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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
421/477

421,二人だけの遠出

 朝、薄っすらと霧のかかった空を見上げて、のんびりと大通りを歩く。

 ソミュールと遠出をする予定を立ててから色々と準備をして、今日は出発日だ。

 私より早起きなミーファが出発時刻に鍵を開けてくれたので、ソミュールを着替えさせて用意されている荷物を浮かせて、ソミュール自身も浮かせて学校を出てきた。


 まだ朝も早くて食堂は開いていないので、朝ごはんとお昼ご飯は買って行くことになる。

 ちなみにソミュールは普通に寝ているからご飯はいらないらしい。

 なので買うのは自分の分のご飯。サンドイッチとかを適当に買って行こう。


「えーっと……あぁ、あれか」


 サンドイッチと飲み物を買って大通りを進み、事前に聞いていた乗合馬車を確認する。

 メモもちゃんと確認して、御者さんにも確認を取ったので中に座って出発時間を待つことにした。

 前に護衛をしたことがある乗合馬車とは違って、この馬車は途中の村には基本寄らずにムスペルまで行くらしい。


 馬車の中で荷物からクッションを取り出して座り、ソミュールを隣に座らせて頭が落ちないように体勢を整えさせる。

 ソミュールの座る場所にもクッションを敷いてあるし、いつも通り抱えている枕もあるからちょっとは快適なはずだ。


 モソモソ動いていたのが落ち着いたのを確認して、私は出発の前に朝ごはんのサンドイッチを食べることにした。

 美味しいなこれ。朝早い時間だからしっかり焼きたてだ。


「ふあ……ぁ……」


 ソミュールが欠伸を零して、ゆっくりと瞬きを繰り返している。

 ……起きるかな?まだ眠そうだけど。

 淡い色の長いまつ毛が揺れるのを眺めている間に瞬きの速度は遅くなっていき、再び蜂蜜色の瞳が隠された。


 まだ起きないようだ。まだ、と言っても今日起きるかがまず分からないけども。

 なんて考えている間にサンドイッチを食べきって、飲み物を飲んでいたら馬車が動き始めた。

 私たちの他に乗っているのは数人で、何となく距離をあけて座っている。


 このままのんびり馬車に揺られていることになるから、私は暇つぶしのために魔力で開閉する仕掛け箱をもって来ていたりするのだ。

 外から中身は弄れないから、魔力操作で中身操作しないと開かなくて、ついでに閉めると毎回鍵のかかり方が変わる。


 レプさんが手慰みに作ったものらしいんだけど、手慰みでこれが作れるってどういう事なんだろうなぁ。

 前に会った時に貰ったんだけど、朝とかちょっと暇な時に弄っていたんだけど、これが本当に良い暇つぶしになるのだ。


「……ん?」


 杖を抱えて箱を両手で持ち、中に魔力を流して動きそうな突起を探していたんだけど、何やら外から魔力が流れ込んできていることに気がついた。

 なんだろう、馬車の外からだし、悪意があるようにも思えない。


 ……ソミュールの方に流れてる、のかな?

 ソミュールはいつも通り眠っているし、これはいつもの事なのかもしれない。

 夢魔族のアレコレについてはよく分からないので、悪影響でもなさそうだし特に触れないでおこう。


 意識を手元に戻して、仕掛け箱の中に魔力を通す。

 ゆっくり時間をかけてやるものなので、横にいるソミュールの魔力にも意識を向けつつ箱の中の突起を引っ張ったり押し込んだりする。


 のんびりゆったり仕掛け箱を弄って、休憩時間には外に出て身体を伸ばす。

 そんなことを繰り返して馬車に揺られること一日、夕方にイピリアに到着した。

 この乗合馬車は、ムスペルまでの道中で一泊する宿も料金に入っているらしく、既に宿が予約されているから到着が少し遅くても大丈夫なんだとか。


「夕食どうする?」

「せっかくだし食べに出ようか。セルリアの入りたいところでいいよ」


 ちなみにソミュールは最後の休憩の後に目を覚まして、そのまま夜まで起きてられそうらしいので宿に荷物を置いて一緒に行動している。

 荷物も貴重品以外は馬車に乗せたままでもいいらしいんだけど、念のため宿に運んでおいた。


 イピリアの大通りを歩いて何となく気になったところに入って、二人前と書いてあるものを選んで注文する。

 これね、普段は二人前どころじゃ絶対足りないし、でも一人だと二人前じゃ多いしってのでちょっと頼みにくいんだよね。


 ソミュールはそれなりに量も食べられるので、ちょっと多くても大丈夫なのがとてもいい。

 足りなかったら追加をちょっと頼めばいいから、二人でなら丁度いいはず。

 こういう二人前料理、普段から気になってたんだよねぇ。


「お、いいねぇ、お鍋だ」

「はい取り皿。パンも頼んだからどうぞー」


 ぐつぐつ煮立った鍋が机の中央に置かれたので、一緒に頼んだパンと取り皿を渡しておく。

 わーい、熱々のマイルド系のお味の鍋だぁ!食べたかったんだよねぇ。

 家で時々出るんだけど、学校では出ないからときどき無性に食べたくなるのだ。


「野っ菜、野っ菜」

「セルリア、野菜好きだよねぇ」

「野営とかしてると生野菜食べれないじゃん?それでなんか食べれる時に食べとけ精神がムクムク育っててね」

「なるほどねぇ。ミーファも野菜いっぱい食べるんだよねぇ」

「ウサギだから……?」

「多分」


 でも確かにミーファはいつでも野菜をもりもり食べている気がする。

 普通にお肉も魚も食べるけど、それでも野菜を食べてる印象はあるんだよね。

 ちなみにリオンは肉を食べてる印象しかない。


「んま」

「鶏団子美味しーい」

「ん、これも美味しい。魚」

「わーい」


 お玉で美味しかった魚を掬ってソミュールの器に入れたり、野菜が美味しいので追加を頼んだりして存分にお鍋を楽しんだ。

 何なら最後に麺まで入れた。これ以上ないくらい鍋を楽しんでから宿に戻った。


 久々のお鍋楽しかったなぁ、なんて思いながらお風呂に入ったり髪を乾かしたりと寝支度を整えて、明日に備えて早めに寝ることにした。

 明日もそれなりに早い時間に出発だからね。


 ソミュールはお風呂から上がってすぐに力尽きたので、髪を乾かして布団に転がしておいた。

 宿に戻ってすぐに明日の着替えは出しておいてもらったし、荷物もまとめてあるので出発の時も問題は無いだろう。


「……私も荷物大丈夫だな、よし」


 ベッドに入る前に支度が整っている事を確かめて、杖を枕元に置いてベッドに潜り込んだ。

 普通に起きれる時間ではあるけど、いつもよりは余裕が無いからね。

 気を付けておくに越したことはないからね。


 馬車に座っているだけだったとはいえ、長時間座りっぱなしは普通に疲れがたまるので、ふかふかのベッドに潜り込んだらすぐに意識が落ちた。

 ……ベッドの質がいい。この宿いつもより高いところだな……?


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