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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
338/477

338,シャウラさんと一緒に

 杖を両手で持ち上げて、グーっと身体を伸ばして横に倒す。

 左右に揺れるようにしばらく続けていたら、後ろから足音が聞こえてきて杖を掴まれた。

 身体を捻って後ろを見ると、今日は珍しく寝癖のないリオンが立っている。


「おはよ」

「おう。行こうぜ」


 今日はリオンと二人で冒険者活動に出るのだ。

 シャムとロイは、出たい授業があるらしいので今日は学校に居る。

 私たちも授業に出たりして過ごしても良かったんだけど、イツァムナーまで行きたいとなると旅費も結構かかるのでとりあえず二人でクエストをこなすことにしたのだ。


「なに受けるー?」

「何でもいいぞー」

「雑だなぁ……」

「お前も人の事言えないだろ」


 ダラダラ言い合いながらギルドに入り、クエストボードを眺める。

 何かいいのが無いかなーと思っていたら、横から声をかけられた。


「や、久しぶり」

「シャウラさん!お久しぶりです」

「今日は二人なんだ?」

「おう。俺らは暇なんだ」


 顔を向けるとシャウラさんが居て、私たちが二人なのを確認すると横に並んだ。

 四人でクエストを受けに来ている時は、下手に他の人が入らない方がやりやすいだろうって考えてくれていたらしく、見かけても軽く挨拶するくらいで一緒にクエストに出ることはなかったんだよね。


 今日は二人なので、受けるクエストが決まっていないなら一緒にどうかと誘われてリオンと二人で特に考えもせずに頷いた。

 二人で行くより安全だし、シャウラさんが受けるクエストって普段は選ばない物が多いからいい経験になるんだよね。


「そういや、君らランク上がったんだって?おめでとーう」

「ありがとうございます」

「なんで知ってんだ?」

「やっと上げたらしいぞって噂になってたよ。ミーファも含め、討伐出来るだろうにまだ上げないのかって前から言われてたからね」

「そうなんだ……」

「普通は出来るか分かんないのに挑む奴の方が多いから、君らほど慎重な子たちは珍しいんだよ」


 知らぬところで噂されていたらしい。

 安全を取るのは間違ってないってシャウラさんは笑っているけれど、珍しいって言われてたのは事実なんだろうな。


 まあ、冒険者ランクを理由に威張る人が居るくらいだし、そういう人たちは無理してでも上げたいんだろう。多分。予想でしかないけど。

 そんな話をしながらクエスト受注受付に向かい、今回受けるクエストについての説明を聞く。


「今回はルタヒョドを倒しに行くよ」

「るた……なんだそれ」

「ルタヒョド。セルリア知ってる?」

「……いや、知らないです」


 なんか言いにくい名前だなぁ。聞き覚えが無いし、本で読んだ覚えもない。

 珍しい魔物かな、と予想しつつシャウラさんを見ていると、シャウラさんは受注手続きをしながら一枚の紙をこちらに渡してきた。


「それがルタヒョド。魔物中位種で、強くはないけどとにかく素早くってついでに身体が小さいから中々捕まえられないんだ」

「珍しいのか?」

「いや、割と居るよ。すぐ逃げるし隠れるから気付いてないだけで、知らない間に遭遇してることとかよくある」


 渡された紙には絵が描いてあった。これがルタヒョドなんだろう。

 なんというか、とても素早そうには見えない見た目をしている。

 ずんぐりむっくりっていうか……走れるのかな、この身体で。


「地面に潜ったりもするから、一回見失うともう一回見つけるのはかなり難しいんだよね」

「へぇー……これ、シャウラに指名で来たのか?」

「うん。ギルドが素材を使いたいらしくて、他にも何組かに頼んだんだけど今のところ皆失敗してるんだってさ」


 紙を返して、仮パーティーとクエスト受注の手続きを終わらせたシャウラさんについて行く。

 フォーンを出てルタヒョドの生息地に向かいながら、討伐のための詳しい説明を聞く事になった。

 シャウラさんは今回が初めてではなく、以前にも二度ほど討伐したことがあるそうだ。


「セルリアには魔法でルタヒョドの位置を分かりやすくしてほしいんだよね。そういう魔法使える?」

「距離が離れすぎると外れますけど、出来なくはないです。一回しっかり見て狙えれば発光させられますよ」

「いいねぇ。じゃあ、まずはセルリアに印をつけて貰おう。んで、リオンには追い込みをしてほしいんだよね」

「追い込み?」

「そう。追いかけてもまず追いつけないから、向こうから私の方に来させたいんだ。リオンの方が威圧感があるし、剣を当てるタイミングは一瞬だから振りは早い方がいい」


 私とリオンが追い込んで、シャウラさんはギリギリまで気配を消していて逃げるために飛び込んで来たルタヒョドを仕留める。

 そこまで確認したところでルタヒョドの生息地に到着したようで、シャウラさんが剣を抜いてその場にしゃがんだ。


「さあ、始まったら一瞬だよ。気張って行こう」

「おう!」

「じゃあ、見つけたら光らせるからリオンちょっと距離取って待機ね」


 風を起こして空に上がり、リオンが距離を取ったのを確認してから一気に風を巡らせた。

 じわじわやっていたら逃げられるから、やるなら一気に。事前にそう言われていたので準備だけはしておいたのだ。


 上から下に、動きを制限するように風を吹き付けて索敵する。

 シャウラさんが言うには、ルタヒョドの属性は地らしいので、地属性の小さな魔物を探す。

 風からの情報に集中して、地面のあたりをひたすら探す。


「居た!……よし付けた!リオーン!」

「すげえめっちゃ光ってんな!」


 逃げようとしている小さな魔物を見つけて、即座に用意していた光魔法をぶつける。

 光ったのが確かにルタヒョドなのを確認したら、他の方向に逃げないように風を内側に吹き込ませて壁を作った。


 リオンがシャウラさんの対角に位置取っているので、このまま追い込めば倒せるだろう。

 唯一心配なのは、ルタヒョドがどれくらいの速度で地面に潜るのかを知らないことだ。

 もしリオンから逃げながらでも潜れてしまうなら、下に逃げられる。


 それを阻止するために、足元の風を一度消して地面に急降下した。

 地面にぶつかる前にもう一度風を作って速度を緩めつつ、両手で杖を握って降下の勢いも使って思い切り地面を叩く。


 一気に広げたのは弱い雷の魔法だ。地面の上を滑るようにして広がるので、潜るのを邪魔するくらいの働きはしてくれるだろう。

 人に当たっても静電気くらいの威力しかないからその辺も安心だ。


 そこまでやって顔を上げると、ルタヒョドはもうシャウラさんの目の前だった。

 次の瞬間にはシャウラさんが目にも止まらぬ速度で剣を振り抜いており、目が合うと手で大きく丸を作る。どうやら上手くいったらしいことを察して、とりあえず魔法を消しておいた。


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