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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
430/477

430,第一大陸へ向けて

 杖を地面に打ち付けて、風を起こして空に上がる。

 上空を飛んでいる鳥がこちらを見ているので、適当に風を吹かせて何でもないと知らせておいた。

 そんなことをやっている間にシャムが真下に来ていて、軽く魔力が飛んできたので下に降りる。


「どうだった?」

「大丈夫みたい。このまま行こっか」

「はぁーい」


 今日の朝、第一大陸に向けて出発したのだけれど、そろそろ昼休憩にしようかと話し始めたところで人が近付いてきたので、一旦警戒して空に上がってたんだよね。

 どうやら関所の人だったらしく、第三大陸から第四大陸に逃げこんだ盗賊が居るからそれを探しているんだとか。


 今はフォーンにそれを伝えに行くところだったらしく、その道中で私たちを見かけたから確認と注意喚起に声を掛けたらしい。

 私が飛んだのも気付いていたけど、絶対盗賊ではないし外で近付かれたら警戒もするよねってことで何も言われなかったみたい。


「なんか大変だったんだねぇ」

「だったというか、まだ大変だね。念のため気を付けて行こう」

「おう」


 ちゃんと地面に降りて風を消し、上の方に残っていた風は周りに撒いておく。

 道中の進行度的には影響も無いので、このまま行動を再開した。

 再開はしたけど、お昼ご飯どうしようかって話してたんだよね。


「休憩はどうする?」

「もう少し進んでからにしようか。確か休憩できる場所があったはずだから」

「お、そうなのか」

「小さいけど安全地帯があるんだよ。今まではもっと進んでから休憩してたから使ってなかったけどね」


 今回の遠征は今までより日程を長くして休憩時間も長くしてあるから、一日に進む距離は短くなってるんだよね。

 野営の間は夜ほとんど寝ないリオンの睡眠時間を確保するためでもあるし、仕方ないことなので特に文句も無い。そもそも今までの速度が速すぎたくらいなのだ。


 この進み方は前にもやったし、昼休憩が長いならお茶も淹れられるしね。

 なんて考えながら風からの情報を整理していたら、なにやら酷く荒々しい魔力を見つけた。

 ……なんだろうあれ。人っぽいけど、あんなに荒れてる人は初めて見た。


「……あっ」

「どうしたー?」

「えーっと、リオン、ちょっと手」

「ん?おう」


 思い至った可能性に思わず声を上げつつ、確信が持てないのでその辺の判断が出来そうなリオンを遠視魔法で引っ張って行くことにした。

 隣でうおぉぉ……となんとも言えない声を上げているけれど、ちょっとだけ耐えてほしい。


 時々遊びで遠視魔法を使っていて良かった。

 これ、初めて使うと酔いやすいんだよね。リオンも最初は酔っていたし、今まで遊んで慣れてきた成果がこんなところで発揮されるとは。

 やっぱり普段から魔法は遊びに使っとくもんだね。


「あれ、あの人。どう思う?」

「あー……ロイ、さっきの衛兵って追いつけそうか?」

「え、居た?」

「ぽいのが居る」


 リオンもそう思うんなら多分そうなんだろうなぁ。

 やけにあたりを警戒している感じといい、妙に荒れた魔力といい、何かあった人なのは確実だ。

 ちょうど先ほど話を聞いたということもあり、フォーンへ向かったはずの関所の人を呼び戻して確認なり対処なりをしてもらった方がいいということになった。


 違ったら申し訳ないけど、あの感じはちょっと無視できないレベルなんだよね。

 周囲に吹いている風に私の魔力が乗っているのは気付いてい無さそうだけど、念のため遠視魔法は解いて風も少し薄くしておく。


「僕が先行する。シャムは後ろをついてきて」

「はーい」

「セルリアとリオンは、念のためその人の方を警戒しておいて。出来れば詳しい位置も把握したいな」

「了解。飛んでていい?」

「いいよ」


 離れて場所が分からなくなってもいけないので、ここで一旦別行動になった。

 この組み合わせで二手に分かれることはあんまり無いんだけど、今回は仕方ないって感じかな。

 なんて考えながら風を操作して空に上がり、全体の位置取りを把握する。


 ここからフォーンに向かう道にシャムとロイ、その先に関所の人。真下にリオン、迷いの森の方に件の盗賊らしき人物。

 他に私の風の範囲に人は居ないけど、周囲も警戒しておいた方がいいかな?


「セル」

「うん?」

「もうちょい高度下げて、周りの風厚くしとけ」

「見える?」

「おう。目で見てるわけじゃねえし、斬りかかられない位置くらいでいいだろ」

「分かった、そうする」


 考え事をしている間に結構な高さまで上がっていたようで、リオンに呼び戻されてしまった。

 リオンは最近魔力の扱いがどんどんうまくなってきていて、私が空に居る時は声に魔力をちょっと込めて呼んでくるんだよね。


 おかげで気付きやすくて非常に助かっている。

 リオンの魔力は分かりやすいからね、他と全然違うから誰だ?ってならないし、私を呼ぶときは明確にこっちに向けて発しているから尚分かりやすい。


「……ん、動いた」

「移動か?」

「かなぁ?なんかすっごい迷ってるみたい」


 どっちに行くか決めかねて、行ったり来たりしている感じだ。

 そのままウロウロしていてくれればいいんだけど……どっか行きそうになったらどうすればいいんだろうか。


 追いかけたりはしない方がいいのかな?とりあえず私は動かずに、風で取れるだけの情報を取ってればいい、のか……?

 こういう時の行動の正解が全く分からないなぁ……


 なんて考えながら情報収集を続け、こちらに駆け寄ってくる人影を三つほど見つけたのでリオンの傍に着地した。

 思ったより戻ってくるの早かったな。関所の人も昼休憩とかしてたのかもしれない。


「セルちゃーん!リオーン!どんな感じー?」

「まだ動いてないよ。地図ある?」

「あるよ、はい」

「ありがと……ここら辺に居る」


 差し出された地図にざっくりと丸を書きこんで位置を共有し、もう一度風から情報を拾う。

 動いては……いないな。なんかソワソワはしてるけど。

 関所の人が何やら魔道具を取り出しているのを見つつ、風を操作して少し上の方に持っていく。


 そんなことをやっている間に、関所の人が他の人を呼んだらしい。

 対応はそちらでやってくれるらしく、先に進んでしまっても大丈夫だと言われたので、予定とは少し違うところに移動して昼休憩を取ることにした。


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