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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
362/477

362,順調な道のり

 ケートスを一日観光して、その翌日に必要な買い物を済ませてケートスを発った。

 ケートスを発った日は野営で、次の日は小さな村に宿泊した。

 そして現在。私たちは、その村からガルダに行くというお爺さんのご厚意で馬車の荷台に乗せて貰っていた。


 一応護衛の名目ではあるが、向かう先も同じだし乗っていくかいと聞いてくれたのは完全にご厚意だよねぇ。

 なんて考えながらタスクで扱えるだけの風を弄り、物の動きを察知出来るだけの薄い風を眺める。


 基本的に何もなく平和な移動が続き、お昼休憩を挟んで更に移動する。

 予定では今日は野営だったんだけど、これなら今日中にガルダに入れそうだなぁ。

 ……ガルダ、一応宿を探す予定ではあるんだけど……


「誘われそうだって、姉さまも言ってたなぁ」

「お?どうした?」

「姉さまのお師匠さんに、泊っていけって誘われそうだなぁって」

「あー……なんか、有名な人」

「ヒエン・ウィーリア・ハーブさんだね」


 ぽつりと呟いたらリオンが反応して、リオンが反応したのに釣られてシャムがやってきた。

 ロイは前の方でお爺さんと話しているので、多分こっちには来ないだろう。


「その、ヒエンさん?はセルが行くこと知ってんのか」

「誰も知らせてはないけど、知ってると思う」

「……ん?」


 意味が分からないって顔をされたけど、ヒエンさんはそういう人だ。

 大体のことは何故か知っているし当然の顔をして必要なものを渡してきたりするのだ。

 私の来訪くらい既に察知していることだろう。……本当に、あの人何者なんだろうなぁ。


「何をしててもおかしくないんだよねぇ」

「薬師なんだよな?」

「多分」

「多分なんだ……」

「姉さまのお師匠さんだからねぇ」

「なんかそれだけで妙な納得感あるな。会ったことねぇけど」


 のんびり話しながら馬車に揺られて、夕方にはガルダに入る事が出来た。

 乗せてくれたお爺さんにお礼を言って別れ、門を潜ってすぐにある広間でグーっと伸びをする。

 久々に来たなぁ、ガルダ。去年は来ていないような気がするので、二年ぶりくらいかな?


「さて、と。じゃあとりあえず宿を探そうか?」

「そうだね…………うん、ごめんロイ。ちょっと待って」

「うん?」


 ロイも私たちの話は聞いていたようで、いつもとは違ってちょっと疑問形だった。

 それに同意をしようとしたところで視界の端に見覚えのある人が映り、思わず目を覆って一度思考を停止する。


 そりゃあさぁ、察知してるだろうとは思ってたけどもさぁ。

 でも流石に、ガルダに入ってすぐに現れるとは思わないじゃん?

 なんて私が頭を抱えている間に、噂のその人はニッコニコで歩いて来ていた。


「久しぶりねぇ、セルリアちゃん」

「お久しぶりです……ヒエンさん」


 声をかけられたので、とりあえず顔を上げる。

 私が名前を出したからか、横に居る三人もヒエンさんを認識したみたいだ。

 道中散々噂していたので、あぁこの人が、みたいな気配がしている。


「……杖が壊れたのね、怪我はない?」

「大丈夫です。魔力余ってる感じがしてちょっと落ち着かないですけど」


 来た理由までは知らなかったようで、私が杖を持っていないのを見てちょっと驚いた顔をされた。

 そして外傷の有無を確かめるかのように手を取られて、左右に揺らされる。

 ゆらゆらと身を任せている間に確認は終わったのか、手を離されたのでタスクを持ち直す。


「ところで、もう宿は決まってるのかしら」

「……いえ、今来たところなのでまだですね」

「良ければうちにおいでなさいな。四人くらいなら泊まれるわ」


 なんかもう、お互い返事が分かっている状態での会話だった。

 三人の方を見てみると、ニッコニコで頷かれた。

 こっちもこっちで何の話になるのか分かってた感じだなぁ。一応の確認、みたいになってたもんね。


「じゃあ行きましょう。ふふ、可愛い子がいっぱいで嬉しいわ」

「……今日は、フィアールさんはいらっしゃいますか?」

「居るわよー。しばらく出かける予定はないらしいから、暇になったら声をかけてみるといいわ」


 話しながら歩き出したヒエンさんの後を追いながら、右腕に抱き着いてきたシャムに目を向ける。

 すっごいわくわくしてる目だ。フィアールさんのことは、知っているのかどうなのか。

 あの人も結構な有名人だからなぁ。タイミングが合わなくてここ二年くらい会ってないから、ちょっとお話したいな。


 ガルダの大通りを進んで、途中で一本横の道に入る。

 そのまま少し進んだらヒエンさんの家でもある、薬屋・エキナセアが見えてきた。

 ……あ、珍しい。店主であるヒエンさんが外に出て来てるのに、ちゃんとお店が開いているみたいだ。


「いらっしゃ……ああ、お帰りなさい」

「ただいま」

「お久しぶりです、フィアールさん」

「お久しぶりです、セルリアさん。また背が高くなりましたね」


 カランカランと扉の鈴が鳴って、ヒエンさんが店の中に入っていく。

 それに続いて中に入ると、カウンターの内側にフィアールさんがいた。

 うちのお店部分にカウンターがあるの、なんでだろうなぁって思ってんだけど、多分ここを真似したんだろうなぁ。


 なんて考えている間にヒエンさんとロイが何か話しており、そのままシャムとリオンも会話に加わっていた。

 その話の流れで二階に荷物を置いてくることになり、二部屋あるからいつも通り男女で別れて泊まることになった。


「なんか、思ったより広いんだねぇ」

「姉さま曰く空間が歪んでるらしいよ」

「……それは冗談?それとも本当に?」

「分かんない」

「分かんないかぁ」


 シャムと話しながら荷物を置いて、出さなきゃいけない荷物等はないので手ぶらで一階に戻る。

 階段を降りていたら話し声が聞こえてきた。どうやら、リオンとロイは先に降りてきていたみたいだ。


「そろそろ夕飯にするけど、食べられない物とかあるかしら?」

「ねぇっす」

「僕も特には。二人も大丈夫だよね?」

「うん、辛すぎたりしなければ特に食べられない物はないです!」


 支度を手伝おうかと思ったけど、座ってていいと言われたので素直に腰を下ろす。

 ……あ、これフィアールさんが座ったまま魔力で手伝ってるのか。すごいなぁ。


「フィアールさんも薬師なんすか」

「いや、私は薬師ではないですよ。錬金術師です」


 待っている間に少しお話をして、この日は夕食を食べたらお風呂に入ってさっさと寝ることにした。


ガルダ!!到着!!

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