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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
355/477

355,いざガルダを目指して

 朝食を食べて、部屋に戻って荷物の最終確認をして、左手でタスクを握ってリオンの部屋に向かう。

 遅れられない日の恒例行事になってきた気がするなぁ、なんて思いながら全力で扉を叩いてリオンを起こし、一緒に中央施設に鍵を預けて学校を出た。


 門で待っていたシャムとロイに合流して大通りを進んでいると、そこに見慣れた大きな出店が動いているのが見えた。

 おっ、とリオンが声を出して、私の背中を押して出店リコリスの方に歩いて行く。


「押さなくても行くよ?」

「一瞬躊躇っただろ」

「よく見てるなぁ……あ、ロイー。シャム連れて来てー」

「うん」


 まだちょっと眠そうなシャムの手を引くロイにも声をかけて、背中を押すリオンの手を捕まえて横に持ってくる。

 既に兄さん達は気付いているみたいで、出店リコリスは道の端に止まっていた。


「セルリア」

「コガネ兄さん。手紙読んだ?」

「ああ。怪我が無くて何よりだ」


 杖が壊れたことは、学校に戻ってきてすぐに手紙を書いて家に知らせていた。

 どのくらいで届くのかは分からないけど、届いたら家の中ですぐに共有されるだろうから知ってるだろうなぁとは思ってたんだよね。


「これからガルダに向かうのか?」

「うん。ついでにイツァムナー同盟まで行ってくる」

「そうか。……ガルダの滞在日数はどのくらいだ?多分店主からもクリソベリルからも声をかけられるぞ」

「他に比べたら長めにしてるよ。もしかしたら杖を最初から作ってもらうことになるかもしれないし」

「……まあ、そうか。ならついでに時計の方も一度見てもらったらいい」

「そうだね、そうする」


 行ってらっしゃい、と声をかけられたので、行ってきますと返事をしてから前の方でトマリ兄さんと話しているリオンの所に向かう。

 なんか楽しそうに話してる声は聞こえてるんだけど、纏っている風が薄いせいで何を話しているかまでは分からなかったんだよね。


「お、セル。今回は泣かなかったらしいな?」

「……リオン、トマリ兄さんに何話したの」

「いや聞かれたことに答えただけで……悪かったからやめろって」


 普段なら杖で殴り掛かるけど、今は杖が無いので素手でベチベチ殴っておく。

 特にダメージは無さそうだけど止められたのでとりあえず手を止め、トマリ兄さんとも少し話して出店リコリスを離れた。


 シャムとロイはコガネ兄さんと話していたみたいで、その間にシャムは大分目が覚めたみたいだ。

 兄さんが何本かポーションをくれたので、持ちきれない分はロイに渡しておく。

 そんなことをしている間にフォーンの門が近付いてきたので、一旦無言で潜る。


 国の外に出て少し進んだところでタスクを揺らし、風を起こして周りに纏わせる。が、やっぱり弱いなぁ……

 もう少し強くしたいんだけど、これ以上は杖への負担が大きそうなんだよね。


「んー……シャム、ちょっと風貸してくれない?」

「いいよー。混ぜて広げる感じ?」

「濃くして周りに置いとこうかなって。広げられるほどの量はないからね」

「分かった。じゃあ、このあたりで……ほい」


 風が無いとどうしても落ち着かないので、シャムに声をかけて風を強化してもらう。

 国の中に居る時は、まあ少し落ち着かないだけで別に平気なんだけど、外に出てるとどうにもね。

 守られてる感じが一気に無くなるから、どうしても風で周りを固めないとちょっと不安なのだ。


「……おー。なんか面白れぇなこれ」

「見ててもいいけど弄らないでね?いつもより硬度無いから」

「おう」


 リオンが目を物理的にキラキラさせてあたりを見回しているので、一応釘だけ刺しておく。

 私が一人でやってるなら良いんだけど、シャムに手を貸してもらってる関係上あんまり弄られたくはないんだよね。


「準備はいいかな?」

「うん。お待たせ」

「じゃあ出発しよう。シャムとセルリアは中央に、リオンが先行で僕が最後尾。これで進もうか」

「おう。いつもより距離近い方がいいんだよな?」

「そうだね」


 今日は第三、第四大陸間の関所に出来るだけ近付いて野営の予定なので、向かう先は分かりやすい。

 今回の遠征ではガルダに着くまでは基本的に外海に沿うように移動することになる。

 なのでまあ、外海から大きく逸れない限りは迷ったりもしないのだ。


 私が飛んで位置確認をしたり出来ない状態だから、分かりやすいのは助かる。

 ……シャムとロイは飛ばなくても位置把握くらい出来るのかもしれないけどね。

 やり方は教えて貰ったけど、出来る気はしないんだよなぁ……やっぱり上から見るのが一番手っ取り早くて分かりやすいよ。


「明日は第三大陸に入るんだよな?」

「そうだね。今日は野営、明日は第三大陸のセラドンまで行って宿泊予定」

「セルちゃん、セラドンは行ったことある?」

「無い。私基本的に国以外には連れて行ってもらえないんだよね。姉さまがそういう扱いされてるから、まとめて過保護されてるの」


 話しながら草原を進む。このあたりは少し盛り上がった地形をしているから、左側に海がうっすらと見えた。

 第四大陸は中央に森があるから、三つある国は全てそれなりに海に近い。


 なのでまあ、フォーンに居る間はクエストなりなんなりで海辺に行くこともよくある事なんだけど……でも、森育ちだからかな。やっぱり海が見えるとちょっとテンション上がるんだよね。

 シャムも同じなのか、横で小さく歓声を上げている。


「この先海が見える場所は多いだろうし、帰ってくる頃には少しは慣れるかな?」

「どうだろうなぁ……あいつらずっとはしゃいでそうじゃねぇか?」


 私たちを挟んで前後でロイとリオンが何か話しているが、気にしないでおこう。

 とりあえずリオンの背中をタスクの先でつつきながら歩みを進め、時々ロイが地図に現在位置を書き込む以外は立ち止まらずに順調に移動していく。


 途中昼休憩も挟んで位置と向かう方向を微調整し、さらに移動した先で日暮れ前に野営地を探し、その日の移動は終了した。

 昼と同じように荷物の中から料理道具を引っ張り出し、リオンの荷物に入っている食材を出してもらって夕食を作る。


 大きい鍋、買って良かったなぁ。前の鍋だと三回は作らないとリオンが満足しなかっただろう。

 二回で終わりにしてたけど、物足りなかったらしいしね。

 ソワソワと鍋を見ている腹ペコたちを牽制しながら夕食を作り終え、器によそって渡す。


 鍋は火から降ろして地面に置いておき、おかわりはお好きにどうぞスタイルを取る。

 こうしておくと、ものすごい速度で鍋の中身が消えていくのだ。

 もう一回作らないと足りないかな?まあ、リオンが居る限り作りすぎて余るって事は無いから要求されたら作ればいいだろう。


「あ、リオン待って僕もまだ食べる」

「私も食べる!」

「はいはい、もう一回作るからよそい切って」


 ……なんか、みんな前より食べる量増えてないかな?これ。


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