表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学び舎の緑風  作者: 瓶覗
37/477

37,私は珍獣じゃありません

「さて。ようこそ我らが遊び場へ!」


 そんな台詞と共に開け放たれた扉の先には、さまざまな機械と複数の人が居た。

 部屋の中にいた人たちは、先輩の声に反応してこちらを向いて、声の主を確認して手元に目を戻した。


 そんな中で一人だけこちらに歩いてくる人が居る。

 研究職の制服を着た女の人で、一つに纏めた髪を揺らしながら勢いよくこちらに向かってきた。

 そして、私の前で急停止してニコーっと笑う。


「こんにちは。加入希望かな?」

「違うよメリサ。見学だよ。セルリア、この子がここの設立者」

「あ、こんにちは」

「セルリアって言うのね。魔法使い?」

「はい、そうです」


 勢いのすごい人だと思ったら、例の行動力の化身さんだった。

 この勢いで研究室も作り上げたのだろう。

 すごい人だ。私にはそこまでの行動力はないので、素直に尊敬する。


「ん、セルリア?アオイさんとこの子?」

「そう……です」


 姉さまのことをそう呼ぶ人は、大体姉さまの知り合いだ。

 この中に姉さまの知り合いがいるのだろうかと声の主を探すと、一人の人が顔を出した。

 服装からして、生徒ではなく教師なのだろう。それならまあ、納得できる。


 この学校の先生たちは、皆姉さまと知り合いのようだから。

 ……この人が本当に教師なのかは、分からないけど。少なくとも私は見たことのない先生だ。


「凄いなメイズお前よく捕まえたな」

「え、普通に声かけただけだけど」

「なんでそんな珍獣みたいな扱いをされてるんでしょうか」

「アオイさんに似ずに警戒心が強いって噂を聞いたけど」

「姉さまの感覚で生きてたら独り立ち出来ないです」

「それはそうだ。ま、何はともあれようこそ我らが遊び場へ。見学だけじゃなくてちょっと弄っていきなよ」


 私の知らないところで私の評価が野生動物になっていた。

 これにはちょっと物申したいので、そのうちヴィレイ先生辺りを捕まえて聞いてみよう。

 なんて内心拳を握りながら、研究室の奥へと案内されるままについていく。


 様々な道具や素材が置かれている一角に到着すると、メリサさんが流れるように椅子に座った。

 そして、作りかけらしい魔道具を組み立てていく。


「セルリアには、これってどう見えてんだ?」

「同じだと思いますけど……ちょっと待ってくださいね」


 横に立っているメイズさんに聞かれて、目に魔力を込める。

 魔道具の構造なんてよく知らないけど、簡単な判別くらいなら出来る。

 まあ、制作途中の物を見るのは初めてだから上手くいくかは知らないけどね。


「えっと……今乗せられた板の下に炎の魔石が入ってますね?他は見えないから……点火用の魔道具ですか」

「凄い、分かるの?」

「魔力の色だけなら、それなりに見えるので」


 魔力を視るために目に魔力を込めるのが魔視であるが、これもそれなりに才能だ。

 まあ、最初に才能がないと言われてもどうにか頑張れば出来なくはない、といった類の技術であるが、出来ない人は本当に出来ない。姉さまとか。


 姉さまが魔力を視る必要がある時は横にいるコガネ姉さんが姉さまの分の魔視まで行っているのだから、どれだけ苦手かが分かりやすい。

 魔視の仕組みは単純で、目に魔力を留めておけばいいだけなのだ。


 魔力を留めて、魔力のレンズ越しに世界を見るだけ。

 なのだが、魔力を一点に留めるという行為が苦手な人には高度な技術になる。それが魔視である。

 使えると便利なんだけどね。そこに何の魔力があるのかとか、今回みたいに組み込まれた魔石の種類だとかが見えるので。


「流石、噂通りだな。ちなみに、これのどこが干渉してるか分かる?」

「……ここですね、繋がってます」

「ここかぁ。通りで動かんわけだ。ありがと」


 魔視の精度には個人差があるが、私の場合はこんなふうに、パッと見て干渉しているところを示せるくらいの精度を誇っている。


「魔力ってどんな風に見えんの?」

「色が見えるんです。そこにある魔力の色だけの世界を見てる感じですね」

「じゃあ、俺は無色なのか」

「そう、ですね。透明ではないですけど」


 透明ではないのに、色がない。そこに何かがあるということは分かるが魔力がないので魔視だけで見るとよく分からない何かがある気がする、という認識になってしまう。

 魔力だけで物を見ている種族からは隠れられそうな見え方である。


「メイズさん、は、魔法も見えないんですか?」

「うん。魔法で作られたもんは大体見えない。たまーに見えるのもあるけど、そういうのは魔力以外の媒体も使ってる時だって」

「そうなんですか」


 魔力だけで作られているものは見えない、ということは、川の水を持ち上げたりすればそれは見えるのだろう。

 見えなくはあるが、冷気なんかは感じるらしい。


「ただ、魔力で作った光は直接見えないんだよな。壁に反射してたりするとそれだけ見えるとかはあるけど」

「なんか、思ってたより判定が分からないですね」

「そーなんだよ。どれなら見えんのか、いまだに把握しきれてないの」


 入学からずっとどれなら見えるのかを確かめて来ているが、それでも分かっていないらしい。

 虚魔族は、魔法の溢れたこの世界では悪目立ちしてしまう。それを避けるために、その多くがイピリアという一切魔法の使えない国で生活しているのだ。


 魔法は使えないし、魔道具も上手く作動しないので虚魔族であっても他の人と同じように過ごすことが出来る。

 ちなみにイピリアはこの学校がある国、フォーンと同じ第四大陸にあるので、行こうと思えばその日のうちにたどり着けたりもする。


 まあ、一日で行こうと思うと馬を借りて駆けていくことになるのだが。

 姉さまは一人で馬に乗れない人なので、基本的にコガネ姉さん……移動するときは、いつも男の姿だったのでコガネ兄さんと同じ馬に乗ってあちこち出かけていた。


 馬での移動を普通だと思っていたあの頃も、それが結構贅沢なことだと知った時の衝撃も今では懐かしいものだ。

 本当に、よく私の常識はこの程度のずれで済んだなと感心してしまうくらいに普通ではない家だった。好きだからいいけど。


「ねえ、二人とも。虚魔族のあれこれが気になるのも分かるけど、せっかく来てるんだから魔道具の方にも興味を示してみない?」

「あ、ごめんメリサ放置して」

「いいよ別に。そこまで好意的な子って珍しいものね」


 弄っていた魔道具は組みあがったのか、こちらを向いてニコニコと声をかけてきたメリサさんに珍しいもの扱いされた。

 ……そんなに珍しいだろうか。気になって色々聞いていただけなのだが。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ