屋さんが居るんだっけ」

「うん。クエレブレとクンバカルナに同じ情報屋の人がいて、その人たちと毎日連絡を取って状況確認をしてくれるんだ」

「すご……連絡って魔法なのかな?」

「……そうなんじゃないかな。長距離で安定して連絡を取る魔法って、何かある?」

「んー……魔法より、魔道具か魔術の方が適正あると思うな。連絡取れる魔道具は、姉さまが持ってた記憶あるよ」

「なるほど」


 話しながら段々細くなっていく道を進んで、看板がかかっている建物の窓を軽くノックするロイを見守る。

 小さな建物……っていうか、窓がカウンターみたいになってるのかな?

 ノックしてすぐに窓が開いてお姉さんが一人現れたので、多分そんな感じだろう。


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