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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
406/477

406,市場の魔道具

 朝日が枕元に差し込んできて、その明るさで目が覚めた。

 身体を起こして目を擦り、少し考えてからあぁ、宿かと思い至る。

 昨日から長期休みに入ったから、宿に泊まっているんだった。


 宿に来たのは夕方で、その後は皆で夕食を食べて各自部屋に戻ったからまだ宿の中をしっかり見れてないんだよね。

 ヴィレイ先生の手伝いはどうにか日が沈むまでは終わったけど、普通に疲れてて夜はすぐに寝てしまったのだ。


「ふ……あぁ……」


 欠伸を零しつつベッドを降りて、荷物の中から着替えを引っ張り出す。

 着替えて髪を纏めて、魔法で水を作って顔を洗えば準備は粗方完了だ。

 今日は割と天気も良さそうだなぁと窓の外を見ていたら、部屋の扉がノックされた。


「おはようロイ」

「おはよう、セルリア。散歩に行かない?」

「行くー」


 軽装のロイについて行き、宿を出て静かな住宅街を進む。

 朝の風は気持ちがいいねぇ。なんだか魔力が混ざってる感じもするけど、悪い感じじゃないから無視してもいいかな。


「今日は何するか決まってるの?」

「リオンがいつ起きるかにもよるけど……軽いクエストでも受けに行こうか」

「はーい。ダンジョンってどうする?」

「そうだね……色々と準備をして、深めの所を攻略しに行ってもいいかなと思っているけど」

「日差しの位置がわかる時計とか欲しくなるなぁ。探してみようかな」

「行ってみる?今なら市場もやってると思うけど」

「軽く行ってみようか」


 目的地が決まったので行き先を変更し、住宅街から市場の方へ移動する。

 段々賑やかになっていく通りを眺めながら、漂ってくる魔力を感じて杖を握り直し、少しだけ風を作って自分とロイの周りに薄く纏わせた。


「どうしたの?」

「流れてくる魔力が多いから、何かあった時に弾けるように」

「なるほど……?影響が出ることがあるんだ?」

「うん。色々流れてるから、酔うかもしれないし」


 普段魔力で酔わない人でも、一気にいろんな魔力に触れると酔ったりもするんだよね。

 ちなみに私は酔いやすい方で、姉さまも酔いやすい方だったりする。

 逆に全く酔わないのがトマリ兄さん。他が全員酔うような魔力量が押し寄せてきても、一人だけケロッとしていたりする。


 本人曰く、闇第三種は他の魔力への耐性が高いらしい。

 影の中に入れるからなのか、全部沈めてしまえるから平気なんだとか。

 三種が一番耐性高いけど、闇属性のそもそもの耐性が高いって言っていた記憶がある。


「お、それっぽい出店あるよ」

「本当だ。結構古い魔道具もあるみたいだね」


 市場に入ってすぐに目的の魔道具屋を見つけたので、とりあえず寄って行って並んでいる物を確かめる。

 職人さんが作ったっぽい魔道具から、ダンジョン産らしいものまでさまざまだ。


 時計型っぽいのはぱっと見ないけど、魔道具は見た目だけじゃ分からないからね。

 目的のものの他にも気になったものは見ていき、一つの出店を見終わったら次の出店を探す。

 一応シャムが起きるだろう時間には宿に戻るつもりだけど、ちょっとくらい遅くなっても大丈夫ではあるのでのんびり見よう。


「……お?ロイー、これそうじゃない?」

「あぁ、そうだね。ただ……」

「それに目をつけるたぁ、嬢ちゃんお目が高いねぇ!そいつは珍しいもんでな、第一大陸で見つけてここまで持ってきたんだよ。良かったら手に取って見てみるかい?」


 出店を覗いた時はこっちをチラッと見ただけだった店主が、急に勢いよく話しかけて見ていた魔道具を差し出してきた。

 それと同時か少し早いくらいでロイに手を引かれ、誘導されるままロイの後ろに回る。


「すみません、今回は遠慮しておきますね」

「そ、そうか。残念だ」


 ロイに気圧されたのか静かに座り直した店主を眺めていたら、ロイに背中を押されて人混みの中に入った。

 そのまま少し人混みの中を歩き、気付けば市場の通りの入口あたりまで来ていた。……そろそろ教えて貰える感じかな?


「質の悪い呪いだね」

「あ、呪いなんだ。あの魔道具?」

「うん。元々のものか、後から呪われたのかは分からないけどね」

「そこに差ってあるの?」

「解呪の方法が違うかな。後は強さとかも違うね」


 立ち止まってロイを見上げていたらそっと背中を押されたので、素直に従って歩き出す。

 こっちは宿の方向のはずだから、そろそろ帰るみたいだ。


「あの魔道具を受け取ったら呪われるの?」

「触るだけなら大丈夫かもしれないけど、一度受け取ったらあの人は返品を受け付けなさそうだったから。手放せば自分は逃れられるんだろうね」

「ほう……?じゃああの人も誰かに押し付けられたんだ」

「多分。かなり古い物だったから、巡り巡ってるんだと思うよ」


 なんだか大変みたいだけど、私が受け取って呪われていたらもっと大変な目に合っていたと思うから、あの人はロイに感謝してほしい。

 下手すると呪いが跳ね返ったうえでドラゴンのお怒りまで降ってくるからね。


 どんな呪いなのかは知らないけど、どんな呪いであっても跳ね返すと威力が上がるらしいし、返る先は道具じゃなくて人だろうし……

 うっかり呪われても私は家に帰ればどうにかなる手段があるけど、最上位ドラゴンの加護とかあるしなぁ……多分跳ね返してただろうなぁ……


「さて、朝ごはんはどうしようか」

「買って行く?リオンはまだ起きてないだろうし」

「起こして食べに行ってもいいけど……とりあえず一度戻ろうか」

「はーい」


 シャムがどれくらい覚醒してるかも分からないし、一回戻った方が確実なのは確かだ。

 一回リオンを起こしてみて、起きるならそのままクエストに行ってもいいし、起きないならとりあえず朝ごはんだけ食べて戻ってくればいいからね。


「リコリスに遊びに行く日も決めないとね」

「そうだね。出店日は分かるし、みんなが居る日がいいけど……」

「決めたら連絡すればいいのかな?」

「連絡はしなくても、姉さまが誰か来そうだなぁーって察すると思うよ」

「……アオイさんのそれは、何由来の能力?」

「分かんない。お師匠さんの所に居た時から来客予想は得意だったらしいよ」


 これに関しては本人もコガネ姉さんも分からないって言うんだから、本当に誰にも分からない謎能力なのだ。

 なーんでそんなこと分かるんだろうね?不思議だね?


 まあ、独立してリコリスを建ててからはあんまり使いどころがなくなったらしいけど、でもあの森の中に人が来るかどうか分かるのって便利だよね。

 そんな話をしながら宿に戻り、それぞれシャムとリオンを起こしに行くことになった。

 シャムは一応着替えは済んでたけど……目は覚めて無さそう。すっごい船漕いでる。


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