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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
402/477

402,くつろぐ場所が猫

 ダンジョンの壁をぶっ壊した翌日、ウッキウキでノア先生に報告に行ってひとしきり一緒にはしゃいで、午後はヴィレイ先生の手伝いをしながらウッキウキで報告をした。

 遂にダンジョンを壊す女を自称出来るようになったぞー!やったー!


 と、そんなテンションで放課後まで過ごし、放課後はいつもの場所でゆったり風を回して過ごしていた。

 浮いてのんびり風に吹かれていると、流石に気分も落ち着いてくる。


 そのまま低空をフラフラしていたら木の上から視線を感じて、目を向けると黒猫が一匹こちらを見ていた。

 ……ひっさしぶりに会った気がするなぁ。


「やっほーイザール。久しぶり」

「久しぶり、先輩。もしかして最近学校居なかった?」

「ちょっと前に帰って来たけど、その前は二か月くらい居なかったかな」

「……杖変わってる?」

「うん。折れたからね」


 木の上で器用にくつろいでいたイザールが、私が持っている杖を見て目を丸くした。

 高さを調整して寄って行き、尻尾で器用にバランスを取っている様子を眺める。

 こういう所を見てると、やっぱり猫だなぁって思うよね。木の上でくつろいでるのなんてイザールくらいしか見ないもん。


「……無事なら良かった」

「一人じゃなかったからね、馬鹿みたいに落ち込みはしたけど。……あ、そうだイザール手ぇ出して」

「ん?はい」


 木の上に座り直したイザールに、カバンから取り出した小箱を渡す。

 よしよし、やっと渡せた。これでお土産は全部渡せたし、休み前にやることは全部終わったかな。

 なんて思って一人満足していたら、イザールは箱を開けて何とも言えない顔をしていた。


「……先輩、これ俺にで合ってる?」

「合ってるよー。可愛いでしょ」

「可愛い……けどさぁ……」

「部屋で一人の時にでも使ってよ。無理に使えとは言わないけどさ」

「まあ、うん。じゃあ一人の時に使う。ありがとね」


 可愛らしい猫の髪留めを見てスンッとしていたイザールは、ジトリとした目をこっちに向けてきた後に諦めたように笑った。

 首の傾きに合わせて鈴が鳴り、思わず手を伸ばしたら手首を掴まれた。ごめんて。


「別にいいんだけどさぁ……先輩警戒心なさすぎない?」

「んな事無いと思うけど。触んないから手ぇ放してー」

「はいはい」


 掴まれた手を緩く揺らして開放を求め、放してもらったので杖を持ち直す。

 風を霧散させて地面に降りると、それを追いかけるようにイザールも木から降りてくる。

 どうしたのかと思って目を向けたら、ニンマリ笑った顔を目が合った。


「なに?」

「いや?なんでもないよ、先輩」

「……そっか?」

「ところで先輩、今週末って暇?ちょっとお願いしたいことがあるんだけど……」

「暇だよ?なんかするの?」

「ちょっとね」


 なんかよく分からないけど、一緒に行けばいいみたいなので時間だけは聞いておく。

 どうせ暇だし、イザールの事を警戒する必要はないからね。

 よくよく思い返すと前から頼みたい事があるとかないとか言っていた気もするし、多分それ関連だろう。


「じゃあまたね、先輩」

「うん、休日にね」


 ご機嫌に去って行った黒猫後輩を見送って、クルリと杖を回す。

 なんだか機嫌の乱高下があった気がするけど、上機嫌で帰って行ったからいいか。

 私も満足するだけは飛んだし、お土産も渡せたから図書館にでも行こうかな。


「んーっし、本取りに行くかぁ」


 今借りている本は昨日読み終わって部屋に置いてきたので、それを取ってきて図書館に行こう。

 そんでもって新しいのを借りてきて、夕食までは部屋に居ようかな。

 ついでにこの数日で出席した授業の内容でも復習しておけばいい時間になるだろう。


 予定が決まったので杖を持ち直して建物の中に入り、廊下を通って部屋に向かう。

 途中人とすれ違ったが呼び止められる事は無かったので無事に部屋に入り、本を取って部屋を出る。

 今回は何を借りよっかなぁー。今回は割と硬めの歴史書っぽいのを借りたから、次は物語っぽいのを読みたい気分なんだよね。


「ま、行ってから適当に決めよう」

「何をー?」

「うっわびっくりした!ソミュール!?」

「んふふ、やほー」


 気配も何もなく急に後ろから声をかけられて、びっくりして飛び退いたらソミュールが居た。

 足音とかしなかったよなぁと思って足元を見たら、わざわざ浮いてきたようだった。

 なんでそんなことを、って思うけど、多分意味なんてないんだろうなぁ。


「なぁに、どうしたの?」

「なんでもないけど、僕、今日は夜までは起きてられるからお散歩してるの。そしたらセルリアが居たからねー」

「なるほどねー。私はこの後図書館行くけど、ソミュールも行く?」

「んー……どしよっかな。あ、ミーファみてなぁい?」

「ミーファ?見てないけど……」

「じゃ、ついてこーっと」


 ソミュールが横に並んで歩き出し、そのまま図書館に向かう。

 彼女が本を読んでいるところはあんまり見ないけど、嫌いな訳ではないらしいんだよね。

 前に長い人生だから楽しめるものは全部楽しんでしまうべきだろう、って言っていた。


 後は、寝ている間にあったことを把握するのに便利なんだとか。

 なるほど睡眠時間への認識が根本から違うんだなぁ、と思った記憶があって、よく覚えている。

 そんなことを思い返しながら図書館に向かい、とりあえず本を返してから後ろで待っていたソミュールの手を引いて二階に上がった。


「セルリアは何借りるの?」

「これから決めるよ。ソミュールはなんか読みたい本とかないの?」

「ん-……多分ここにはないからなぁ」

「そっか」


 ついて来ているだけで割と楽しいらしいので、そういう事ならと遠慮せずに借りたい本を探すことにする。

 どうしよっかな、この辺はもう読んでしまったものだし、もう一つ奥の本棚を見に行こうかな。


「セルリア、図書館の本全部読んじゃったの?」

「そんなことないよ。読んでない本の方が多いって」

「えー。半分くらいは読んだんじゃない?」

「ずっと読んでていいならともかく、授業もあるし冒険にも出てるんだから」

「そっかぁ。……読めるなら読みたい?」

「それはまあ、読めるならね」


 小声で話しながら本棚の間をのんびり歩き、背表紙とそこに書かれたタイトルを目で追っていく。

 ……お、これ新しいやつだ。同じ作者さんが書いた本が面白かった記憶があるし、今回はこれを借りて行こうかな。

 借りる物が決まったのでそれを抜き取ってカウンターに持って行き、図書館を出てソミュールと別れた。彼女はこのまま夕食までお散歩をするらしい。


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