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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
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419,準備室の片付け

 杖を握って物を浮かせて、大量に散らばっている書類をどんどん集めていく。

 なーんで一か月でここまで物が散らばるのかなぁ……しかも書類ばっかりこんなに。

 一年生の書類が多めかな……?別に見てもいいらしいからちょっとだけ確認して、一応学年ごとに纏めておいた。


「ヴィレイ先生、その本を読み続けるつもりなら私は帰りますよ?」

「……悪かった」

「はい」


 とりあえず片付けたかった一角から物がなくなったので、浮かせていた書類の角を揃えがてら後ろで動きを止めていたヴィレイ先生に釘を刺しておく。

 なーんで人に片付けをさせておいて自分は本を読んでいるんですかね?


 釘を刺したらすぐに本を閉じてくれたので、これ以上は何も言わないですけども。

 本棚があるんだから本はそこに入れて欲しいけど、何故か本棚には別のものが置かれてるせいでそこをまずは片付けないといけないんだよなぁ……


「あ、ヴィレイ先生これ触って大丈夫なやつですか?」

「ん?……あぁ、これか。念のため触らない方がいいな」

「はーい」


 山積みになっていた書類を退けたら、底から何やら魔力を感じる本が出てきた。

 ここは魔術準備室なので、魔力を感じる物には迂闊に触らないで先生に報告するべきなのだ。

 魔力を感じなくても、ちょっとでも駄目な気がしたら先生に聞くのが吉でもある。その辺の予感は割と当たるからね。


 まあ、触ったら一発アウトなものとかは流石に置いてないらしいし、うっかり触れても平気っちゃ平気なんだけど……用心するに越したことはない。

 私は特に、変な弾き方したら余計面倒なことになるかもしれないし。


「……そういえば、ヴィレイ先生って休みの間どこか行ったりしないんですか?」

「何だ急に」

「いや、いつも学校にいるなぁって思いまして」


 前に学校外で会ったこともあるけど、その一回くらいしか外に居るのを見たことないんだよね。

 何かの対応のため、とか、そういう仕事以外に外でたりしないのかな。

 というか、フォーンの外に行くことはあるんだろうか。……無さそう。


「聞いておいて一人で納得するな」

「聞いた後に教えてくれなさそうだなぁって思ったんですよ」

「……国外に出るほどのまとまった休みは取れていないな」

「やっぱり。先生たちそのうち倒れちゃうんじゃないですか?」

「そうなる前にどうにかする。実際、来年から教師が増えるからな」

「あ、そうなんですね。入れ違いだ」


 残念だなぁ、新しい先生が来るならその授業も受けたかった。

 まあ、研究職の方の先生だったら受けれる授業もあんまり無いし、関係ない可能性もあるか。

 今年からだったとしても受けれる授業は少ないしね、これはもう仕方ない。


「今後数年のうちに、ほとんどの科目に対して二人以上の教師がつくようになる予定だ。魔術などのそもそも受ける者が居ない科目はそのままだがな」

「なるほど……今って、先生たちみんな二科目くらい持ってますよね?」

「そうだな。新しい教師に関しては、一科目を十分に教えられれば採用を検討することになった」

「人手が増えるのはいいですねぇ。というかむしろ今までが人数少なすぎたのでは?」

「新しく大掛かりな組織を作ったのだから、初期の動きはどうしても慎重になる。悪意のある者を探し出して退ける手間もあるからな」

「十年は初期の段階なんですね……確かにケイさん大変そうだったなぁ、やりたいから頑張るって言ってたけど」

「そうか。他では気を付けているのだろうが、あまり国王を気軽に呼ぶものじゃないぞ」

「はーい」


 姉さまがケイさんって呼ぶから、どうしても釣られちゃうんだよね。

 カーネリア様はカーネリア様って呼ぶから特に気を付けることも……あるにはあるけど、まだ大丈夫なんだけども。


 まあそれはともかく、先生の人数が増えて先生たちに余裕が出来るのはいいことだよね。

 この準備室がこんなに取っ散らかってるのも、片付ける時間が無くて次の仕事が来るから、ってのも大きいと思うし。


「……え?なん、茶葉……?」

「まあ、茶葉ではある。そこにあったのか」

「ヴィレイ先生は整理整頓の能力が無いだけで、部屋の中で生ごみを生成したりはしないって信じてたのに……」

「ここで飲み食いはしていない」

「でしょうね。出来るスペースありませんもん」


 睨まれたって怖くないんだよなぁ。

 一年生の頃ならともかく、今はもうそのくらいでビビったりしませんよ。

 なんて考えながら出てきた瓶を先生に渡して、どうにか片付いた棚に物を収めていく。


 この前片付けた時は授業で使うものを箱に纏めて入れておいたんだけど……あれはもう使われたのかな?

 とりあえず木箱を収められるスペースは開けておいて、瓶やらなんやらをしまっておこう。


「インク瓶動かしますねー」

「あぁ」


 棚の前が片付いて棚に物を入れられるようになったら、今度は机の上を片付けていく。

 作業の為なんだろうけど、ここだけはいつも一定の空間が保たれてるんだよね。

 まあ、とはいえ机の六分の一くらいしか空いてなくて、前も横も書類やらなんやらで壁が出来てるんだけどさ。


「本棚開きました?」

「開いた」

「はーい」


 今回ヴィレイ先生には何よりも先に本棚を片付けてくれと言っておいたので、ここに積み上げられている本もそっちに入れていく。

  あっちの棚は前に片付けてから変化がなさそうだから放置かな。


「その書類は貰っていく」

「はーい。絶対もう要らない書類混ざってるので、要るやつと要らないやつ分けてください」

「分かった」


 本棚を開放することに成功したヴィレイ先生が、私が浮かせていた大量の書類を持って魔術教室の方に去って行った。

 風の上がスッキリしたので、机の上の物を風に乗せつつどんどん物を動かす。


 収める場所が決まってる物はさっさと片付くからいいね。

 まあ、片付ける場所が決まってる物は最初からそこに入れてくれとも思うけどね。

 書類系はもう全部まとめて先生のところかな。机の上にあった書類を纏めて浮かせたら、そのまま魔術教室に運ぶ。


「先生、書類追加です」

「そこに積んでおけ」

「はーい」


 積み上がった書類を分けていた先生に声をかけて、示された場所に書類を置いておく。

 もう半分くらい終わってる……?この人本当に仕事速いな、片付け出来ないけど。

 この感じなら、とりあえず準備室中の書類を集めて来た方がいいかもしれない。


 床にも散らばってるから、部屋中一旦風を吹かせよう。

 わー、棚の下にも落ちてるよ……落ちた書類がいい感じに滑り込んじゃったんだろうなぁ。

 ……これで全部かな?じゃあこれはヴィレイ先生の所に持っていって、私は片付けを続けよう。


 この調子なら昼前には終わるだろうし、午後は何するか考えないと。


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