表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学び舎の緑風  作者: 瓶覗
38/477

38,手紙の頻度は落ちたりしない

 ボフンッと音を立ててベッドに倒れ込む。

 楽しかったが、疲れる一日だった。魔道具の制作過程は説明されてもよく分からず、基礎を学んでいないから仕方ないだろうと言われて気になってしまったのだ。


 なので、研究室にお邪魔してあれこれ弄らせてもらったり他の人にも魔視をかけたりした後に図書館に駆け込み、借りていた本を返して魔道具作成基礎の本を借りてしまった。

 図書館の管理人、レースさんからは「ついに研究職に入り直すことにしたの?」なんて言われてしまい、事の顛末を説明している間に夕飯の時間になり。


 慌てて物を置きに部屋に戻り、そのまま杖だけ持って食堂に向かい……と忙しない放課後を過ごして帰ってきたところだ。

 研究室に入ると決めたわけではないけれど、今まで知らずに使っていた物の仕組みを知るのは中々楽しい。


 荷物の整理も日課のあれこれも何もしていないが、それらをやるには時間が足りない気がする。

 なので諦めて身体を起こし、教材を棚に戻して引き出しからレターセットを取り出した。

 何となく報告したい気分なので、今日のあれこれを手紙にして姉さまたちにお知らせしようと思ったのだ。


 もうすぐ長期休暇があり、その時に帰るのだからここまでの頻度で手紙を書く必要はないのだが、それでも書いてしまうのは癖づいているからか、そもそもその日の夕飯時に一日の報告をする習慣があったからか。


 まあ、手紙は書いたら書いただけ喜ばれているらしいから出さないよりいいだろう。そんなわけで書き始めた手紙が厚くなり過ぎないように枚数に気を付けつつ今日一日のことと最近のことを書き連ねていく。


 書きあがった手紙は宛名を書いた封筒に入れて、不備がないことを確認してぐっと身体を伸ばした。

 時間を確認すると、そろそろ寝なくてはいけない時間である。


 だがその前にとお湯を浴びに行き、手紙を出しに行くタイミングを考える。

 明日の日程は座学が多いはずなので、移動はさほど多くない。出しに行くなら朝一か放課後になるだろう。


「……朝一に行くかなー。出してからご飯食べればいいか」


 行動が決まったところでお湯を止め、魔法で水気を飛ばして寝巻に着替え、もう一度ベッドにダイブした。

 疲れていたからかすぐに訪れた眠気に抗わずに目を閉じる。


 次に意識が浮上したのは朝を知らせる自動点灯のタイミングであり、つまりはいつも通りの時間だった。身体を起こしてぐっと伸びをして、ベッドから降りて服を着替える。

 髪飾りを付けて準備は完了だ。普段なら食堂に向かうが、今日は逆に進んで中央施設の建物に向かう。


 そこで手紙を出してもと来た道を戻り、食堂に入って適当に朝食を選んで辺りを見渡すと、既にロイが座っていた。

 そこに合流するとロイが顔を上げる。


「おはよう。セルリアの方が遅いのは珍しいね」

「おはよ。手紙出してきたの」

「なるほどね。長期休暇の相談?」

「いや、いつもの活動報告」


 話しながら座り、朝食に手をつける。

 いつも通り話しながら食べ進めていると、お茶とパンだけ持ったシャムが眠たげに合流した。


「おはようシャム」

「おはよー……二人ともいつも早いね……」

「ここに来る前から習慣付いてるからね」

「んー……そっかぁ……リオンはまだ起きてない?」

「そうだね。来るかな?」

「来なくても今日は座学が多いから」

「どうせ寝てる?また怒られたんでしょ?」

「それでも寝るのがリオンだよ」


 話しながらも食事は進む。ロイは食べ終わっているし、私もあと少しで終わりだ。

 シャムは眠そうにお茶を啜っているが、パンを食べる余裕はあるのだろうか。

 駄目ならロイが食べるのだろうけど。一応栄養を取ろうとパンを一つ持ってきては、寝起きで食べられず半分から七割ほどをロイに渡すのもよく見る光景だ。


 時計を確認すると、朝食の残り時間は十五分ほど。

 シャムのお茶は終わるだろうがリオンは間に合わないだろう。

 今から来たとしても途中で時間切れになるだろうし、そうなったら置いて行く。


「座学って言うと、魔物の系統とか?」

「そう。倒し方とか攻撃手段とかのあれこれ。そっちは?」

「こっちも魔物系かな。そもそもの種別からやるみたい」


 生き残るのに必要だからか、魔物やなんかの倒し方や生息地域などを覚えるための授業はそれなりの頻度で組み込まれている。

 覚えていた方がいいからやるのだろうに、リオンなんかは大体寝ているのだからため息が漏れる。


 いざという時に知らなかったから逃げられなかった、では遅いのだ。

 知らなくともどうにか出来てしまう人もいるが、そんな人はここに学びに来ないで魔物狩りに励んでいるのが現実である。


 学ぶ必要があるからここに来ているのだ。なら起きていて話を聞けと思わなくもない。

 まあ、自己責任なので何も言わないけれど。

 それでも見知った顔が急に消えるのは嫌なので、今日くらいはたたき起こすべきだろうか。


 考えている間にも時間は進み、シャムの持ってきたパンが半分に割られて半分がロイの胃に納まったところで立ち上がる。

 残り時間を告げて杖を持ち、手を振って食堂を後にした。


 部屋に戻り、荷物を持って教室に向かう。

 早く着いた教室は、まだ人も多くない。自分の席に座って借りてきた本を読むにはちょうどいい静かさだ。


 しばらく読書に精を出し、途中ミーファがソミュールを引きずっているのを手伝い、授業開始一分前に教室に駆け込んできたリオンにジト目を向ける。

 リオンが何か言おうとしたようだが、すぐに先生が入ってきたので何も言うことなく席に着いた。


「はい、おはようございます。眠いだろうけど起きててねーっと。始めるよ」


 ニコニコと笑いながらそういった先生は、言葉では起きていろと言いつつ内心では寝るだろうと思っているらしく、当然のように減点表を取り出している。

 リオンが寝られない様に首周りに風を起こしておこうかと思ったが、授業中にずっと杖を持っているわけにもいかないのでとりあえずは諦めた。


 一応、リングという指輪型の魔導器も着けてはいるのだが、これで魔法を扱うのにそれほど慣れていないのだ。

 授業の妨害をする気はないので、やるとしたらもっと上達してからである。


 そんなわけで、一旦リオンのことは忘れることにした。

 教材とノートを取り出して前を向き、先生の話を聞きながらメモを取る。

 ちらっと手元に目を向けると、ノートに紙が挟まっていた。


 何かと思ったらミーファに頼まれて書いた文字の練習のお手本が混ざり込んでいたようだ。

 彼らもだいぶ書き取りが上達してきたので、最近は出番もなくなっている紙である。

 折りたたんでカバンに入れ、目線を戻す。カツカツと音を立てながら黒板に文字が書かれていくのを書き写し、教科書の文字を目で追って。


 私からすると寝ている暇はないのだが、そんなに眠くなるものだろうか。

 ……単純に気になる。あとでリオンを起こして聞いてみよう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ