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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
328/477

328,月末の書類提出

 朝食を食べ終えて移動していると、廊下の先にソミュールを背負って歩いているミーファを見つけたのでそっと風を起こしてソミュールを浮かせる。

 ……なんか、これやるの久々な気がするなぁ。


「あ、セルちゃん。おはよう」

「おはようミーファ」

「……なんか、ちょっと久しぶりだね」

「あ、やっぱりそう思う?四年生って思ってた以上に会わないよねぇ」


 ミーファと一緒にクエストにも行きたいけど、なんかタイミングが合わないんだよね。

 こうして考えてみると、授業以外でミーファと会ってなかったんだなぁ。

 去年は実技も別の組み合わせになってたから、余計に一緒に行動することが減っていた気がする。


 もうこの際特に意味はないけどお茶会とかしよう。

 私の部屋においで……美味しい蜂蜜があるんだ……

 なんて話している間に教室に着いたので、ソミュールを席に座らせて枕と頭の位置を調整する。


「セルちゃんとリオンは、学校外に行ってたんだよね?」

「うん。遠征の練習がてらヘリオトロープまで。ミーファは?」

「私は授業受けたり、薬草採取とかのクエストを受けたりしてたよ。ソミュちゃんは先生の研究手伝いが基本みたい」

「研究手伝いかぁ……まあ、夢魔族ってあんまり資料ないもんねぇ」

「寝ちゃうからあんまりお話出来ないんだって。記録を残すの自体は、別にいいって言ってたよ」


 夢魔族は人と関わる割には記録とか資料とかが少ないので、先生たちがソミュールに研究手伝いと称して話を聞きまくっているのは割と想像できる。

 そしてソミュールが途中で寝る所まで想像して、思わず笑ってしまった。


 そのまま鐘が鳴るまで話して、教室に駆け込んできたリオンに持ってきておいたパンを渡す。

 寝坊するかと思ったけど間に合ったようでなによりだ。

 なんてやっている間に鐘が鳴って、教室内にヴィレイ先生が入ってきた。


「全員席に着け。……よし、では今月の出席証を回収する。その他の書類がある者はそれもまとめて提出しろ」


 もう一ヵ月というべきか、まだ一ヵ月というべきか。

 まだ慣れていないし遠出もしてたから、一ヵ月しか経ってないのかぁって感じの方が強いかな。

 なんて考えながら、まとめて箱に入れていた書類を取り出す。


「名前を呼んだ者から持ってこい。アンナ」

「はい」


 さて、未記入の紙が混ざらないように確認して、他の提出物は特にないので一応枚数も数えておく。

 割とある気がするけど……どうなんだろ。一週間居なかったわけだしなぁ。

 あとでミーファにどのくらいあったか聞いてみようかな。


「セルリア」

「はーい」


 呼ばれたので書類を持って席を立ち、先生に書類を渡して確認が終わるのを待つ。

 ここでは軽く確認するだけなのでそんなに時間はかからず、ちょっと手元を眺めている間に確認が終わったのでそのまま席に戻る。


 その後は他の人の書類が回収されるのをぼんやりと眺めているだけで終わり、余った授業時間は質問等が無ければ好きにしていていいと言われた。

 席の移動なんかも別にしていいらしく、それを聞いてすぐに前の席の人が居なくなりリオンがやってきたので本は取り出さないでおく。


「セルこの後どうすんだ?」

「どうしようかな。授業行ってもいいけど……あー……なんかヴィレイ先生がめっちゃ見てくるから多分片付けすることになると思う」

「はは」

「笑うな」


 リオンも先生に手伝いを頼まれているらしい。なんか色々運ぶものがあるから、重量系の武器を使ってる四年生は手伝いに重宝されるんだって。

 つまり二人とも先生の手伝いか。……私のは、手伝いなのか……?


 まあ、手伝いだろう。いつの間にか私が主だって片付けているけど、でもあれはあくまで手伝いだ。

 なんて話している間に鐘が鳴ったので荷物を持って立ち上がる。

 リオンもすぐに行くらしいので手を振って見送り、ミーファは授業に行くというのでソミュールを受け取って、手を振って見送る。


「……さて、と」

「暇かセルリア」

「もう有無を言わせぬ声色ですね」

「分かっているようで何より」

「ソミュールはどうするんです?」

「魔術教室に寝かせておく」

「はーい」


 軽く杖を振って風を起こし、ソミュールを浮かせて手を引いて歩く。

 廊下を進むヴィレイ先生について行きながらふと窓の外を見ると、雨が降りそうな雲が出てきていた。昼には降り始めそうな感じだなぁ。


 雨の日はソミュールは起きないので、今日はずっと寝ていそうだ。

 夢魔族が皆そうなのかとか、どうしてなのかとかは知らないけど、雨の日は起きないんだよね。

 いつかそのあたりの話も聞いてみたいとは思っているんだけど、中々聞く機会がない。


「そこに寝かせておけ」

「はーい。……寝床が出来てる……」


 魔術の生徒は今はソミュールだけなので、魔術教室の一部はソミュールのスペースになっているらしい。椅子をいくつか繋げてソファのようにして、そこに布をかけてクッションを置いて、とかなり快適そうな寝床が生成されていた。


 ソミュールを下ろしてそこに寝かせるともぞもぞと動いて体勢を整え始めたので、少しだけ見守っておく。

 枕の位置も含めて満足の行く配置になったのか動くのをやめて寝息を立て始めたのを見届けて、先に準備室に向かったヴィレイ先生を追う。


「……うわ、なんで一ヵ月でこんなことに……」

「新入生の書類が多い」

「なるほど。じゃあ来月は平気ってことですね?」

「……まあ無理だろうな」

「堂々と言わないでください」


 準備室に入ると同時に思わずうわぁと声が漏れたけれど、とりあえず目に付いたところから片付けて行くことにした。

 書類に関しては私が見ても別に問題はないらしいので、そのあたりは気にせずにざっくり内容を見てそれごとに纏めていく。


「ルナルと話したらしいな」

「あぁ、はい。結構お話してくれますよ」

「そうか。……ん、こんなところにあったのか」

「……それと同じ石がこっちにも転がってますよ」

「あと二つある」

「纏めて箱とかに入れといてください!」


 絶対なくなるって分かってたでしょうに、なんでバラバラに置いてあるんだ。

 というか部屋の中に散らばりすぎでは?……あ、もう一個床に落ちてる。

 これは触っても大丈夫なやつっぽいかな。もう一個は……とりあえず見当たらないから、見つけたら回収しよう。


 そんなわけで一時間ほどかけて片付けを終わらせ、出たい授業の時間になるまでソミュールの横で読書をしていくことにしたのだった。


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