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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
435/477

435,初めての第一大陸

 船を降りてグーっと身体を伸ばし、横で同じように伸びをしているリオンに目を向ける。

 シャムとロイは何やら難しい話をしているから、私たちは一旦待機。

 ここは第一大陸のレモラ。船にはイツァムナーから四人で帰ってきた時とソミュールと遠出した時とで三回ほどやっているのでこの港にも来たことはあるんだけど、その時は通過だったから降りるのは初めてだ。


「お、なんか見たことねぇのがあるぞ」

「どこー?あれ?」

「おう。何だあれ」

「何だろう……鉱石?」


 見たことないものが箱いっぱいに詰まっていて、目で追っていたのだけれど正体が分かる前に見えない所まで行ってしまった。

 何だったんだろうなぁ、あれ。気になるなぁ。


「お待たせー」

「何か面白いものでもあったの?」

「鉱石みたいな何か」

「何だったのかは分かんねぇ」


 私とリオンが二人揃って謎の鉱石っぽい何かに気を取られている間に、シャムとロイの話し合いは纏まったらしい。

 いつの間にか後ろに立っていた二人に誘導されて歩き出し、今日はレモラに泊まって明日から第一大陸を進むことにする、と予定を聞いた。


「第一大陸は他の大陸よりも魔物が多いから、野営地選びも少し気を付けないといけないんだ。大体の場所は僕とシャムが把握してるけど、最終的には二人的にも嫌な感じがしない場所にするから何か違和感があったらすぐに言ってね」

「おう」

「はーい」


 ここは大陸の端っこだけど、それでも周りの魔力量が多いのが分かる。

 迷いの森も魔力量が多いから私は慣れてるけど、この魔力量は魔物もいっぱい居るだろうなぁって分かってしまってなんとも言えない気分になった。


 迷いの森が危険な理由は道案内の魔道具が使えないだけじゃなくて、森の中の魔力量が多すぎるせいで魔物たちが独自に進化してるからなんだよね。

 やたら強かったりもするし、土地の魔力量って魔物にすごい影響を及ぼすのだ。


「宿探して荷物置いたら町の探索行こうよ」

「おう。なんか色々気になるもんあるしな」

「お腹も空いてきたよねー」

「そうだね。……宿は向こうの通りにいっぱいあるらしいから、とりあえずそっちに行こうか」


 二人はさっきまで人と話していたので、その時に色々聞いておいてくれたみたいだ。

 まずは宿を探して別の大きな道に移動し、宿屋の看板がかかった建物を覗いていく。

 やっぱり人が多いのか、最初に覗いた二件は満室で入れなかった。


 三件目もいっぱいだったけど、四件目で空室が見つかった。

 寝室が別れてるタイプか、二部屋隣接して空いてる部屋が欲しいから、探すのが大変なんだよねぇ。

 普通にベッドが四つある部屋でいいのでは?って前に言ったら、ロイからものすごく圧のある「駄目です」を貰ったから何も言わないようにしている。


 姉さまに手紙で怒られた……って報告をしたら私もコガネに怒られたことある……って返事が来たので、多分よくある事なんだと思う。

 迂闊なことは言うもんではないね、と二人でひそかに心を通じ合わせたものだ。


「さて、じゃあ荷物置いて街に出ようか」

「っしゃぁ飯ー」

「何食べる?ちなみに私はパスタの気分」

「何か温かいスープとかが食べたい」

「僕はなんかさっぱりしたものがいいな。リオンは?」

「……肉。香草焼き」

「お、ハマってるね」


 野営の時に現地で食材を確保することが結構あって、その時に今回から持ってきたスパイスで香草焼きを作ってたらリオンがかなり気に入ってくれたんだよね。

 ドはまりしてるみたいで何より。美味しいよね香草焼き。


 食べたいものの話をしながらご飯屋さんを探して街をウロウロし、いい感じにパスタも肉もスープもさっぱり系のご飯もありそうなところを見つけたので中に入った。

 まだお昼だから酒場は開いてないし、ご飯屋さんが探しやすくて助かる。


 夜はどうしても酒場の方が見つけやすいし、そもそも開いてる数も多いからね。

 私たちはお酒は飲まないので、変な厄介ごとに巻き込まれないためにも酒場は出来るだけ避けたいのだ。


「セルちゃんスープだけ?足りる?」

「いや、他にも頼むよ。……あとでっかいサラダ頼んでもいい?」

「良いよー」


 喋りながらメニューを眺めて、とりあえずスープとサラダを決めた。

 後はメインだけど……何にしようかな。私もパスタにしようかな。

 シャムはトマトとイカのパスタにするらしいので、私は別の味付けのにしよう。毎度のごとく一口交換ーってやってるから、なんかもうそれ前提で動いちゃうんだよね。


「決めた」

「お、どれにする?」

「魚とキノコのパスタ」

「いいね、美味しそう。ロイたちは決まった?」

「決まったよ。リオンが鳥の丸焼き食べたいらしいから、切り分けてみんなで食べよう」

「また豪勢な……」

「ムスペルで稼いだ分があるからな。香草焼きっぽいのこれくらいしかねぇんだよ」


 だからって丸焼き行く?……行くか。リオンなら普通に食べきれるもんね。

 なんなら量が多めで嬉しいな、くらいの感覚で食べきるもんね。

 リオンの胃に限界は無いのかもしれない。


 もうお腹いっぱい、限界、って言ってたことあったっけ?

 なんて記憶を掘り起こしながらとりあえず注文を済ませて、順番に運ばれてくる料理で埋まっていく机を眺める。


「おわ、思ったより鳥がでっかい」

「ナイフも一緒に来てるね。ちょっと切ってみようか」

「いい香りー。中になんか詰まってるのかな?」

「お、めっちゃ詰まってんぞ。芋か?」


 先に来たサラダを食べたりなんだりしていたら、机の中央にデデーンと鶏の丸焼きが置かれた。

 凄いでっかい。思ってた二倍くらいある。

 でもすごいいい香りがしてて食欲がそそられるので、なんか食べきれる気がしてくるのが凄いね。


 まあ、リオンはそんなの関係なしに食べきれるんだろうけども。

 リオンの前に置かれるとなんかちょっとだけ小さく見えるの面白いな。シャムの前に置くとバカでかく見えるのに。


「はい、どうぞ」

「わーいありがとう。お礼にサラダあげる」

「ありがとう」


 ロイが切り分けたお肉を乗せた皿をくれたので、代わりに取り分けたサラダを渡す。

 私とシャムの分はかなり少な目にしてくれたみたいで、リオンの方には切り分けた分の残り全てが盛られていた。


 皮目はパリパリで、中に入っていたお芋と内側の肉はホクホクだ。

 香草の香りもしっかりついていて、臭みなんかは一切ない。

 パスタも美味しかったし、凄くいいお店を見つけたかもしれないな。


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