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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
415/477

415,あとは帰るだけ

 リオンが雪の上を進む用に風を起こして、雪の上に一本道を作る。

 作るのと同時にリオンが上を通って行くので、もう一度弾かれた時のためにリオン回収用に別で風も起こしておいた。


 そこまで準備を終えたところでリオンがボスの真横に到着していた。

 大きく剣を振りかぶって、胴体の中央に向けて思い切り振り下ろす。

 先ほど弾かれた攻撃と大体同じ動きだけど……今回は弾かれることなく、しっかりと傷をつけた。


「くそ、浅ぇな」

「でも斬れたね。それ何の魔法?」

「炎らしいぞ」


 炎なのか。周りを雪とかで埋めてるし、なんかそういう魔法かと思ったんだけど……

 確かに言われてみれば、リオンが居るあたりは段々雪が融けていっている。

 あんまり降らせても邪魔になりそうだし、しばらくはこのままでいいかな。


 リオンはもう一回攻撃に行くみたいなので、私は足元に風を撒きつつ角への攻撃を再開することにした。

 後ろの方ではシャムとロイが何かやってるみたいだし、私とリオンに攻撃が向くようにしておきたいんだよね。


「さて、と。疾風よ、刃と成れ」


 同じ魔法を同じように作って、今度はリオンと対角に位置取るように意識しつつ魔法を放っていく。

 ガンガン音が鳴ってるからいい感じに当たってはいると思うんだけど……ずっとやってたら角が取れたりするのかな?


「……お?なんか変わってねぇか?」

「何が?」

「気配……っと、あぶね」

「ほんとだ。さっきより激しめに暴れてる」


 三発ほど攻撃を胴体に当てていたリオンが足を止めたので傍によると、ボスが咆哮と共に動きを活性化させ始めた。

 雪の足止めはあんまり意味がなさそうな感じになってきてるけど、もう一回撒いた方がいいかな?


 杖を回しつつ考えていたら、視界の端で光りが点滅した。

 何かと思ったら、灯り兼会話用の魔法が光っている。

 これは……多分呼ばれてるな。ロイたちどこだろ。


「セルリアはシャムの方に、リオンは僕の方に来て」

「はーい」

「おう」


 いつのまにやらロイとシャムも別行動だったみたいだ。

 一度浮き上がって場所を把握して、足止めに風を吹かせてからシャムの所に降りる。

 おお、なんかすごい複雑な魔法が組まれてる……何だろうこれ、攻撃魔法じゃない事しか分かんないや。


「セルちゃん!これ広げられるかな?」

「多分出来るけど……大きさどのくらい?」

「キングホーンがすっぽり入るくらい!」

「オッケー」


 角から尻尾まですっぽりってなると、それなりの大きさになりそうだ。

 目安は私が撒いていた雪の範囲くらい、かな。

 あれもかなり融けてしまっているけど、外枠が残っているから分かりやすい。


「ここからは一気に終わるよー!」

「そうなの?」

「そう!これは魔力の反復と反射の魔法なの。キングホーンは角が壊れる時に、それまでに受けた魔力を一気に放出するんだけど、それを閉じ込めて中で反射させまくるための魔法!」

「なんかとんでもない事言ってる気がする……シャムそんな魔法も使えるんだね」

「ダンジョン攻略だから補助の魔法陣持ってきたんだー」

「え……えらい……」


 話しながら魔法の拡張を終えて、出来上がったものを壊さないように運んでボスの足元に敷きこむ。

 ……うん、ちゃんとすっぽり収まってる。

 これ、範囲外に出ないように足止めした方がいいかな?


「ローイ!終わったー!」

「了解。セルリア、そのまま足止めをお願い」

「はいよー」

「リオン」

「おう、あそこだな?」


 角の破壊はリオンの役目みたいだから、私は言われた通り足止めに徹する。

 ついでに首の向きまで固定してみようかな。

 おら、動くなおら。その程度の動きで私の風を壊せると思うなよ。


 動きを固定しながら魔法を組んで、がちがちに固めていく。

 まあもうリオンが走り出してるから、そんなに抑える時間も無いんだけどね。


「セルちゃん、合図と同時に魔法といてね」

「分かった」

「当たるよ。せーの!」


 シャムの声に合わせて杖で思い切り地面を叩いて魔法を一気に全て霧散させ、一気に操作するのに集中して無意識に止めていた呼吸をゆっくりと再開する。

  顔を上げるといつのまにやらロイとリオンが傍に来ていて、部屋の中央では自分が放った魔力にボコボコにされているボスがいた。


「わお」

「とんでもねぇなあれ……」

「後は待ってれば終わるよ!もうすぐじゃないかな」

「準備してきて良かったね。普通に戦おうと思うと面倒なんだ」

「そうなの?結局私雪と氷降らせて風で角殴ってただけなんだけど……」

「俺も胴体狙ってただけだぞ?」

「キングホーンが動けないレベルの雪と氷は普通出せないよ」

「その中を動き回って攻撃を出来る人も早々居ないんだよ」


 まだボスが居るのにのんびり話す余裕が出来るような事前準備を何食わぬ顔でやってる人も、中々居ないと思うけどね。

 私とリオンがとんでもないことしてるんだよ、みたいな顔してるけど、二人が居なかったらそもそも雪撒かないからね?


「……お?終わったか?」

「終わったみたいだね、反響しなくなってる」

「じゃああの魔法を解いて核を壊そうか。そうしたら後は地上に戻るだけだ」


 シャムと一緒に残っている魔力の残滓を片付けて、部屋の中央に現れているダンジョンの核を見る。

 キラキラと輝く立体のひし形が、ゆっくりと回りながらキラキラと輝いていた。

 色は紫だけど、色の濃さが結構違くて、液体が揺れるように色が変わっている。


「あ!角ある!やったー!」

「これ持って帰るの?」

「うん!結構高値で売れるし、武器の素材にもなるよ。リオン武器強化したいって言ってたし、材料にする?」

「おー、そうだな。砕いて混ぜんのか?」

「そうだね、剣も一回溶かして打ち直すことになると思うけど……」

「後期始まる前にやるかー」


 シャムとロイが素材の回収をしてくれたので、リオンの大剣に風を纏わせて核を壊してもらった。

 剣が当たったところからヒビが入り、一気に粉々に砕けた。

 それと同時に溜まっていた魔力が一気に霧散して風が吹き、ダンジョン内の空気が少し変わった気がした。……よし、これであとは帰るだけ、気は緩められないけど、とりあえずひと段落だ。


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