表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学び舎の緑風  作者: 瓶覗
381/477

381,カウイル到着

 野営から一夜明けて、街道をしばらく歩くとイツァムナー同盟諸国が見えてきた。

 第三大陸からモーブを経由してイツァムナーに向かうと、最初に見えるのはカウイルになる。

 今日はカウイルに宿泊する予定なので、宿を確保するために最後は小走りで移動した。


「よし、じゃあまずは宿を探そう。……一旦手分けしようか」

「はーい!セルちゃん、風お願い」

「うん。……このくらいかな」


 カウイルの門を潜って中に入り、大通りで二手に分かれて宿を探すことになった。

 私とシャムで会話用の魔法を組んで、私とロイ、シャムとリオンで別れる。

 人が多いので、逸れない様にロイの服を掴んでおく。


「人多いね」

「そうだね。イツァムナーは特に人口が多いと思うよ」

「やっぱり安全だから?」

「それもあるし、トルに他の大陸から物が集まってくるし、キニチ・アハウに魔法技術が、カウイルに武器作成技術が集まってるからね。学びに来てる人も多いんだ」

「あー、なるほど」


 話しながら宿を探して、空いている部屋があるかを確認する。

 三件目で隣接した二部屋が空いている宿が見つかったのでシャムたちに連絡を取り、待っている間に軽く周りを見て回ることにした。


「セルちゃーん!見てー!」

「え、なにそれなにそれ。ガラス細工?」

「飴!飴細工!」

「すごーい!そんなのあるんだ!」


 シャムが手に持っていたのは鳥の形をしたガラス細工のようなもので、何かと思ったら飴らしい。

 こんなに綺麗で細かい飴なんてあるのか……

 凄いな、こういう職人さんもいるのか。飴細工専門の職人さんなのか、何かの職人さんが練習で作ったものなのか。


「んで、宿取れたんだろ?荷物下ろそうぜ」

「そうだね。そのあと少し街を見て回ろうか。本格的に回るのは明日からだけど、少しくらいなら見れるだろうし」

「ついでに夕食食べて戻ってくる感じ?」

「そうしようぜ。なんか色々飯屋が並んでる通りがあったんだよ」

「へぇ、屋台?」

「おう」


 話しながら宿に入り、大きな荷物を下ろす。

 そして普段から持ち歩いているウエストポーチと杖を持って部屋を出た。

 外套は置いて来てもいいかと思ったけど、日も落ちるし寒くなりそうだから着ていったほうが良さそうだ。


「おー……やっぱり剣とかの工房が多いね」

「ねー。あ、あっち弓の工房だ。矢も売ってる」

「リオン弓とか使わないの?」

「クッソ下手。当たらねぇ」

「そうなんだ」


 遠距離攻撃のイメージないなぁと思ってたけど、苦手なのか。

 まあ困って無さそうだしな、使えなくてもいいのか。

 私も炎魔法使えないし、それと同じようなことだよね、うん。


 そんな話をしながらカウイルの中を歩き回り、屋台が建ち並ぶ一角を訪れた。

 凄いなここ。道の上にはランタンが吊るされていて、なんだかすごくカラフルだ。

 思わず呆けて見上げていたら、ロイにそっと背中を押された。


「すごーい、お祭りみたいだね」

「ね。毎日こんな感じなのかなぁ?」

「特にこの時期にお祭りとかはなかったと思うよ」

「じゃあ常にこれなのか。すげぇな」


 話しながらその一角を見て回り、気になる屋台を覗く。

 屋台それぞれに席があるので、ちょっとずつ頼んで食べたらすぐに次に行くことにして、あっちこっちの屋台を巡る。


 最終的に私とシャムはリオンとロイが頼んだ物を一口貰う、くらいになったけれど、いろんなものが食べれて中々楽しかった。

 なんてことをやって、リオンが満足したところで宿に戻ってきた。


 明日は朝からカウイル観光なので、早めにお風呂に入って早めに寝た方がいいだろう。

 そんなわけでお風呂に入り、ヘアオイルをつけたりストレッチをしたりと寝支度を整える。

 髪を乾かしてベッドに入ると、横のベッドでシャムが寝転がって何かを書いていた。


「シャム?それなに書いてるの?」

「んっとねー、日記みたいなものかな。毎日書いてるわけじゃないんだけど、初めて行った国とかでは割と書いてるかなぁ」

「そうなんだ。書いてるところ初めて見たかも」

「そういえばいつも書いてる時ってセルちゃんが他の事してる時だったかも。なんか意外だね」

「ねー」


 話している間にシャムの日記は書き終わったようで、ペンと一緒に荷物の中に手帳を戻していた。

 それを見届けてから部屋の明かりを落とし、目を閉じる。


「おやすみ」

「おやすみー」


 シャムから帰ってきた声は、もう既に眠そうだった。

 私も眠いから早く寝よう。夕食の時の大はしゃぎと、その前の移動で普通に疲労困憊なんだよね。

 テンションが上がってたから動けてたけど、ベッドに入ったらもう駄目だ。


 一回深呼吸をしている間に意識が落ちて、泥のように眠ってしまった。

 夢も見ずにスヤスヤと眠り、朝日が差し込んで来たことで目が覚めた。


「……ふあぁ……すっごいぐっすり寝た……」


 身体を起こして顔にかかった髪をよけて、ベッドサイドに置いておいた時計を確認する。

 時間自体はいつも通りだけど、なんかすーっごいスッキリしてるなぁ。

 睡眠の質が良いってこういう事なんだろうな。普段から睡眠時間が足りてない、なんて事は無いんだけど、これは凄い。


「さて、と。どうしようかな」


 まだロイも起きて無さそうだし、一人で外をうろつくのもどうかと思うんだよね。

 とりあえず着替えて髪を纏めよう。今日はハーフアップでいいかな。

 荷物の確認もしておこうかな。そのあたりあれこれやっていればいい感じの時間になるだろう。


 そう思って服を着替えて、ウエストポーチの中身を整理する。

 あんまり使わない貴重品は見えない位置に、よく使うものは取り出しやすい位置に。

 外側に付けているポーションは、大きな荷物の方に予備を入れているので使った分を取り出しておく。


 そんな風にポーチの整理をしていたら、部屋の扉がノックされた。

 多分ロイだろうけど一応杖を持って扉を少し開けると、軽装のロイが立っていた。うん、やっぱりロイだったね。


「おはよう」

「おはよう。散歩行かない?」

「行くー」


 ちょうどポーチの整理も終わったところだったので、それを腰に付けて杖を持ち、机に書置きを残して部屋を出る。

 宿の周りは昨日見れなかったから、そのあたりとか見て回りたいな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ