表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学び舎の緑風  作者: 瓶覗
391/477

391,朝食の準備

 朝日を浴びてグーっと身体を伸ばし、爽やかな風に頬を緩める。

 自分で吹かした風も好きなんだけど、やっぱり自然に吹いている風は格段の良さがあるよね。

 なんて考えながら空を見上げていたら、宿からロイが出てきた。


「おはようセルリア」

「おはよう、ロイ。今日は風が気持ちいいよー」

「そうみたいだね。村の中を散歩でもしてみる?」

「するー」


 リオンとシャムが起きて来るまでまだ時間があるので、天気もいいし村の中をのんびり散歩をすることにした。

 ついでに朝ご飯を調達してこよう。たしか八百屋さんとかはあったはずだからね。


「……あ、そういえば、昨日結局聞けなかったけど、悪魔種ってなんなの?」

「悪魔種は狭間を通って魔界からやって来る魔族の通称だね。明確な判断基準があるわけじゃなくてちょっと曖昧なんだけど、基本的には人間に害意を持った、強い魔族が悪魔種って呼ばれてるね」

「……なるほど?だから姉さまキレてたのか」

「アオイさんが?」

「うん。珍しくキレてコガネ兄さんとトマリ兄さんをけしかけてたことがあって、何があったのかと思ってシオンにいに聞いてみたら悪魔種だって」


 姉さまは悪意と害意に敏感だからね。自分に向けられたものより、自分の親しい人に向けられたものの方が反応しやすくて、珍しく怒っている時はそういう時が多い。

 そして姉さまが怒ると自動的にコガネ兄さんとトマリ兄さんが出動するのだ。すごいね、怖いね。


「昨日いたのは悪魔種中位寄生型。人に憑りついて、怒りとか恐怖とかの負の感情を増幅させるんだ。あそこまで騒ぎが大きくなったのは、悪魔種が争いを煽ったからだろうね」

「ほー……魔力がやたら膨れ上がってたのもそれ?」

「そうだね。悪魔種は魔力を糧にしているから、憑りついた人から感情と一緒に魔力を引き出したりもするらしい。引き出した魔力を使って周りにいる人にも影響を及ぼして……って、どんどん拡大させていくんだ」

「わお。だから知らせないといけなかったんだ」

「うん。早めに気付いてくれて助かったよ」


 色々聞いて、やっと昨日の行動が全て繋がった気がした。

 シャムが慌ててロイに報告をしていたのはヤバいからってものあるけど、時間が経つと影響範囲が広がるからってのが大きいんだろう。


 魔法であんまり探らないようにっていうのも、魔力を糧にするから餌を与えないようにっていう理由だったんだろうな。

 ギルドに知らせるのは対策のため、さっさと出発したのは多分、私の魔力量が多いのも影響してるんだろう。


「なーんか、色々大変な所に当たったんだねぇ」

「そうだね。何事もなく出発出来て良かったよ」


 話しながらのんびり村を散歩して、野菜と果物をいくつか購入する。

 ムスペルで休めなかったから、今日は村に滞在して休息をとることになったんだよね。

 なので今日の昼とか夜とかに食べる用の食材とかも買って宿に戻ることにした。


「お?旅商人?」

「本当だ。……多分第五大陸内を回っている人だろうね。見てみる?」

「うん。出来ればお肉とか買いたい」


 ちょうど村に旅商人が来ていたので、村人に混ざって並んでいる商品を眺める。

 何かいい食材はあるかなー。最悪干し肉とかでも足りはするんだけど、せっかく定住地に居るなら野営してる時とは違う物を作りたいよねぇ。


「あっ、キノコある。あれなに茸?」

「オオカサタケかな。食用だよ」

「ほう……買ってみようかな。野営中にキノコってあんまり食べないもんね」

「そうだね、食べられるキノコを判断出来ればいいんだけど……判断が難しいから、しっかり習わないといけないんだ」

「毒キノコはね、判断難しいって言うよね。姉さまもよくキノコ片手に首傾げてたよ」

「そうなの?」

「うん。毒キノコも薬の材料で使うから、家には結構あるんだけど……たまに仕分け損ねたのがあって、これどれだ……?って」


 キノコ片手に首をかしげる姉さまは、絵面は面白いのに姉さまが綺麗すぎて何故か絵画に見えるから、見てるこっちが首をかしげてしまうような光景だった。

 ちなみに最終的なキノコの判断はコガネ姉さんとウラハねえがやっていた。姉さまは自分の鑑定が信頼できないらしい。


 薬に使うものなら姉さまの判断が外れる事って基本的に無いと思うんだけど、それでも信じられないらしいんだよね。

 コガネ姉さんは「まあ主だからね」と謎の納得をしていたけど、私は未だに疑問だ。


「こんにちは、このキノコってどうやって食べるのがオススメですか?」

「スープの中に入れても美味しいし、串に刺して焼くだけでも美味しいよ」

「ほうほう、なるほど……じゃあ、この籠の分貰ってもいいですか?」

「まいど!」


 旨味の強いキノコなのかな。とりあえず買ってみて、料理に使う前に焼いてちょっと食べてみよう。

 串焼きにするかスープに入れるか、それとも何か他の調理法にするかは、一回食べてみてから決めればいいからね。


 宿の部屋にキッチンはないけど宿のキッチンが借りられるらしいので、朝ごはんの前にちょっと味見をしてみよう。

 朝ご飯はサンドイッチか何か買って行こうかと思っていたけど、今買った食材で適当に作ってもいいかな。


「ロイ、柔らかいパンも買って行こ」

「分かった。他にいる物は?」

「んー……お肉も買ったし、野菜もあるし……しいて言うならバターがあれば嬉しいかな」


 何となく朝食の内容を考えて、それに必要なものを買って宿に戻ることにした。

 多分まだシャムとリオンは起きてないだろうから、先にキノコの味見だけしちゃおうかな。

 その後どうするか決めて準備をしていれば二人も起きてくるだろう。


 買ったキノコは洗って水に浮かべておいて、その間に部屋から荷物を持ってくる。

 料理に必要な道具を取り出して組み立てる。……よし、これで串焼きの準備はオッケーかな。

 キノコを水から上げて、四等分くらいにして串に刺す。塩を振って遠火に置いて、時々ひっくり返しながら焼き色がつくのを待つ。


「……よし、そろそろいいかな」

「いい匂いだね」

「はい、味見。……ん、美味しい。バター焼きも美味しいだろうな」

「いいね。……今やる?」

「やってみようか。そんで、美味しかったらサンドイッチに挟もう」


 ロイがウキウキで見上げてくるのが面白くて、残った二つをバター焼きにすることにした。

 多分美味しいと思うんだよねぇ。そんなに味はつけなくてもいいと思うから、バターは少なめに。

 串焼きにしてて既に焼き目も付いてるから、バターが溶けて染み込めばいいかな。


「はいどうぞ」

「ありがとう。……うまっ」

「んふふふ。うん、美味しい。これと野菜と……まあ、何種類か作ろうかな。どうせこれだけじゃリオンは足りないだろうし」


 なんかロイの語彙力が溶けた気がするけど、嬉しそうだしまあいっか。

 どうするかは決まったので残りのキノコも切って焼いていく。こっちは最初からバター焼きでいいかな。軽く塩を振って、バターで焼く。


 その間にパンを切ってこっちにもバターを薄く塗って、これも焼く。

 野菜は千切って水にさらして……キノコを挟むのとは別に肉を焼いて挟みたいから、そっちには下味をつけておこう。……ふふ、楽しくなってきたぞう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ