427,平和な昼休み
昼食を食べ終えて、杖を揺らしながらいつもいる林の前に移動する。
後ろからはウッキウキなリオンがついて来ていて、足を止めたらすぐに横に並んできた。
なーんかキラッキラした目を向けてきてるなぁ。
「はいはい。行くよー」
「おう!」
手を出すとすぐに掴まれたので、風を起こして空に上がる。
昼食時に食堂で会ってすぐに飛びたい飛びたい言われたから早速飛びに来たわけだけど……本当にウッキウキだなぁ。飛ぶの好きだねぇ。
「そんなに飛びたかったの?」
「おう。全然風吹かねぇのすげぇ気になってたんだよな」
浮いた状態で風に座るように体勢を整えて、リオンの足元にも風を分厚く作っておく。
これで最悪何があっても落ちる前に拾い切れるでしょ。
なんて考えながらリオンを見上げると、リオンは心底楽しそうに空を眺めていた。
「ミーファと一緒にクエスト行ってたんだってね」
「おう。セル居ねぇのに討伐系行くの久々過ぎて動き忘れかけたわ」
「なんでよ。別に一人でも色々やってるじゃん」
「普段後ろ警戒してねぇんだよ」
「それは警戒しなよ」
「俺よりセルの方が気付くのはえぇだろ。なんかあれば流石に気付くし避けるわ」
まあ、私は警戒と中・遠距離攻撃が主な仕事だから、近距離攻撃のリオンとは見える範囲が違うのはそりゃあそうなんだけどさ。
それでもリオンは索敵範囲広いし、私より先に気付いてることもあるんだから後ろ警戒し忘れるは嘘だよ。
「セルはソミュールと話し出来たか?」
「出来たよ。……いや別に話すのメインで行ったわけじゃ……ある、のか……?」
「お前らが二人でどっか行くなら、なんか話してんだろ」
「そういう認識されてんだ?」
「いっつも空の上でなんか喋ってんじゃねえか」
「確かに」
まあ実際夢魔族の話とか魔石の話とか、色々話したもんなぁ。
一応名目としては「ソミュールがその後回復魔法を使えなくなるほどの力を使って治したものを見に行く」ってことではあったけど、あれは多分名目だけだもんなぁ。
なら確かに、ソミュールと二人でゆっくり話をするために遠出したと言っても過言ではない。
そういうところ、リオンはやたらと勘が働くよね。
二人で遠出する理由とか考えたりしたのかな?してなさそうな気がするんだけどな。
「んで、今度どこ行く?」
「どうしよっか。第六大陸行きたいとかの話もあったよね」
「雪だろ?俺行ったことねぇんだよな」
「そうなんだ」
「セルは行ったことあんのか?」
「うん。姉さまの知り合いが住んでるからね」
常冬の雪原に一軒家建てて住んでる人が居るんだよね。
ご夫婦とワンさんが二匹。でっかいワンコいいよね、会うたびにリセットされる距離感をジリジリ詰めていく感じも結構好き。
そして私がワンさんたちとの距離を詰めている間に、コガネ姉さんは雪に紛れ込んで見えなくなっているのが一連の流れみたいになってる。
姉さまは髪が黒いから、雪の中でも結構見つけやすそうだと思うけど、実際は何故か風景に紛れ込んでしまうので見つけにくい。
「リオン寒いの平気?」
「あー……まあ別に苦手意識はねぇな」
寒いの苦手なら、結構しっかり準備して行かないといけないんだよね。
まあ得意でも準備は必要なんだけどさ。ちなみにシオンにいは本気で寒いのが嫌いなので、第六大陸には付いてこない。
「ま、行くってなったらシャムかロイが要るもん指定してくれんだろ」
「丸投げじゃん」
「おう」
姉さまを思い出す丸投げ具合だなぁ。
丸投げされる側がそれに慣れきってるのもものすごく似てる。
そんなことを言いつつ私も最後は二人に任せるんだけどさ。
「……お?」
「誰か来た?」
「先生だな。そろそろ授業か?」
「あぁ、そうだね。降りようか」
「おう」
下を確認すると、緩く手を振っているノア先生が居た。
そろそろ午後の授業が始まる時間になりそうなので、風を踏んでゆっくり地上に降りる。
途中でリオンが飛び降りていったので、私も途中で風を霧散させた。
「こんにちは」
「はい、こんにちは。そろそろ授業ですよ」
「はーい。……私授業出てくるけど、リオンどうする?」
「俺も行ってくるわ」
「オッケー、じゃあまた夕食の時に」
「おう。じゃあなー」
私が向かう先は座学なので、基本座学には出ないリオンとは向かう先が違う。
杖を揺らしながら歩いて教室に向かい、一番後ろの席を陣取る。
前の方の席は二、三年生が使うからね。後ろの列なら空いてるので、四年生が座るのはそこになる。
必要な道具を机に並べて、人が揃うまでは本を読んでいることした。
あと十分くらいかな?それだけあれば、割と読めるかな。
昨日借りてきた本なんだけど、面白くて続きが凄く気になるんだよね。
隙間時間にもちょこちょこ読んでいるけど、夜とかにしっかり時間取って読みたいよね。
でも一気に読んでると時間忘れるんだよなぁ。普通に寝損ねそうで、夜ずーっと読んでるのはちょっと避けたい。
「お?セルリアだ」
「ジャンじゃーん。やっほー」
二、三ページほど読み進めたところで、横に人が座る気配がした。
声を掛けられたので顔を上げると、去年の授業でパーティーメンバーだったジャンが座っていた。
なんか久々に会った気がするな。一応月末には教室に皆で集まる事にはなってるけど、居ない人も多いからね。私もよく居なくなるし。
「なんか久しぶりだね。ずっと居なかった?」
「直近だと二十日くらい居なかったかな?そっちは遠出したりしてないの?」
「大陸外にはあんまり行ってないなぁ……一泊とかが多いかも」
「なるほど。基本一人?」
「ニアと一緒に行ったりもするよ。あと、フォーンに住んでる一個上の先輩とかとも行ってるかな」
そっか、フォーンに住んでるなら、先輩とかとも一緒に行けるのか。
私たちもシャウラさんと一緒にクエスト行ったりするし、それと同じことだよね。
それも楽しそうだなぁ。久々にシャウラさんにも会いたい。
なんて話している間にチャイムが鳴って、先生が教室に入ってきたので本を閉じて教科書を開く。
さて、久々の座学だ。ちょうど知りたかった範囲の歴史だから、ウッキウキで受けに来たんだよね。
楽しみだなぁ。ノートに文字をいっぱい書くのも久々だ。




