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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
429/477

429,暇つぶしクエスト

 第一大陸のクンバカルナまで行く日程が決まって、出発まで数日を残したとある日、私とリオンは冒険者活動のために街に出かけていた。

 買い出しは昨日のうちに終わってしまって、今日はもう本当に暇で仕方が無かったんだよね。


 ロイとシャムはなんかやらないといけないことがあるらしくって、今日は学校で作業をしている。

 なので今日は二人だ。軽いクエストにするか、倒したことのある相手を選ぶか。

 その辺はクエスト一覧を確認して見てからかなぁ、なんて話しながらギルドに入ると、勢いよく人が近付いてきた。


「リオン!セルリア!いいところに来た!暇!?今日暇!?」

「シャウラさん!?暇ですけど、どうしたんですか?」

「よっしゃ火力持ち確保!いけるぞ!」

「シャウラさーん?説明くださーい?」


 あまりの勢いに思わずリオンの影に隠れたらシャウラさんの声がしたので、顔を出して相手を確認する。

 確かにシャウラさんだったけど、なんかテンションが可笑しいことになってるな?


 火力持ちって言ってたから、なんか倒しに行くんだろうけど……

 物理火力が欲しいのか、魔法火力が欲しいのかすら分からないな。

 あのテンションじゃあまだ説明は貰えそうにないし、落ち着くのを待とう。


「シャウラー。何倒しに行くかくらい教えろよ」

「何の火力が欲しいんですかー?」

「すまんな君たち。あいつ今テンションバグってんだ」

「お。ヴァルじゃん。お前も行くのか?」

「おう、まぁ俺は周りの警戒ついでについてくだけだよ」

「リオン、知り合い?」

「俺らの二個上。研究室同じだったんだ」

「なるほど」


 卒業した先輩なのか、なるほど。

 私の知り合いの先輩たちは大体皆フォーン以外に居るから会う事もあんまりないけど、リオンは割と知り合いがフォーンに残ってるらしいんだよね。


 長期休暇の時に一人で国に残ってるタイミングとかでその人たちと一緒にクエストに行くこともあったらしくて、今でも普通に交流があるって前に言ってた。

 リオンはそういう知り合いが結構いて、街中で声かけられたりもしてるんだよね。


「あいつもう手続きしに行ってるし、俺から説明だけしちゃうぞ。今回倒しに行くのはピケヌーグ。甲羅背負った魔物で、甲羅も中身も素材になるから現れたら倒したいんだよね」

「ぴけ……セル知ってるか?」

「甲羅が魔法耐性が高いから物理攻撃で壊さないといけなくて、甲羅の下は物理耐性が高いから魔法で攻撃しないといけない面倒なやつ」

「ほーん……だからシャウラあんなテンション上がってたのか」

「私たちで火力足りるのかなぁ」

「お前が壊せなかったら誰が壊せんだよ。ダンジョンより硬いもんなんて早々ねぇよ」

「確かに」


 そうだった。私は風でダンジョンを壊せる女。火力高めの魔法使いなんだった。

 ピケヌーグはめっちゃ硬くて面倒くさいって聞いてたから、その印象だけが強く残ってて自分の火力を考えるの忘れてた。


 甲羅の方はリオンがどうにかしてくれるでしょう。

 シャウラさんもそのつもりで声かけてくれてるんだろうし、シャウラさんから見て私たちの火力で足りるってことだよね。


「よーっし、行こう!」

「落ち着きなよ……」

「どこに居んだ?」

「イピリアの方向、外海側だね。結構近くに居ると思うよ」


 手続きを済ませて戻ってきたシャウラさんがそのままの勢いでギルドを出ていったので、その背中を追いかけながら脳内にざっくり地図を書いて目的地を確認しておく。

 外海側ってことは、イピリアに行くまでの道を半分くらい進む感じかな?


 それならそんなに遠くはないけど、お昼ご飯どうしよう。

 シャウラさんが先に行ってしまう気もするけど、後から追いつけるだろうし買ってから行く方がいい気もする。


「リオーン、お昼ご飯買っていこー」

「おう。ヴァルも先行ってていいぞ、後から追いつく」

「はいよー。ごめんねシャウラのテンションが可笑しいせいで」

「普段お世話になってますから、大丈夫ですよ」


 相当倒したかったんだなぁって感じのテンションだし、普段冷静な人のテンションが急に上がって暴走する状態は、家で見た記憶があるし最初以外はあんまり驚かないかな。

 あの状態で一人で行動してると何が起こるか分からなくてちょっと不安、ってくらい。その辺もシャウラさんなら最低限の理性は働きそうだし、先に行っててもらっても大丈夫だろう。


「私サンドイッチにするけど、リオンどうする?」

「俺も同じ店で買うわ。肉入ってるやつ」


 通りに出ていた出店でサンドイッチを買って、荷物に入れて門の外に出る。

 軽く風を回してみたら少し進んだところにシャウラさんの魔力を見つけたので、その方向に歩いて行く。


 追いついた後もしばらく歩いて、目的地に着いたのは太陽が真上に来た頃だった。

 ピケヌーグを探しながら辺りを探索して、痕跡を見つけたところでリオンの腹の虫が盛大に鳴り響いたので、続きはご飯を食べてから。


 昼休憩を挟んで先ほど見つけた痕跡を追いかけ、途中から私は飛んで上からピケヌーグを探す。

 結構大きいし、甲羅背負ってるから上からでも見つけやすいとは思うんだけど……

 どこに居るかなぁー。なんか木とか倒れてるし、ここら辺に居るはずなんだけどなぁー。


「あ、居た。居ましたよー、そこから右斜め前、二百メートルくらいです」

「はーい!リオン準備!」

「おう」

「じゃ、俺は周りの警戒してるから」


 見つけた大きな甲羅に一発印用の魔法だけ撃って、リオンとシャウラさんをそこまで誘導する。

 足元に風を起こしておいたので、リオンはそれに乗って勝手に加速するだろう。

 道中で倒し方というか、役割分担みたいなのは一応聞いてあるので私は一旦上の方で待機だ。


 風を起こして空をふわふわ漂っている間にピケヌーグの足元にリオンが到着して、剣を抜いてそのまま斬りかかった。

 太陽の光を反射して赤く光った大剣に魔力が薄く纏わされて、甲羅に当たって鈍い音を立てる。


 ピケヌーグの甲羅にはしっかりと斬られた跡がついており、リオンはそれを見て剣を振り上げた。

 振り下ろされるのと同時に火花が散って、どんな勢いで振り下ろされてるんだとちょっとビビって高度を上げてしまった。


「セルー!割れるぞー!」

「はやっ。ちょっと待って」


 大剣を鍛え直す前は、切れ味はあまり良くないけれど剣の重さとリオンの腕力で押し切っているって感じだったけど、鍛え直してからは大剣そのものの切れ味が上がったから、破壊速度がとんでもなく上がってる。


 硬いはずのピケヌーグの甲羅が数回の攻撃で簡単に破壊されて、中身が見え始めたので慌てて魔力を練り上げた。

 もう少し亀裂が広がったらそこに魔法を撃ち込むので、狙いやすい場所に移動もしないといけない。


 風と氷で魔法を組んで、狙いを定めて杖を構える。

 甲羅にでっかいバツ印を刻んだリオンがその印の前から退いたのを確認して、練り上げた魔法を撃ち込んだ。轟音が響く中で追撃の魔法を練り上げ、土煙が晴れるのと同時に二発目を撃ち込んだ。


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