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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
404/477

404,休みの予定

 窓の外で雨が降っているのを聞きながら、手元に広げた紙を眺める。

 ここ最近のクエストでの収入と旅費だったり買い物だったりで使った分を纏めてみたんだけど、思ったより稼いでるし思ったより使ってるんだよね。


 ちまちま蓄えていたお金も数えてみたら結構あったし、そのうち安全な保管場所に入れに行かないといけないなぁ。

 そうなると結局家に置いておくのが一番なんだよね。


「……あー、今回の休みどうしようかな」


 今までは一応毎回帰っていたわけだけど、今回は帰らずにリオン達と一緒にクエストなんかをこなしていようかと思ってるんだよね。

 まだ手紙は書いてないから変更は出来るんだけど、帰らずにクエストこなしてる方が色々出来るしなぁ……っていう思惑もあって、帰るつもりはない感じだ。


 お金だけ出店リコリスに預けて部屋に置いといてもらおうかなぁ。

 多分シオンにいあたりが私のお小遣いの置き場所把握してるだろうし、そこに置いといてって言えば置いといて貰える気もする。


「……あ、一日だけ遊びに行こうかな」


 そういえばリオンに「出店リコリス引けるかなチャレンジ」してほしいなぁとか思ってたし、みんなで遊びに行こうって誘えば大体解決するんじゃないかな?

 後でロイたちに確認してみよう、と決めて紙を机に置く。


 外はまだまだ雨が降っていて、これでは明日になっても止むかどうか分からない。

 雨だったら明日の攻撃魔法の授業は室内になるから、派手なことは出来ないな。

 まあちょうど新しく覚えないといけない魔法もあるし、明日は演唱だけでもいいんだけどね。


「んー……明日どうしよっかなぁ、一限出てもいいけど……」


 ぼんやり独り言を呟きながら時計を確認して、ちょっと考えてから時計を懐に入れて杖を持つ。

 そろそろ夕食の時間だし、ちょっと早いけど移動してしまっていいだろう。

 座って待ってればリオンが辺りすぐに来るだろうから、そんなに暇も持て余さないと思うんだよね。


 それに、学校の食堂って結構色んな人が居て色々聞こえてくるから楽しいし。

 最初の頃は余計なことまで聞こえてくるからちょっと苦手だったけど、今はほとんど聞こえなくなったし下の学年の噂話とかってここくらいでしか聞けないから、耳を澄ませていると楽しいんだよね。


 今日は何が聞けるかなぁとちょっとワクワクしながら食堂に入って、いつも座っているあたりに腰を下ろす。

 杖を少しだけ揺らして小さく小さく風を起こして周りの音を拾い、噂話っぽい物を選んで聞いていく。


「あれ、セルリア?」

「ロイだ。やっほー」

「セルリアもお腹空いたの?」

「暇になったから噂話でも聞いてようかと思って。ロイはお腹空いたんだね」

「午後ずっと調べ物してたら、流石に疲れたしお腹も空くね。面白い話は聞けた?」

「なんか林のあたりで突風が吹くらしいよ。怖いねぇ」

「……ふふ、そうだね」


 そんな微笑ましそうに見ないでよ。その突風が私とは限らないでしょうが。

 杖新調するために二か月くらい居なかったんだから、自然の突風かもしれないでしょ。

 確かに普段から林の前で飛んでたりはするけど、別に突風って程の風は起こしてないし。


 今年は入学の時期に現れがちな、やたらと絡んでくる人もいなかったから、別に後輩をそよそよして差し上げたりも無かったし……本当に私ではないんだと思うよ。

 ただ、私が三年間ずっとあの場所で風を吹かせていたから、ちょっとくらいは影響あるかもしれないけどね。


「お?早えなお前ら」

「リオンだ。やっほー」

「早いね。お腹空いたの?」

「おう。そろそろ時間だろ?」

「そうだね。場所取ってるから先行っておいでよ」


 時計を開いて時間を確認すると、ちょうど夕食の時間になっていた。

 これから人が沢山来るだろうし、一人はテーブルに残った方がいいだろう。

 私は特別お腹が空いてるわけじゃないから後でいいや。シャムが来るかもしれないしね。


「いってらっしゃーい」

「おう。ついでに奥まで見てくるわ」

「おねがーい」


 私いっつも奥の方まで見ないで皿がいっぱいになっちゃうんだよね。

 リオンは大体奥まで網羅してくるから、先に行ってくれると私が好きそうなものがあった時に教えて貰えるのだ。


 リオンを腹ペコのまま待機させるのも忍びないし、基本的に席を取っておく時は私とシャムが残りがちだったりする。

 外で食べる時は私とロイが残って、先にリオンとシャムに行ってきてもらうことが多いけどね。


「あ、セルリア先輩だ!」

「やっほーグラシェ。……いっぱい食べるねぇ」

「食堂のご飯は美味しいからね!先輩は今一人?」

「席取り中なの。そろそろ戻ってくると思うよ」

「そっかぁ。あ、セルリア先輩明日の攻撃魔法来る?」

「多分行くよー」

「やったー!」


 誰かと一緒に食べる予定だったのか、元気よく去って行ったグラシェを見送って杖で軽く床を叩く。

 噂話を聞くのに作っていた風を霧散させて正面を向き直ると、山盛りの皿を抱えたリオンがちょうど座るところだった。


「奥の方にサラダ何種類か置いてあったぞ」

「お、探してこよー。ありがとね」

「おう」


 リオンと入れ替わるように席を立って、途中ロイとすれ違いつつ自分の夕飯を確保しに行く。

 しっかり奥まで確認して夕飯を選んで席に戻ると、既にシャムも来ていて私の席だけが空いていた。

 食堂は広いし人も多いからね、同じタイミングで行動してないと居るかどうかって分からないんだよね。


「あ、セルちゃんもミートボール持ってきてる」

「美味しそうだったから……リオンのミートボール量多くない?」

「美味そうだったから」


 同じ料理を持ってきたはずなのに、あまりにも量が違うんだけど。

 リオンの方は取り分ける前だって言われてもちょっと信じそうなくらい盛られている。

 それでも私が取りに行った時にまだまだあったから、食堂で毎食どんだけの量が作られているのかを考えてしまってちょっと怖くなるよね。絶対大変。


「……あ、そうだ。休みの事なんだけどね」

「おう。セルはどうすんだ?」

「私も今回はフォーンに残ろうかと思うんだよね。シャムとロイは?」

「僕は一回村に顔を出しに行こうかな……いや、でもそうしたら引き留められそうだし……どこかのタイミングで、村を通過する感じにして顔出そうかな」

「ロイの育った村訪問?楽しそう!」

「シャムはどうすんだ?」

「フォーン残るよー。数年帰らない程度じゃ何も言われないし」

「時間感覚の差を感じるなぁ」


 なるほど、今回は皆残るのか。確認も出来たし、後は家に一泊くらいで遊びに行かないか聞いてみよう。そのあたりの予定が決まれば姉さまに手紙でお知らせ出来るからね。

 学校生活最後の休みだし、色々やりたい事は盛沢山だ。


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