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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
420/477

420,遠出の予定

 四年生も休み明けの流れは今までと変わらず、各種確認作業から始まった。

 いつも通り午前だけで終わった授業の後、私は特にすることもないのだけれど他三人は各自研究室に顔を出しに行くらしいので、集まったりはせずに個人行動をとっている。


 杖を揺らしながらのんびりお散歩していたら後輩たちと出会ったので、少し立ち話をしてそれぞれのやる事を邪魔しないように早めに別れた。

 明日から授業だし、後輩たちはやる事色々あるだろうからね。


 その後もお日様を浴びつつのんびり歩いていたんだけど、流石にすることが無さ過ぎるので部屋に戻ろうかな。

 建物の中に入ろうと移動を始めたら、正面からソミュールが歩いてきた。


「おはようソミュール」

「おはよぉ。セルリアどこか行くの?」

「いや、することないから部屋に戻ろうかなって。ソミュールは?」

「起きたら晴れてたからお散歩。……暇なら僕とお話しよ?」

「いいよ」


 確認作業中は寝ていた気がするから、終わってから起きてきた感じかな。

 ふんわり笑ったソミュールが魔力を練って空に上がって行ったので、私も風を作ってソミュールを追いかける。


 ある程度上がったところで止まったソミュールの横に並び、風の上に座るように体勢を整える。

 ソミュールはいつも通り枕を抱えて寝そべるような姿勢を取っていて、これは下から見たら意味が分からない光景だろうなぁ、なんてことを思った。


「セルリアは後期、何かすること決まってるの?」

「んー……行きたいところとかは考え始めてるけど、まだ何にも決まってないかな」

「そっかぁ。ねえ、セルリア」

「うん?」

「ちょっと、僕と遠出しない?」


 予想外の言葉に驚いてソミュールを見ると、彼女は悪戯っぽい笑みを浮かべていた。

 ソミュールが遠出するってこと自体中々驚きなんだけど、そこに私が誘われた理由はなんだろうか。


「……どこまで?」

「第二大陸、ビリジアン」

「ミーファも一緒?」

「ううん、二人で」

「……いいよ、いつにする?」


 分からないけれど、ソミュールが全く意味もなくこんなことを言い出す気もしないのでとりあえず了承しておく。

 ビリジアンか……行くの初めてだなぁ。モーブはイツァムナーまで行くときに通ったけどね。


「理由とか聞かないの?」

「んー……まあ、必要ならそのうち教えてくれるでしょ?」

「……んふふ、慣れてるねぇ」

「まあね」


 姉さまもなんだかんだ隠し事が多い人だから、そのあたりは何となく慣れてしまった。

 わざわざ誘ってきたのなら、ビリジアンに着いたら理由も教えてくれるだろうし、聞くのはその時でいいかなって思うんだよね。


 そんなことを言いつつ、緩く手を繋いで日程を決める。

 ソミュール的には早めの方がいいらしいから、準備を終えたら出発することにした。

 一週間以内、四日後くらいに出発かな?往復で多分二十五日くらい、長めに考えたら一か月ちょいくらいになりそうだ。


「馬車とか色々乗り継いでいくから、道は僕が決めちゃうね」

「うん、わかった」

「どうにか明日には予定渡すから……起きてこなかったらミーファに鍵開けて貰って」

「了解。じゃあ、また明日?」

「うん、また明日」


 話がまとまったので、どちらともなく地上に降りて繋いでいた手を放す。

 そのまま別れて、去っていくソミュールの背中を見送ってグーっと身体を伸ばす。

 夕食の時にでも、遠出してくるって言わないとだな。


 とりあえず私は部屋に戻って、足りていない荷物をリストアップしないと。

 明日は授業出たいから、買い物行くのは明後日になるかな?

 ついでに荷物の整理と詰め直しもしておこうかな。今からなら……まあ、充分終わるだろう。


「ふぁ……」

「眠そうだな」

「うわビックリした。リオンいつから居たの?」

「さっき。ソミュールと浮いてんの見えたからな」

「あー、なるほどね。研究室はもう終わったの?」

「おう。今日も駄弁ってただけだったわ」


 部屋に帰ろうと歩き出したところで急に声をかけられて、びっくりして足が止まった。

 振り返ったらリオンが居て、流れるように横に並んできたので特に気にせず歩き出す。

 リオンの所の研究室は遊び場系だから、行っても特にすることがあるわけではないんだったか。


「なに話してたんだ?」

「んー、遠出の予定について?」

「どっか行くのか?」

「うん。ソミュールと、ちょっと一か月くらい」

「ほーん……気を付けろよー」


 リオンが驚いたように目を見開いたのを横目に見つつ、杖を揺らして廊下を歩く。

 どこに行くのかとか、言っていいのか分からなかったから詳しくは言わなかったけど、リオンがあんまり突っこんで来なくて助かった。


 そのまま雑談しつつ足を動かして、部屋の前でリオンと別れる。

 部屋に入って時計を確認すると、時刻は五時半。

 夕食まではまだ一時間くらいあるし、さっさと荷物整理を始めよう。


 遠出用のカバンから荷物を取り出して並べて行き、全部出したらカバンをひっくり返して中に溜まった埃やらなんやらをかき出しておく。荷物は……一個ずつ確認しよう。


「野営とかするかな?……とりあえず準備だけしておけばいいか」


 使わなかったら使わなかったでいいから、準備はしておくべきだろう。

 馬車を乗り継ぐって言ってたし、ソミュールは基本的に村とかを経由して行くと思うんだよね。

 移動のために薬を飲むってなると絶対服用量が多すぎて体調に悪影響がでるだろうし、寝ていても平気なルートを選ぶはずだ。


「……あ、茶葉買いに行かないと」


 料理道具も使うかは分からないけど、私がお茶とか飲みたいし持っていく。

 持ち歩きように買った茶葉がもうかなり減っているから、これは部屋に置いて行って新しいのを瓶いっぱいに入れていこうかな。


 後は調味料の量や着替え、あったら何かと便利なでかめの布の状態なんかも確認して、ついでに外套もしっかり確認しておいた。

 晴れたら洗うくらいの気軽さで洗ってるから汚れてはいないけど、裾がちょっとほつれて来てるな。

 これは今日、夕食の後にでも繕っておこう。このくらいならそんなに時間かからないし。


「あれ?ロープ無いじゃん。何かに使ったっけ?」


 でかめの布と同じで、あったら何かと便利だからと入れていた太めのロープが、荷物の中から消えていた。

 記憶を掘り返した結果、そういえば前にでかめの魔獣を引き摺って運ぶのに使ったんだった、と思い出せたので、これも買い物リストにいれておく。

 その後も荷物整理を続けて、夕食の時間になってすぐに作業は終わった。


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