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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
324/477

324,疲れた身体に湯が染みる

 朝食を食べ終えて片付けをした後、シャムが覚醒するのを待ってからヘリオトロープに向かって歩き出し、特に何も問題はなく昼過ぎには到着した。

 昼食をどうしようかという話になったのだけれど、もうヘリオトロープ見えてるし行ってから食べようという事になったのでついてまずしたことは腹ごしらえである。


 その後に宿を探して、二人部屋を二部屋借りて荷物を下ろす。

 広くはない部屋だけどベッドのほかに机と椅子も置いてあり、リオンとロイがこっちの部屋に来て座って話すくらいは出来るのが有難い。


「あぁー……なんか気ぃ抜けたぁー……」

「お疲れ。この後どうする?」

「俺はちょっと寝るわ……」

「お風呂入れるみたいだよ。セルちゃん行く?」

「行くー!」

「じゃあ私たちはお風呂行ってくる!ロイは?」

「とりあえず部屋で休むよ。リオンが起きたら買い物と夕飯でも食べに行こうか」

「おっけー」


 部屋に戻っていく二人を見送って、シャムと一緒に着替えを抱えて宿の浴場に向かう。

 浴場の受付に居たお姉さんに声をかけて、着替えを入れる箱の鍵を受け取って脱衣所に入った。

 ……あ、杖どうしよう。流石にこの着替え入れの箱には入んないなぁ。


「受付のお姉さんに預ける?」

「んー……ロイに預けてこようかな。そっちのほうが安全だし。先入ってて」

「はーい、行ってらっしゃい」


 まだ服は脱いでなかったので、一度浴場から部屋の方に戻って、ロイたちの部屋の扉をノックする。

 すぐに返事があったので要件を告げると扉が開いて、軽装になったロイが現れた。

 リオンは既に寝ているみたいだ。


「杖、触らない方がいいんだよね?」

「ん?まあ、ロイとかリオン相手にそんなに気にしないから大丈夫だよ。というかリオンはよく掴んでるよ」

「あはは、そっか。じゃあ、預かっておくからゆっくりしておいで」

「ありがとー」


 魔法使いは基本的に他人に杖を触られるのを酷く嫌がる。

 自分が一番使いやすい、自分の魔力が馴染んだ武器だからね。

 手足の延長みたいなものでもあるので、うっかり壊されたり魔力を変に流されたりされたら魔法の発動に影響が出たりもする。


 だから基本は他人に触れさせない……んだけど、私はその辺の思考が割と緩いんだよね。

 元々家の中で兄姉たちが私の杖を持って移動してたり、代わりに持ってもらったりもしていたから抵抗が薄くて、信頼できる人相手なら別にいいかなって感じになってる。


 リオンには他の人の杖はあんまり掴まない方がいいよーとは言ってある。

 一応魔力は流すなって言ってあるので、その辺をちゃんと認識してくれていれば別にいいんだよね。流石に知らない人には触られたくないけど、許容範囲はかなり広い。


 そんなわけでロイに杖を預け、足早に脱衣所に戻って服を箱に入れて鍵をかけて浴場に足を踏み入れた。

 シャムは既にお湯に浸かっていたので、身体と髪をしっかり洗ってから傍に寄る。


「おかえりー」

「ただいま。……っはぁー……生き返るぅー」

「ねー。気持ちいー……」


 ほへぇ、と気の抜けた声を出しながらお湯に浸かり、くっ付いてくるシャムに頭を乗せる。

 髪と身体をしっかり洗ってすっきりしただけでも満足なのに、でっかいお風呂にゆっくり浸かれるってのが何よりもいいよね。


 家ではいつもお湯を張っているけど、学校の寮の部屋にはバスタブがないからね。

 お風呂に浸かれるってだけで遠征の甲斐があったかなぁ。……いや、流石にそれは言いすぎなんだけどさ。でも、溜まった疲れが一気に抜けていくこの感じは普段のお風呂では味わえないよね。


「ふぇぁー……なんかちょっと寝ちゃいそう」

「起きてー。シャムが寝たら私も寝るぞー」

「それは駄目だぁー」


 ゆるっゆるな会話をしながらしばらくお湯に浸かっていたら、他のお客さんも来たので緩い声を出すのはやめておく。

 それでも零れては居るんだけどね。音量は落とし気味でいこう。


「夕飯どうしようねー」

「ねー。買い物は明日でいいかなー」

「もう動く気力ないよねー」


 私もシャムも温かいお風呂で思考が溶けているので、話している内容も話し方も緩々だ。

 ロイがいい感じに纏めてくれるでしょう。全部まとめて投げてしまって申し訳ない。

 姉さまがコガネ姉さんに色々丸投げするのもこういう理由なんだろうなぁ。


「……はぁ、そろそろ上がろうかな」

「私もー。いいお湯だったねー」

「ねー」


 身体を拭いて髪をタオルでまとめて、着替えて荷物を持って脱衣所を出る。

 着替え入れの箱の鍵を受付のお姉さんに返して部屋に向かう。

 抱えた着替えを部屋に放り込んでから、ロイたちの部屋の扉をノックした。


「はーい。早かったね」

「そう?割とゆっくりしてたけどなぁ……杖ありがとー」


 杖を受け取って、そのまま部屋にお邪魔して話をすることになった。

 魔法で風を起こして髪を乾かしながら夕飯とか買い物とかの話をして、満場一致で買い物は明日に回すことになったので、買い物の内容だけ考えておく。


「あんまりにもおかわり要求されるから大きい鍋買うか迷ってるんだけど」

「買おう」

「とりあえずいいのが無いか見てみよう?」

「今使ってるのはお茶淹れるのとかにも使うし、追加でいいと思うよ」

「何なら茶葉入れる網みたいなのも探そう」

「すっごい畳み掛けてくるじゃん」


 まさかこんな反応をされるとは、ちょっと予想外だ。

 リオンは買おうぜーって言うだろうなって思ってたけど、二人もかぁ。

 こうなったら本気で探すか。目利きに関してはロイがどうにかしてくれるでしょう。鑑定授業選択してるし。


「あとは食料かなぁ。私はそんくらい」

「私は美味しくて日持ちする何かを探したい!小腹が空いてももうパンを齧れない!」

「それは僕も探したいなぁ」

「リオンも欲しがってたからなんか探そー」


 これは完全に私の所為だなぁ。あんまり悪い事したとは思ってないんだけど、なんかごめんね。

 美味しい保存食に関しては今度ウラハねえとモエギお兄ちゃんにも聞いておこう。

 この遠征に出る前に手紙で遠出してくるとは書いてあるから、帰ったら返事が来ていると思うんだよね。


 そのお返事に遠征の感想やら何やらを書くつもりなので、そのついでに何かないかと聞いてみる。

 多分何かしらは知ってると思うんだよなぁ。最悪売ってないけど作り方は知ってる、みたいなことを言われる未来が見える。


 そうしたらどうしよう。……私が、作るのか……?

 作るのはいいけどそうなると本格的な設備を使いたいんだよね。

 まあ、まだどうなるかは分からないけど、自作することになったら学校の食堂のキッチンを借りれないか先生に聞いてみればいいだろう。


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