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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
395/477

395,長かった旅の終わり

 門を潜って国の中に入り、そのまま大通りの奥まで進む人の邪魔にならないように道の脇に寄る。

 グーっと身体を伸ばして息を吐き、脱力してふへぇ……と声を漏らした。

 横からも三人分の緩ーい声が聞こえてきたので、全員同じテンションなのが分かる。


「着いたー」

「帰って来たぞー」

「あー……つっかれた」

「ふぅ……お疲れ様。このまま学校に戻ろうか。どこかで休んだらもう動けない気がする」

「分かる。一気に気が抜けた」


 やっと帰って来れたフォーンは、やっぱり他の国に比べると安心感が段違いだ。

 旅の間は宿に入って荷物を置いてやっと気が抜けるんだけど、フォーンはもう門を潜っただけで気が抜けるもん。


「ギルドに報告する物とか特になかったよね?」

「無いはずー……あったら明日行こ。もう今日は頭動かないよ」

「俺も部屋戻ったら即行で寝るわ」

「分かるー……私もお風呂入って寝る。もう寝る。絶対朝まで起きない自信ある」

「夜に腹減って起きそうな気もするよね」

「サンドイッチでも買って行く?」

「いいねぇ」


 話しながらダラダラと歩き始め、途中で見かけたパン屋さんでサンドイッチを買って学校まで戻ってきた。

 校門を通って中央施設に入ると、入ってすぐにあるカウンターにいる先生が気付いておっと声と手を上げてくれた。


「おかえりー。早かったね」

「ただいま戻りました。全員怪我無しです」

「それは何より。えーっと、じゃあ部屋の鍵の返却かな。他の書類は後日でもいいからね」

「ありがとうございます」


 鍵を受け取って寮の方に行こうと思ったら、教務室から先生たちが出てきた。

 お、四年生の担任二人が揃ってるってことは、なんかしらやることがあったのかな?


「おや、お帰りなさい。無事で何よりです」

「戻ったか。……杖も出来たようだな」

「ただいま戻りましたー」

「ただいまです。見てくださいこの杖。杖のおかげで風の槍の威力上がりましたよ」

「それはそれは……今度地面にでも撃ってみましょう」

「無駄に地面を陥没させるな」


 ちょうどいいので杖を自慢したら、ノア先生がウッキウキで試し打ちの提案をしてきた。

 あまりにもウッキウキだったからなのかヴィレイ先生に頭を叩かれているけど、全く気にしていなさそうなのがなんかちょっと面白い。


「まあいい。長旅で疲れただろう」

「そうですね。ゆっくり休んでください」

「はい」

「うーっす」


 ゆるーく返事をしてシャムとロイと別れて寮に戻り、部屋の前でリオンから保存食を受け取って部屋に入った。

 二か月弱くらいぶりに戻ってきた自分の部屋は、出た時とさほど変わっていなかった。


 流石に若干埃っぽい感じもするけど、そのあたりは魔法で風を吹かせて換気をすれば解決するだろうから、とりあえず荷物だけ下ろそうかな。

 ……いや、なんかもう、疲れたわ。荷物の整理は起きた後にして、換気を済ませてお風呂入ろう。


「えーっと、扉……もういいや。風で全部やっちゃおう」


 疲れと眠気で全てが面倒になって、雑に風を起こして部屋の中を一周させてから外に吹かせていくことにした。

 よーしもうこれで換気はオッケーだろう。じゃあ鍵閉めてお風呂入ろう。


 服も旅用のものではなく部屋着にして、杖も置いてタスクだけ持ってお風呂場に向かう。

 髪を解いて髪紐も机に放置して、ぜーんぶまとめて後回しにしてしまおう。

 何ならもう投げ出していくからね。


「はぁー……生き返るぅ……」


 部屋のお風呂だから湯船につかれるわけではないんだけど、それでもお湯を浴びると疲れが抜けてく感じがするよね。

 そのまま緩い声を出しつつ髪と身体を洗って、スッキリしたところでお湯を止める。


 適当に水気を切ってから着替えの上に乗せておいたタスクを手に取って、小さく風を起こして一気に体の水を吹き飛ばす。

 水気がなくなったので服を着て、髪をとかしてヘアオイルをつける。


 髪を乾かす時はぬるめの風にして威力も弱めて、櫛で梳かしながらしっかり乾かす。

 そんなことをやっていたらいつの間にか一時間程が経過していて、ベッドに倒れ込みながら確認した時計をサイドテーブルに置いてすぐに眠りに落ちた。





「……寝過ぎた」


 もそりと起き上がりながら、ぼんやりと頭を掻く。

 寝る直前に懐中時計をどこにやったかと考えて、サイドテーブルに手を伸ばした。

 現在時刻は朝五時前。帰ってきたのが昼過ぎのはずだから、かんっぜんに寝過ぎた感じだ。


 寝過ぎて頭がボーっとしているのでとりあえずティーカップを出して水を一杯流し込む。

 そのまま湯沸かし器にもお湯を入れて、お茶の準備もしておく。

 茶葉は……持っていかなかったのを飲もうかな。


 夕飯をすっぽかして寝ていたから普通にお腹もすいていて、昨日買ったサンドイッチが目についたので包みを開けた。

 モソモソ食べている間にお湯が沸いたので、ティーポットに茶葉を入れてお湯を注ぐ。


「ふぁ……今日の授業ってなんだっけ」


 流石に今日は一日校内をフラフラしながら休もうと思っているんだけど、後輩たちにも会いたいから日程把握はしたいんだよね。

 まあ四年生以外は暇な時間とかないんだけどさ。一応ね?


 攻撃魔法の授業に息抜きがてら参加してもいいかなぁって思うし、一回確認してみよう。

 あとは図書館行こう。とりあえず図書館には行こう。しばらく遠出はしない予定だし、本を借りて来てのんびりするのも久しぶりだからね。


 考えながらサンドイッチを食べきってお茶を飲み、脳内でもう一度予定を組み立てる。

 ……うん、急ぎじゃないし、そんな感じで良さそうだ。

 予定が決まったところで、着替えて荷物を開けることにした。


 後輩たちと話せたらお土産を渡したいから、とりあえずそれは出さないとね。

 あとは旅の間の着替えとかも一回洗濯したいから出しておいて、ついでに全部整理してしまおう、と鍋なんかも取り出す。


 食料を棚に入れたり調味料の残量を確認したりしていたら、いつの間にか七時を回っていた。

 荷物整理も割とキリがいいので、お土産を入れたいつものカバンと杖を持って部屋を出る。

 朝ご飯はもう食べたけど、一旦食堂に行ってロイが来るかだけ確かめよう。


「食堂のお茶美味しいしね」


 自分では買わない茶葉でも試してみようかな、とか考えながら廊下を進んで、久しぶりの食堂の賑わいに頬を緩めた。


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