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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
343/477

343,新しい鍋

 乗合馬車護衛の最終日。今日は少し天気が悪かったけど、ギリギリ雨は降らずに昼過ぎには最終目的地だったネフィリムが見えてきた。

 到着時間も予定通り。ネフィリムの中に入って広場で止まり、護衛のクエストが完了した証明書を受け取ったら御者さんとはお別れだ。


 いい人だったなぁ。三人が言うには全ての御者さんがああいう人ではないらしいから、いい人に当たったみたいだ。

 また縁があったら護衛してくれと笑顔で手を振る御者さんに、私たちも全力で手を振って別れた。


「まずはどこ行く?」

「まずはギルドにクエスト完了報告をして報酬を受け取ろう。その後は宿を探して、荷物を置いたら町の探索に行こうか」

「おう」

「はーい」


 ギルドは大体どこでも大通りに面した位置にあり、でっかい建物なのでかなり見つけやすい。

 ネフィリムのギルドに行くのは初めてだけど、歩いている間にギルドのマークがでっかく描かれた建物を見つけて足を踏み込んだ。


 ギルドの手続きは国とかでそう大きく変わったりはしないので、クエスト完了の報告と報酬の受け取りはサクッと終わった。

 次は宿だけど……これはロイがギルドの受付嬢に宿屋の集まる場所の位置を教えて貰っていたので、これも時間はかからず決まった。


 隣り合った二部屋を借りて、大きな荷物を部屋に置いたら街に出る。

 昼食はもう食べた後だけどそれなりに時間も経っているから、リオンは何か食べながら巡るんだろうなぁ。


「何か欲しいものとかはある?」

「私は特にないけど、市場見たい!」

「俺は軽くなんか食いてぇ」

「私、鍋見たい」

「よし鍋から行こうぜ」

「お鍋探しながら色々見よう!」

「最優先事項だねぇ」

「ロイまで!?」


 リオンはともかくとして、シャムもまぁともかくとして、ロイまで食いついてくるとは……いや、何だかんだロイもいっぱい食べるしな。

 鍋の買い替えは私以外の三人の方が乗り気だったのをぼんやりと思い出しながら、宿の受付のお兄さんに店の場所を聞いてとりあえず歩き始めた。


「どんな鍋にすんだ?」

「出来れば今使ってる支え棒をそのまま使えると良いんだけど……まあ、一番は今使ってる鍋が中に綺麗に収まることかな。そうじゃないと荷物かさ張るからね」

「なるほどー。確かに蓋までしっかり閉めたいよね!」

「多少の隙間は他の荷物で埋められるしね」

「……なんか大きい鍋に誘導してない?」


 腹ペコたちに選ばせると必要以上に大きな鍋になってしまいそうだ。

 ある程度候補を絞ったらロイに選んでもらおうかと思っていたけど、これは意見を聞いても参考程度にしないと駄目そうだなぁ。


「お、あそこ鍋とか食器とか大量にあんぞ」

「どこ?見えない」

「このまま真っすぐ」


 教えて貰った場所は色々なお店や出店がある場所で、人も多かったので私とシャムは逸れない様にするので精いっぱいだ。

 リオンは人の頭の上から市場を眺めているのでそこまで息苦しそうでもなく、ロイはリオンより背が高いので楽しんでいる節すらある。


「目立つほどでかいわけじゃないのに……」

「はは。まあ、たまに目線が同じで目が合う人とか居るからねぇ」

「分からん話だ……」

「私空飛んでいる時に鳥と目が合うくらいなんだけど」

「そっちの方が特殊だろ」


 なんてダラダラ話しながら人混みの中を進み、リオンが言っていた鍋とか食器がいっぱいある出店に辿り着いた。

 これは選ぶのに時間をかけても何も言われないと思うので、材料から大きさから、色々悩みつつ見ていくことにした。


 出店を開いていたのは品の良いお婆ちゃんで、ここで気に入ったものが無ければ、と別のお店も教えてくれたのでそっちにも後で行ってみよう。

 長く使うものだから、あんまり即決はしたくないんだよね。


 ウラハねえが居ればすぐに決まるんだけど……まあ、あれは特殊能力だから比較対象にはしちゃ駄目だ。

 幸い三人は私が満足するまで一緒に見て回ってくれるつもりみたいだから、本当に気に入るものが見つかるまで色々見て回ろう。


「お、なんか美味そうなものが売ってる」

「本当だー。こないだ来た時は見なかったな」

「休みの間に来たんだっけ?」

「うん。シオンにいが珍しく遊びに連れて来てくれたんだ」


 楽しかったから聞かれると嬉しくて何度でもウキウキで答えてしまう。

 ロイがお兄ちゃんの顔をしているのは見なかったふりをしておく。

 今のは流石に子供っぽかった自覚があるからね、何も言わないでおこう。


「……そういえば、リオンはお酒とか飲まないの?」

「何だよ急に。まー飲むような用事もねぇしな」

「セルちゃんは飲まないの?」

「私は二十歳になるまでダメって姉さまに言われてるから」

「そうなんだ……じゃあ私たちはアオイさん基準では飲んでもいい歳なんだね」

「うん。ネフィリムってワインの名産地だから、なんか急に気になって」


 シオンにいが「鬼人は大体酒豪」って言ってたことをふと思い出してリオンに話を振ったら、流石に寮で酒盛りは出来ないだろうと言われた。

 確かにそうだ。持ち込んでいいのかも分からないけど、怒られる気がする。


 そうなると酒場とかで飲むことになるけど、行くことがないからまず飲む機会が無いと。

 飲めないとは言わないあたり、飲んだことがあるのかな。

 私は姉さまのお許しが出る歳になったら一緒に飲もうねぇと誘ってくる人が割といるので、一年後にはそれなりに好き嫌いも分かるくらいにはなっているはずだ。


 そんなことを話しながら出店のお婆ちゃんに教えて貰ったお店に入り、並べてある鍋を眺める。

 手に取って材質や大きさなんかを確認していたら、シャムとリオンは何かを見つけたのか二人で店の奥に行っていた。


 ロイは残って鍋の材料なんかを教えてくれるので、選ぶのには困らないけど何を見つけたんだあの二人は。妙なものを持って戻って来ないと良いけど、なんて思いながら鍋選びを続行する。


「……お、いいサイズ。ちょっと重いけど」

「チシュダ鉄製だね。ちょうどセルリアが今使ってる鍋と同じ材料だよ」

「じゃあいいやつだ」

「そうだね」


 別売りだけど蓋もあるのか……どうしよっかなー。これに決めちゃおうかなー。

 悩んでいたらロイが同じ材質の鍋をいくつか見つけて教えてくれたので、そっちとも見比べる。

 やっぱりこれが一番いい気がするなぁ。こういうのは勢いだって言ってたのは姉さまだったか他の誰かだったか。


 その後いくつかの店を回ったけれど、最終的にはやっぱりこれがいいと思ったので店に戻って蓋も一緒に購入した。使う前にちょっと準備が必要なので、それは宿でやっておくことにしよう。


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