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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
411/477

411,姉さまが使っていた道具

 夜、部屋でのんびり荷物整理をしていたら、静かに扉がノックされた。

 返事をすると、そっと扉が開いてコガネ姉さんが顔を出す。

 こんな時間に姉さんが来るなんて珍しいな。


「どうしたの姉さん」

「主が昔使っていた道具で便利なのがあったから、渡しておこうと思って」


 姉さまが旅をしていた頃の道具はもう結構貰っていると思うんだけど、まだ何かしら出て来るものがあったのか。

 まあ、姉さまも世界中巡ってたんだもんね。色々便利道具も持っていたんだろう。


「これ」

「……皮の、袋?」

「うん。これとセットね」

「腕輪?」


 渡されたのはこげ茶色の小さな袋と、大きな飾りがついた銀の腕輪だった。

 セットと言われても、全く関連性が見えないんだけど……腕輪を入れるための袋、ってわけじゃないんだよね?


 腕輪も何か魔力を感じはするけど、何か分かるほどの強さじゃない。

 分からないので受けとりつつコガネ姉さんを見上げる。

 す、と指さされたのは皮袋の方だったので、とりあえず腕輪は膝の上に乗せて袋を手に持った。


「そっちはお財布だね」

「あ、お財布なんだ。普通の袋に見えるけど……」

「中にお金を入れて、魔力を込めて紐を閉めると同じ魔力を込めないと開かなくなるの」

「鍵付き皮袋ってこと?」

「そう。腕輪はその袋を探す用。盗まれても開けられないから、腕輪で探して回収できる」

「なるほど、便利」


 試しに手元にあった銅貨を一枚入れて袋を閉めてみると、本当に袋が開かなくなった。

 魔力を込めて紐を引くとスッと開いたのでちょっとびっくりだ。

 しかもこれ、すっごい耐性高い魔獣の皮じゃない……?


「セルリアはお金を持ち歩くのに抵抗があるかもしれないけど、持っておいた方がいい時もあるからね」

「うん……これなら、まあ、ちょっと安心かも……」

「それ全部置いて行くのはやめなね」

「はーい……」


 私が今回帰省した理由の一つに「稼いだお金を安全な自分の部屋に置いておく」って言うのがあったんだけど、コガネ姉さんにはバレていたみたいだ。

 確かにあった方が都合がいいこともある、よなぁ……


「あ、腕輪は袋を閉じた時と同じ魔力を通さないと反応しないから、普段はつけなくても大丈夫」

「分かったー。……でも付けてた方が安心か。……お、意外と大き目」

「主は普段二の腕あたりにつけてたよ。調整も出来るから、好きな所に付けな」

「はーい。私も二の腕にしとこうかな……」


 調整は……ここか。左手には杖固定用のブレスレットがあるから着けられないけど、右手に付けてもいいのか……

 いや、もう固定用の真上に付けてもいいのでは?服で見えないし。


「じゃあ、おやすみ」

「おやすみなさーい」


 部屋を出て行った姉さんに手を振って見送り、寝る前に非常用のお金を入れて魔力を込めておく。

 よし、これでオッケーかな。あとは忘れないようにどこか入れる場所を決めておかないと。

 財布とは別にしておいた方がいいから、貴重品入れとは別のところだよなぁ……


 どこにしよう。普通に荷物の一番下とかに入れておけばいいかな?

 質の良い皮の袋ではあるけど、それだけだからね。

 ぱっと見では分からないし、それでもいい気がする。


「……あ、二枚底とかにして下の方に入れておこうかな?」


 良い考えな気もするけど、それだし大事なものだと大声で言っている感じがしてどうだろうなぁとも思う。

 ……とりあえず普通に荷物の底の方に入れておけばいいかな。


 ゴソゴソとカバンの中を弄って、下の方に袋を入れる。

 ついでに紐と中の布をピンで止めて、どこかに行ったりしないようにしておく。

 よしよし、一目惚れして買ったはいいけど使いどころがなかったピンも使えたし、いい感じだ。


 満足したのでカバンを机に置き、ベッドで横になる。

 明日は早めに起きて荷物の最終確認もしたいから、さっさと寝てしまおう。

 まぁ、何時に寝ようが大体日の出くらいに起きるんだけどね。




 何時に寝たのかは覚えていないけど、いつも通り朝日を浴びて目が覚めた。

 時計を確認して、欠伸を零しつつベッドを降りる。

 モソモソと着替えて髪を梳かし、昨日着けてきた髪紐を持って部屋を出た。


「おはようセルちゃん」

「おはようウラハねえ」

「セールちゃん。おはよぉ」

「シオンにい。おはよ、髪結んでー」

「ええでー」


 リビングに入るとすぐにウラハねえがこちらに気付いて、それに反応したのかソファに居たらしいシオンにいが身体を起こした。

 髪紐を片手にシオンにいの前に腰を下ろすと、流れるように髪を結んで貰えた。


 昔からこうやって髪を結んでもらってたから、ソファスペースには櫛が置いてあったりする。

 姉さまが気まぐれにコガネ姉さんの髪を梳かし始めたりもするし、ウラハねえが姉さまの髪を結び始めたりもするからね。


「ほい、出来たでー」

「ありがとう」


 結んでもらった髪を確認して、一旦客間の方に行くことにした。

 ロイはもう起きてるだろうし、今日は朝ごはんの手伝いもいらなさそうだからね。

 そんなわけで外に出て、客間を見ると丁度ロイが出てきた。


「おはよう」

「おはよー。……それなに?」

「これは昨日ウラハさんに借りた本。読みたかった章は読めたから、返しておこうと思って」

「ほえー」


 分厚い本だなぁと思ったら、ウラハねえのものだったらしい。

 まあ、ウラハねえの本棚には何故かシオンにいの本も入っているから、どっちのかは分からないけどね。


 本は風に乗せて、窓から部屋の中に入れておいた。

 シオンにいが気付いてくれたみたいだから、多分そのままウラハねえに返却されるだろう。

 その後朝ごはんが出来るまで、のんびり湖の周りを散歩する。


 途中でミーファも合流してのんびり歩いていたらいい香りが漂ってきて、それに釣られるようにして朝ごはんの支度を手伝って客間に運んで、先に朝ご飯を食べることにした。

 食べていたら魔力が飛んできたので杖を握って、キッチンから客間までの風の道を作る。


 お。お茶だ、やったー。

 ちょうどシャムが起きてきたし、この感じならそろそろリオンも起きるかな。

 休みに入ってから皆で朝ご飯を食べる事ってなかったから、久しぶりでちょっと楽しいな。


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