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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
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369,時計の修理

 クリソベリルの拠点に行っていた翌日、私たちは再び路面列車に揺られていた。

 ちなみにツルバミさんと散々遊んだ後はいつものようにモクランさんに怒られた。ツルバミさんは追加でジェードさんにも怒られてた。

 毎回毎回反省もせずに二人で遊ぶもんだから、もはや呆れられたよね。


「おー……なんか雰囲気変わったね」

「北区は住宅街だからね、お店とかは少ないんだよ」

「あるにはあるのか?」

「うん。探すと喫茶店とかあるらしいよ」


 あいにく私は知らないけど、姉さまは一応知ってるって言ってたかな。

 あんまり行くことはないらしいけどね。ガルダにはそれなりの期間住んでたけど、南区に住んでいるから北区には用事があるときしか行かなかったんだとか。


 そんな話をしながら路面列車に揺られ、最寄りの停留所に着いたので列車を降りる。

 ここも住宅街だから、向かう先を知ってないと迷子になりそうだよね。

 まあ、帰りは歩いてればどっかの停留所に着くから、どこからでも路面列車に乗れば南区まで帰れるんだけども。


「よし、行こうか」

「おー!楽しみ!」


 今日向かっているのは、私が持っている時計を買った時計屋さんだ。

 私の時計の調整と、ロイの時計が直せないか聞いてみるのがとりあえずの目的かな。

 あとはシャムとリオンが気に入るものがあれば、って感じ。


 私も来るのは久しぶりだけど、道は覚えているので住宅街を迷わず歩いて行く。

 この辺の落ち着いた雰囲気、結構好きなんだよね。

 シャムが楽しそうにあたりを見渡しているのを横目に進んで行くと、あたりの風景に馴染んだ一軒のお店が見えてくる。


「こんにちはー」


 看板が出ているのを確かめて、扉を開けつつ声をかける。

 他にお客さんはいないみたいなので、中に入ってとりあえずカウンターに向かった。

 そこに座っているのは優し気なお兄さんだ。昔はお爺さんがやってる店だったんだけど、お弟子さんにお店を譲って隠居したらしい。


「こんにちは。お久しぶりですね。調整ですか?」

「はい。あと、他に古い時計があって。修理って出来ますかね?」


 懐から懐中時計を引っ張り出しつつ聞いてみると、お兄さんは少し考えるそぶりを見せた。

 ロイが時計を取り出しているので、とりあえず自分の分をお兄さんに渡しておく。

 実はちょっと蓋が緩くなってるんだよね。それも今回の調整で直るだろうか。


「こちらはすぐに終わります。……これは、かなり古い時計ですね?」

「祖父の物です。多分、祖父も誰かから譲り受けたんだと思います」

「中を開けてみないと分からないので、少々お待ちいただいてもよろしいですか?」

「はい。お願いします」


 私の時計も持って、お兄さんが奥に向かって行く。

 その背中を見送って、とりあえず店内を見ていることにした。

 ちなみにシャムは店には行ってすぐに目を輝かせて置かれている時計の方に向かっているので、そっちに合流する感じだ。


「きれーい……」

「すげぇなこれ。こまけー」


 シャムに付き添ってるだけかと思ったら、リオンも結構楽しんでいるみたいだ。

 このお店は姉さまの時計を買った店らしいのだけれど、姉さまはモクランさんに連れて来てもらって知ったらしい。


 ……あの二人本当に仲良いよなぁ……関係性を明言してくれないせいで未だにどう認識するのが正しいのか悩んじゃうけど。

 なので実は、モクランさんもここにあるような細かい装飾が施された懐中時計を持っているのだ。


「正直、セルちゃんの時計はお店の中でも特別綺麗なのをアオイさんが選んだのかなぁって思ってたんだけど……全部同じくらい綺麗だねぇ」

「そんなこと思われてたんだ……まあ、装飾細かいし色付けも綺麗だもんね、そう思われても仕方ないか」


 これが全部一から手作りなんだからすごい。しかも何人も職人さんが居るわけじゃなくて、基本的に一人だからね。

 あんまり人が来ても大変だからって南区じゃなくて北区にお店を作ったらしいし、知る人ぞ知るって感じの方がいいんだろう。


 何せ針にまで透かし彫りがされてるからね、一つ作るのにかかる時間は想像も出来ない。

 他に店番をする人が居るわけでもないからお店にも居ないといけないし、休めてるのか心配になるくらい忙しそうな感じがする。


「わぁー……」

「シャムが釘付けになってる……」

「触ったら壊しそうだなこれ」


 何か気に入るものがあったのかそっと手を伸ばしているシャムとは対照的に、リオンは触れないように後ろに手を引っ込めている。

 その様子がなんだかおもしろくて笑っていると、奥からお兄さんが戻ってきた。


「こちらの調整は終わりました。もう一つの時計ですが、修理は出来そうですが少し時間がかかります。一週間ほどお預かりしても問題なければ、修理を始めましょう」

「お願いします。修理代はどのくらいになりますか?」

「新しく入れるパーツもあるので前後しますが……百ヤルくらいだと思っておいてください」

「分かりました」


 私の方の修理代は手間代みたいなものなので、代金もそんなにかからない。

 いつも通りの金額を払って時計を開き、蓋の調子が戻っている事を確かめた。

 やったぁ、これでポケットの中で勝手に開いて針が曲がるとか、そういう悲しい事件は起こらない。


「さて……一週間後にまた来ることになるけど、シャムは何か気になるものがあった?」

「あったぁ……でも、次に来るときまで考えてようかな」

「そっか。じゃあそろそろ行こうか?……リオンは大丈夫?」

「おう、壊しそうで怖ぇわ」


 元々ガルダでの滞在期間は長めにしてあるので、一週間くらいは留まっても問題は何もない。

 とりあえず行きたいところに行って、クエストとかをこなしていればいいだろう。

 クリソベリルにももう一回くらいは呼ばれるかな?留まっていると知ったら呼ばれそうだし、呼ばれたら行くからね。


「そういや、昨日って結局ツルバミさんと何してたんだ?」

「なにって言われてもな……遊んでた」

「あれを遊びで片付けていいの……?かなり激しい魔法の応酬だったと思うんだけどな……」

「まあ、確かに結構激しくやっちゃあいたけど、本当に遊んでるだけなんだよ。割と会うたびにやってるし」

「……そういや、学校にクリソベリルが来た時にツルバミさんとなんかやってたよな。あれもそういうことか?」

「あー……そうだね。流石に学校であそこまでのお遊びはやりたくなかったから、断ったような気がする。よく覚えてたね」


 そんな話をしながら来た道を戻り、路面列車の停留所で列車が来るのを待つ。

 さて、この後はどうしようかな。

 まだお昼前だから、何かしらするだけの時間はある。


 何か簡単なクエストを受けに行ってもいいけど……実はもう一軒、行きたいお店があるんだよね。

 こっちは南区の大通りに面しているから、行こうと思えばいつでもいけるかなーって思って後回しにしていたのだ。

 時計屋さんでの用事が思ったより早く終わったし、このままそっちに向かってもいいかもしれない。


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