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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
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398,優雅な放課後

 放課後になって外をのんびり歩いていたら、建物の方から走り寄ってくる足音が聞こえてきた。

 目を向けると、アリアナが駆け寄ってきているのが見えたので足を止める。

 パァっと表情が明るくなったのを見て、思わず可愛いねぇと声が零れた。


「セルリア先輩!」

「久しぶり、アリアナ」

「お久しぶりです、お帰りなさい」


 駆け寄ってきたアリアナの頭を撫でながら、可愛いなぁとしみじみ呟く。

 なんでこんなに可愛いんだろうね。とりあえずよしよしと満足するまで撫でてから、改めて向き直った。


「気付くの早かったね?明日あたりに探しに行こうかと思ってたんだけど」

「グラシェさんが教えてくださいましたの。自分は授業で会ったから、と」

「あぁ、そういうことか。グラシェは放課後用事があるんだっけ?」

「はい。今日はアガット先生の所に行くと言っていました」


 やっぱり前より仲良くなってるみたいだ。

 個人間の連絡手段まであるなんて、私たちよりもスムーズなコミュニケーションが取れるじゃんね。

 私たちは四人とも何となくいる場所が固定されてるから、用事があるならまずはそこを探すところからなんだよね。


「でもまあちょうどいいか。アリアナ、ちょっと手出して」

「はい?」


 実はグラシェにだけお土産が無くってね、気まずくなったら嫌だなぁとか思ってたんだよね。

 女の子たちに髪飾り買って行こーとしか考えてなかったから、今日の朝荷物整理してて気づいたという失態だ。


 イザールには髪留め買ったのにね。

 でも、グラシェって髪短いからワックスフラワーではいいのが見つからないってのも事実なんだよねぇ。他にも色々見てみたんだけど、いい感じのはなかった。


「はい、お土産」

「えっ、わぁ、いいんですか?」


 あれこれ考えながら荷物の中からアリアナの分のお土産を引っ張り出し、リボンが曲がっていない事を確かめてから言われた通りに差し出されているアリアナの手に乗せた。

 開けていいかと聞かれたので頷いて、リボンを解いているアリアナを眺める。


「わぁ……綺麗……」

「アリアナは髪飾りも色々持ってるだろうけど、それなら使い勝手もいいかなって」

「ありがとうございます!大切にします」


 授業中とか前髪が邪魔になった時にでも使ってもらえればいいかな、と思って買ってきたんだけど、気に入ってくれたみたいだ。

 ワックスフラワーの商品は全部綺麗だからね。


 ちなみに色は水色で、アリアナの目と似たような色を選んだ。

 川の流れを切り取ったみたいな飾りで凄い綺麗だなぁって思ったんだよね。

 アリアナは目の色もそうだし、属性も氷だしいいんじゃなかろうかと、そんなことを考えていたはず。


「そうだ、セルリア先輩。杖が折れたと聞いたのですが、お怪我などはございませんか?」

「うん。大きな怪我は特に」

「そうですか、良かったです」


 その後少しそのまま話していたんだけど、アリアナはこの後用事があるらしく去って行った。

 すっごい後ろ髪引かれてる感じだったけどまた今度ゆっくり話せるだろうし、その時に飛行魔法の状態とかも見れたらいいな。


 さて、これで私は割と暇を持て余した感じになるわけなんだけど……部屋に戻るような気分でもないし、このままちょっと飛んでいようかな。

 足元に風を起こして身体を浮かせて、上向きに寝そべるように風に乗る。


 その状態でしばらくふわふわ浮いていたら、下の方から魔力が飛んできた。

 身体をひっくり返して下を見るとリオンが立っており、さっきの魔力はリオンが飛ばしたものだったみたいだ。


「おーっす、セル」

「おはようリオン。昼まで寝てたの?」

「おう、途中で起きたけどパン食ってもっかい寝た」

「そっかぁ」


 朝も昼も見かけなかったリオンだけれど、野営での睡眠不足を補うがごとく寝ていたようだ。

 そして授業も終わった時間になったしと散歩に出て来たんだとか。

 で、特にどこに行くとは決めてなかったけどのんびり歩いていたら私がぷかぷか浮かんでいたと。


「あ、そういえば学校戻ったら飛ぶとか言ってたっけ」

「おっ」

「飛ぶかぁ」

「よっしゃぁ!」


 そういえば、と思い出したことを声に出して、リオンが目を輝かせ始めたので降りてくる時に消した風をもう一度作る。

 さっきまで背もたれにしていた風も引き寄せて、リオンと手を繋いで空に上がる。


「リオン剣置いてきたの?」

「おう。散歩するのに剣要らねぇしな」

「それもそっか。……変な飛び方していい?」

「全力でやられたら流石に吐くぞ」

「流石にそこまではやらないよ」


 とりあえず私が一人でやっているようなトンデモ飛行をしなければいいんでしょ?

 それなら、軽くなら揺れても良いってことだよね。

 そう解釈して浮いていた場所から少し下にずれ、身体を傾けてクルリと回る。


「うおぉ」

「まだ緩くしか回ってないよ」

「お前普段どんな速度で回ってんだよ」

「こんくらい」


 右手でリオンと手を繋いでいるので、右手を強く引き寄せてそのままぐるりといつも通りの速度で回る。

 グルングルンと二周くらいしてみたら、リオンの握力が強くなってきたので回転を止める。


「……そりゃああの速度でぶっ飛んでいくわけだよなぁ」

「リオンだって相乗りしてるじゃん?」

「いや、流石に速度落としてるぞ?前見えねえし」

「あぁそれは分かる。私も速度上げるのに風の探知能力上げてたし」

「やたらと精度高ぇの、それでか」


 回転を止めて身体の向きを戻したらリオンの握力が緩んだので、ついでに身体も放しておく。

 そのまま空に留まってのんびり会話をして、吹かせていた風から情報を拾ってくる。

 これは最早癖みたいになってるんだよね。ちまちまと精度上げに励んでいた副次効果だ。


「おーい!」

「ん?」

「お?あ、シャムとロイだ」


 誰か来てるなぁとは思いつつも気にしていなかったんだけど、声をかけられたので下を確認したらシャムとロイが立っていた。

 何やら呼ばれていそうなので足元の風を消し、リオンの焦った声を聴きながら下に降りる。


 落としたりしないよーと笑っていたら頭を小突かれたけど、楽しかったので良しとしよう。

 ちなみに、威力が上がりそうだったので二発目は避けた。


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